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1章 写真ばら撒き事件
※具体的にどんな危機なの?
しおりを挟む※紘夢side
みんなに謝罪をした後、教室に向かう。
授業中だから廊下は静かだった。
途中まで葵くんと一緒だったけど、別れて一人で歩いていてとても心細くなった。
今までこんな気持ちで廊下を歩いた事なんてなかった。
さっき自分が言った事、これから行く教室の事、そしてみんなの反応……
全てが不安だった。
自分の手が震えてるのが分かって、何だか笑えた。
まさかこの俺に怖いものがあったなんて……
学校は辞めるつもりだけど、教頭先生と約束したから正式に決まるまでは通おうと思っている。
もう適当な事はしない。
こんな気持ちになりたくないから。
そして自分の教室、二年E組の前まで来て足が止まる。
授業中に入るのなんて今までに何度もあったのに、今日だけは怖気付いた。
この中に入って行くのがとても怖い。
逃げたい。
今すぐに逃げ出したい。
はは、この俺が逃げるなんて、父さんに見られたら笑われるな。
ほら見ろ、俺に楯突くからだ。とか鼻で笑われるな。
俺は目を閉じて貴ちゃんの事を考える。
貴ちゃんならどうする?
きっと授業の途中でなんか教室には戻らないか。間に合わなかったらそのままサボりそうだな。
そんで先生に怒られて、反省文とか書かされるんだ。
貴ちゃんの事を考えたら面白くなった。
よし、少し頑張ってみよう。
俺は意を決して教室のドアを開いた。
すると教室にいた全員が俺を見た。
物凄い視線の数に俺は固まってしまった。
あれ、こういう時ってどうするんだっけ?
「あ、一条……お前大丈夫なのか?」
授業を見ていた先生に名前を呼ばれてハッとする。
何か言わなくちゃ。
「はい。大丈夫です。授業に遅れてしまいすいませんでした。教頭先生に教室へ戻るよう言われました。俺も参加してもいいでしょうか?」
「……そう言う事なら。席に着きなさい」
「はい。ありがとうございます」
俺が頭を下げて言うと、みんなのヒソヒソ声が聞こえて来た。
先生に許可を取って自分の席に着くまでずっとみんなからの視線を感じていた。
それから授業が再開されて、俺は教科書やノートを持って無かったからそのまま何もしないで大人しく机に座って授業が終わるのを待った。
ずっと先生の話を聞いて黒板を見ていたけど、どれも頭にある内容だったのを覚えている。
俺の頭の中には高校で習う事は全て入っているんだ。中学時代、ほとんどの時間を勉強に費やしていたからもう大学で習うような専門的な事までも一通り覚えていた。
それがいけなかったのかもしれない。
だから周りの人達と上手くコミュニケーションが取れずにみんなの事を見下して遊んだりしたのかも。
俺も普通の脳みそだったらもっと素直に馴染めてたのかな……
授業が終わって俺はする事も無かったからそのまま机に座って窓の外を見ていた。
なんて綺麗な青空なんだろう。
雲一つない快晴に俺はずっと空を見ていた。
「……じょう」
「…………」
「一条!」
「っ?」
名前を呼ばれて我に返る。
パッと声のした方を見ると、クラスメイトが俺を強張った顔で見ていた。
「あ、はい。もしかしてずっと呼んでくれてた?」
「呼んでたよ」
「ごめん。少しボーっとしてた。俺に何か用かな?」
俺を呼んでいたクラスメイトは卯月恭弥って言って、確か演劇部の部長をやってたと思う。
いつもニコニコ笑顔でクラスでは人気のある方。
俺は一回も話した事ないけど。
いつも笑ってる卯月なのに、俺の前だからか知らないけど、思い詰めたような顔をしていた。
「昨日の薗田さんの放送を聞いていたか?」
「昨日?俺休んだから知らないけど、あの人そんな事したの?」
「じゃあ知らないんだな」
「何の話?俺が迷惑かけたのと関係あるのかな?それなら謝るけど」
「ある。だから力を貸してくれ!この通りだ!」
「えっやだ、卯月ってば、頭上げてよ!」
いきなり両手を真っ直ぐ体の横に伸ばして、頭をバッと下げて来た。
突然の卯月の行動に他のみんなもこっち見てた。
やっと顔を上げた卯月は今にも泣き出しそうなそんな情けない顔をしていた。
「一条って生徒会長より頭良いんだろ?もう俺じゃどうしようもなくて……」
「あのさ、話が全く分からないんだけど、俺も関係あるんだよね?それなら力を貸すよ。まずは詳しく話して欲しいな」
「本当か!?良かった!実は演劇部が今崩壊の危機なんだ」
「崩壊?へーそれは……」
面白そう。と口に出しそうになって慌てて口を手で押さえた。
だって、うちの学校のメインと言ってもいいぐらいの部活だよ?部員数もダントツだし。
そんな部活が崩壊するとか面白そうでワクワクするよ。
「大変だね。具体的にどんな危機なの?」
「今文化祭に向けて最終段階に入ってるところなんだけど、ボランティア部の二人が……ほら、あんな事になっちゃっただろ?それで元々二人を歓迎してなかった人達が二人を外して代役で進めるべきだって言い出したんだ。大多数がそっちの意見だったからそれで話がまとまりかけていたんだけど、昨日薗田さんが二人を外すなら脚本を取り上げるなんて言い出して……今更他の話でなんて進められる訳ないだろう?それに、新しい台本は……俺達を馬鹿にしたような物で……」
「なるほどね。確かに俺のせいでもあるな。分かった。ちなみに卯月はどっちの意見なの?部長なんだよね?」
「俺は……」
「?」
あらかた話した後、俺が質問をすると卯月は下を向いて口篭った。
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