【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

文字の大きさ
上 下
69 / 178
1章 写真ばら撒き事件

※ごめん。八つ当たりしてしまった

しおりを挟む

 ※茜side

 俺は一日中、薗田さんの言葉をずっと考えていた。
 
 あの後演劇部のみんなに薗田さんに渡された新しい脚本の事を話して、俺と卯月は元の脚本「ドラゴンとプリンセスの旅」を薗田さんには返さずにそのままやると断言した。

 この事で一時は混乱は収まったが、まだ秋山と桐原を外すかどうかの方は決まっていなかった。
 と言うか薗田さんの言う通りほとんどの人が外したがっていて、みんな代役が演じるものだと思って活動し始めていた。

 もちろん俺はあの二人にやってもらいたい。
 薗田さんもそう言っていた。
 だからあの言葉はきっと何かのメッセージなんだ。

 でも分からない。
 薗田さんは新しい脚本を「プレゼント」「上手く使え」と言っていた。
 まさか本当にこの脚本で進めろって事じゃないよな?

 うーん、分からない……

 今は部活の時間だけど、俺は一人部室で腕を組み悩んでいた。


「二之宮~!難しい顔してどうしたのー?」

「おわっ!?」


 いきなり横から声を掛けられて驚いた声が出てしまった!
 すると俺の反応を見てニヤニヤ笑う小平が立っていた。

 いつの間に入って来たんだ?
 全然気付かなかった。


「あはは~!二之宮ってば間抜けな声出してダサ~い♪」

「いきなり驚かすなよ。それで、何の用だ?」

「え?ああ、えーっと、二之宮何してるのかなー?ってね!サボってないかチェックしに来たの!」

「……誰かに言われたのか?見て来いって」

「言われてないけど?何で?」

「みんなは俺がいつも一人で部室に篭ってるから不満に思ってるんだろ?サボったりしてないから安心しろ。ちょっと考え事してただけだ」

「みんなには何も言われてないよ!俺が勝手に見に来たの!」

「何で小平が俺の監視するんだよ。部長でもないのに」

「ちょ、なんかイライラしてるー?二之宮らしくなーい」


 しまった。まさか小平に八つ当たりしてたか……
 薗田さんから言われた事が分からなくてモヤモヤしてたからって人に当たるのは良くないな。
 反省しよう。


「ごめん。八つ当たりしてしまった」

「い、いいよ!二之宮になら八つ当たりされたって痛くも痒くもないんだからっ」

「そうかよ。そろそろ戻ったらどうだ?主役のお前がいないと話が進まないだろ」

「あ!それなんだけど、ちょっと来てくれない!?見て欲しい物があるんだ!」


 小平は何かを思い付いたように俺の腕を引いて来た。
 何かあったのか?少し慌ててるようだ。

 小平が俺を連れて来たのは部室の隣の控え室。
 中には裏方の奴らが作業をしていた。

 その横を通って控え室の一角にある布で仕切られた簡易的な更衣室に入って行った。すると、更衣室の椅子にプリンセスが着るであろう衣装が置いてあった。
 それは最後のシーンで着る予定の煌びやかな水色のドレスだ。


「あ、プリンセスのドレスが出来たのか?思ってたよりも豪華だな!」

「昨日デザイン部が持って来てくれたんだ。試着してサイズ合うか確かめてくれって言われててさ」

「そうだったのか。確かめたのか?」

「まだだよー。だって二之宮が昨日途中で帰っちゃうからっ」

「え、何で俺が帰ると確かめられないんだ?一人で着替えるのが難しいなら誰かに頼めばいいじゃないか」

「だ、だって、こんなお姫様みたいな可愛いドレス……二之宮に……一番最初に……」


 ここで小平はぷうっと頬を膨らませてボソボソ喋り始めた。
 俺は聞き取れなかったから近寄って耳を澄ませる。


「小平?悪いけどもっと大きな声で話せるか?最後の方聞こえなかった」

「だからっ!二之宮に見せたかったの!一番最初に!」


 大きな声でそう言うと、ハッとして下を向いた。
 顔が赤く見えるけど、思ったより大きな声が出て、裏方の人達に聞こえて恥ずかしかったのかな?


「そうか。それなら今見よう。着てくれるか?」

「う、うんっ」


 俺がそう言うと小平はワイシャツのボタンを外し始めた。そして俺を見て怒り始めた。


「ちょ、ちょっと何見てるんだよっ!着替えたら呼ぶから出てて!」

「え?あ、ああ……」


 何故か更衣室を追い出された。
 俺、何で怒られたんだ?

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...