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1章 写真ばら撒き事件

風呂掃除やらねぇと!

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 伊織が落ち着くまで頭を撫でてあげた。
 体格は伊織のがデケェから、伊織は顔を俺の右肩に乗せてる感じ。
 それを抱き抱えてポンポンってしてやってた。

 さっきみたいにボロボロ泣いてる訳じゃねぇけど、やっぱり誰かが泣いてるのは見たくねぇ。
 でも誰でも泣きたい時ぐらいあるよな。

 男でも、伊織でも……


「俺さ……」

「んー?」


 伊織がボソッと話し始めた。
 俺はそのまま伊織をポンポンしながら聞いていた。


「そいつとは本当に何も無かったんだ……お互い好きで、付き合ってるってだけで、でもそれでも良かった。一緒にいられて、それだけで楽しくて嬉しかった」

「そうか」

「それで満足して、だからダメだったんかも……あいつがそんなに追い詰められてるなんて思わなくて……俺がもっとあいつを見てたらって、何度も後悔した」

「おー、そうかもな」

「もう誰も好きにならないって決めたけど、貴哉に会って……好きになって……また失うってなって……」

「あー、それでお前ちょいちょい変な事言ってたのか!」

「どんな形であれ嫌なんだ。好きになった物を失うのが。だから好きな人は作らないでやってきた」

「でもなー、こればっかりは仕方ねぇしなぁ」

「貴哉はまだ俺の事好きなんだろ?」

「そりゃ……好きだけど」

「だったらもう選ばなくていい。俺と早川を両方好きなままでいいからいなくならないでくれ」

「ちょ、お前落ち着けって」

「体の関係も、我慢する……貴哉がしたい方とすればいい。貴哉を失うぐらいならそっちの方がマシだ」


 どっちか選べって言ったり、選ぶなって言ったり、意見をコロコロ変えるなんて伊織らしくねぇなって思った。
 そう言われたら俺も楽だけど、そのままでいい筈ねぇじゃん。
 いつかはどっちかを選ばなきゃなんねーんだろ?
 そん時また辛くなるだけじゃね?

 いや、その時が来たらその時には伊織の心の傷は少しは浅くなってるかな……


「分かった!お前がそう言うならそうする。ただし条件がある」

「……何?」

「前に付き合った奴の事を忘れろとは言わねぇ。だけど、もうマイナスに考えるんじゃねぇ。そいつはそいつで新しい人生やってるんだ。それにお前には怜ちんやなっちがいる。側にいてくれる二人の為にもお前も好きに生きろ!あ、俺もいるからな!」

「……はは」

「おい、分かったか?」

「うん♡やっぱ大好きだ♡」


 伊織は俺にぎゅーって抱き付いた。
 そして笑い声が聞こえた。
 どんな顔してるか見えねぇから分からねぇけど、これで元の伊織に戻るのかな?
 
 
「伊織」

「何?」

「しようぜ」

「え!?いいのか!?」

「途中だったじゃん。伊織が意地悪すっから中途半端だったし、伊織とくっ付いてたらムラムラして来たから責任取れ」

「喜んでー♡」


 俺から誘うとすっかりいつもの伊織に戻って、キスをして来た。
 やっと顔見れたけど、それもいつのも伊織に見えた。

 笑顔のかっこいい伊織。やっぱりこいつは笑ってねぇとな!

 まぁ俺も男だからな!ヤりたくなるのは仕方ない!生理現象ってやつだ。
 自分にそう言い聞かせて、俺も目を閉じて伊織と夢中でキスをした。

 こいつ、経験ねぇとか言うけど上手いよな……
 俺も伊織と空としかまともにキスした事ねぇから普通が分かんねぇけど、とても初めてとは思えねぇぐらい自然にしてくる。そして気持ち良い。

 伊織の手が俺のTシャツに入って来た時、俺のスマホが鳴った。この音は電話だ。
 スマホを取ろうとすると伊織に止められる。
 あー、はいはい。俺に集中しろってか。


「ごめん、時間だけ見させて?俺の部屋時計ねぇんだ」

「いいよ」


 許可を取ってスマホを見る。
 時間は15時30分……ええ!?もうそんなかよ!?やべー!母ちゃん帰って来る!風呂掃除まだやってねぇよ!


「伊織ストップ!風呂掃除やらねぇと!母ちゃんに怒られる!」

「それならさっきシャワーした時やっといたよ」

「マジ!?出来る男か!体調悪かったのにやってくれたのか」

「ダルいだけだったから、シャワーしたらスッキリしたし……ほらスマホ置いて、服脱いで」

「あ!」


 伊織にスマホを取られて服を捲り上げられる。
 どさくさに紛れて誰からの着信か見ようと思ったのに忘れた!

 まぁ、風呂掃除終わってるしいいか……

 俺は伊織に流される形で再びキスをされて、そのまま行為が始まった。
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