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1章 写真ばら撒き事件編

※ごめん。八つ当たりしてしまった

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 ※茜side

 俺は一日中、薗田さんの言葉をずっと考えていた。
 
 あの後演劇部のみんなに薗田さんに渡された新しい脚本の事を話して、俺と卯月は元の脚本「ドラゴンとプリンセスの旅」を薗田さんには返さずにそのままやると断言した。

 この事で一時は混乱は収まったが、まだ秋山と桐原を外すかどうかの方は決まっていなかった。
 と言うか薗田さんの言う通りほとんどの人が外したがっていて、みんな代役が演じるものだと思って活動し始めていた。

 もちろん俺はあの二人にやってもらいたい。
 薗田さんもそう言っていた。
 だからあの言葉はきっと何かのメッセージなんだ。

 でも分からない。
 薗田さんは新しい脚本を「プレゼント」「上手く使え」と言っていた。
 まさか本当にこの脚本で進めろって事じゃないよな?

 うーん、分からない……

 今は部活の時間だけど、俺は一人部室で腕を組み悩んでいた。


「二之宮~!難しい顔してどうしたのー?」

「おわっ!?」


 いきなり横から声を掛けられて驚いた声が出てしまった!
 すると俺の反応を見てニヤニヤ笑う小平が立っていた。

 いつの間に入って来たんだ?
 全然気付かなかった。


「あはは~!二之宮ってば間抜けな声出してダサ~い♪」

「いきなり驚かすなよ。それで、何の用だ?」

「え?ああ、えーっと、二之宮何してるのかなー?ってね!サボってないかチェックしに来たの!」

「……誰かに言われたのか?見て来いって」

「言われてないけど?何で?」

「みんなは俺がいつも一人で部室に篭ってるから不満に思ってるんだろ?サボったりしてないから安心しろ。ちょっと考え事してただけだ」

「みんなには何も言われてないよ!俺が勝手に見に来たの!」

「何で小平が俺の監視するんだよ。部長でもないのに」

「ちょ、なんかイライラしてるー?二之宮らしくなーい」


 しまった。まさか小平に八つ当たりしてたか……
 薗田さんから言われた事が分からなくてモヤモヤしてたからって人に当たるのは良くないな。
 反省しよう。


「ごめん。八つ当たりしてしまった」

「い、いいよ!二之宮になら八つ当たりされたって痛くも痒くもないんだからっ」

「そうかよ。そろそろ戻ったらどうだ?主役のお前がいないと話が進まないだろ」

「あ!それなんだけど、ちょっと来てくれない!?見て欲しい物があるんだ!」


 小平は何かを思い付いたように俺の腕を引いて来た。
 何かあったのか?少し慌ててるようだ。

 小平が俺を連れて来たのは部室の隣の控え室。
 中には裏方の奴らが作業をしていた。

 その横を通って控え室の一角にある布で仕切られた簡易的な更衣室に入って行った。すると、更衣室の椅子にプリンセスが着るであろう衣装が置いてあった。
 それは最後のシーンで着る予定の煌びやかな水色のドレスだ。


「あ、プリンセスのドレスが出来たのか?思ってたよりも豪華だな!」

「昨日デザイン部が持って来てくれたんだ。試着してサイズ合うか確かめてくれって言われててさ」

「そうだったのか。確かめたのか?」

「まだだよー。だって二之宮が昨日途中で帰っちゃうからっ」

「え、何で俺が帰ると確かめられないんだ?一人で着替えるのが難しいなら誰かに頼めばいいじゃないか」

「だ、だって、こんなお姫様みたいな可愛いドレス……二之宮に……一番最初に……」


 ここで小平はぷうっと頬を膨らませてボソボソ喋り始めた。
 俺は聞き取れなかったから近寄って耳を澄ませる。


「小平?悪いけどもっと大きな声で話せるか?最後の方聞こえなかった」

「だからっ!二之宮に見せたかったの!一番最初に!」


 大きな声でそう言うと、ハッとして下を向いた。
 顔が赤く見えるけど、思ったより大きな声が出て、裏方の人達に聞こえて恥ずかしかったのかな?


「そうか。それなら今見よう。着てくれるか?」

「う、うんっ」


 俺がそう言うと小平はワイシャツのボタンを外し始めた。そして俺を見て怒り始めた。


「ちょ、ちょっと何見てるんだよっ!着替えたら呼ぶから出てて!」

「え?あ、ああ……」


 何故か更衣室を追い出された。
 俺、何で怒られたんだ?

 
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