【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

文字の大きさ
上 下
68 / 178
1章 写真ばら撒き事件

※「三匹の子豚」

しおりを挟む

 ※茜side

 生徒会長と薗田さんの昼休みでの放送演説で、演劇部は大パニックだった。
 薗田さんの突然の脚本を取り上げる宣言に、俺達演劇部、二年生は部長の元、二年E組の廊下に総揃いしていた。

 
「卯月!さっきの薗田さんの話、どういう事だよ!?」

「一回脚本変わってバタバタして、やっと落ち着いたと思ったのにどうなってんだよ!」

「みんな落ち着いてくれ!俺も知らなかったんだ!だから今から薗田さんに話を聞きに行こうと思っているところだ!」


 部員達の苦情に部長の卯月は困ってる様子だった。どうやら薗田さんの単独での考えらしいな。
 
 卯月の言う事に、部員達は「薗田さんは放送室だ!」と誰かが言ってみんな走って行った。

 卯月もすぐに追おうとしていたから俺は止めた。


「待ってくれ。今の薗田さんには生徒会長がついている。大勢で行っても相手にされないかもしれない」

「じゃあ黙ってろって言うのー?一応二人は部長と副部長でしょー?」


 小平に言われて少し考える。
 この後の薗田さん達の行動を考えてみた。
 多分、自分達の教室に戻るのは考えられない。二人でどこかで話しているか、次の行動に出るだろう。
 

「卯月、演説の後の生徒会長の次の行動と言えば?」
 
「は?なんだよそれ?何で生徒会長?」

「確か生徒会長は学校側に不純異性同性交遊の緩和を訴えていた。その後始末に行くだろう。と言う事は」

「職員室だー!」

「正確に言えば校長か教頭の所だろうな。生徒会長の性格だから確実な人を選ぶだろう。そして薗田さんも放送室を使ってああ言った事を謝罪すると思うんだ。よし、俺達は職員室へ行くぞ!」

「よーし!薗田さんを説得するぞー!」


 俺達三人はみんなと違う方向へ走り出した。

 職員室へ向かっている途中で授業が始まるチャイムが鳴った。卯月は教室へ戻ろうかと迷っていたが、結局俺達に付いて来た。

 そして職員室へ入る。が、授業が始まっているからかガランとしていて誰も居なかった。
 
 ここじゃないとなると、校長室か……
 俺達は廊下に出て隣の校長室に行こうとした時、校長室の前で薗田さんと生徒会長が二人で話をしていた。


「薗田さんいたー!」


 小平が指を指してそう言うと、俺達に気付いた二人が会話をやめて声を掛けてくれた。


「やあ三人揃って、僕を見付けていたのかい?」

「そうですよ!さっきの何ですか!?もー、演劇部は大騒ぎですよ!」

「ああ、新しい脚本を取りに来たのか。ほら、それならこれだよ。簡単な内容だからみんなならすぐに演じられると思うよ」


 そう言って冷たい表情の薗田さんが出した脚本は、見て分かるぐらい薄っぺらい物で、表紙にある題名は「三匹の子豚」だった。
 この人ふざけてるのか!?
 俺の心の声を小平が代わりに言ってくれた。


「こんなの部員達が怒りますよ!」

「ふん、先に僕を怒らせたのは君達だろう。文化祭まで協力するとは言ったが、僕も忙しい身なんでね。後の事は卯月くん、頼んだよ」

「え、薗田さん……」


 新しい脚本を渡された卯月は動揺しているようで、少し震えていた。
 こんなの納得できない!
 いくら薗田さんでもこれはあんまりだ!

 俺はみんなより一歩前に出て真っ直ぐに薗田さんを見て言った。


「薗田さん。俺は貴方に憧れて演劇部に入りました。俺だけじゃない。薗田さんに憧れて入部した人は他にもたくさんいます。そんな薗田さんが最後にこんな無責任な形を取るなんて……俺はガッカリしました!」

「…………」

「ほう、言われてるぞ詩音」


 生徒会長が薗田さんの横で笑っていたけど、そんなの構わずに俺は自分の思っている事を訴え続けた。


「今の演劇部は、助っ人の二人の事で揉めているのに更に火に油を注ぐような事をして、俺は薗田さんを許しません!脚本は俺達の物です!絶対に返しません!」
 
「二之宮……そ、そうです!みんな頑張って来たんだから、最後までやらせて下さい!」

「ふぅ、二之宮くん、どうやら一皮剥けたみたいだね。でも後一歩ってとこかな」

「誤魔化す気ですか?」


 訳のわからない事を言われたので、俺は薗田さんを逃すまいと必死だった。
 そんな俺に薗田さんはさっきまでの意地の悪い笑いじゃなくて、フワッといつもの優しい笑顔を向けた。


「二之宮くんは二人には戻って来て欲しい派なんだろ?でもほぼ全員が二人を外したがっている。そうだろう?」

「そうです」

「このまま行けば二人は外されるだろうね。僕としても二人にやってもらいたいんだよ。だから二之宮くん、この新しい脚本を俺からのプレゼントだと思って受け取ってくれないかな?君ならこれを上手く使ってくれると思っているよ」

「薗田さんっ!」


 薗田さんはニッコリ笑って生徒会長と歩いて行ってしまった。
 言いくるめられた気がしてすぐに追おうとしたけど、最後の薗田さんの言葉を考えて立ち止まった。

 もしかして、薗田さんは……?

 俺は卯月が握る新しい脚本を見て薗田さんが俺に伝えたかった事を考えてみた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。 11/21 本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。

【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」 知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど? お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。 ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...