【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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1章 写真ばら撒き事件

※二人共、もう休み時間終わりますよ!

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 ※空side

 結局俺は昼休み中に茜さんに犯人の話をする事が出来ずに、自分の教室へ戻ろうと思っていた。
 すると、突然学校中のスピーカーで校内放送が流れる合図の音が鳴った。
 良く貴哉が担任に呼び出される時に使われていた音だ。珍しいな。
 校内もザワザワとざわめき始めた。


「なんだなんだぁ?」

「誰か呼び出されるんじゃん?」

「桃山~、自分から出頭しろよ」

「おかしいな?まだ小平の処刑してねぇのに」


 怖い笑顔で睨み合う二人に俺と茜さんは大人しく放送を聞いていた。
 すると、生徒会長の声が聞こえて来た。
 ここで校舎は静まり返った。


『今から校内放送を始める。皆少しの間耳を傾けて欲しい。二年の桐原伊織と一年の秋山貴哉の件は皆も周知の事だろう。そこで私は先生方に一つ提案したい事がある』


 予想通りの内容に俺は耳を澄ませた。
 なんて言うんだろう。良い方向の話だといいけど……


『その提案とは異性、並びに同性同士の不純交遊での処罰の軽減についての提案だ。私、生徒会長としての最後の仕事になるだろう。今回二人が適用されるかは分からないが、これは良い例だと思いこの場を借りて発言させてもらった。それには皆の協力が必要だ。私の方にもこの件での相談は多々来ていた。今まで何も出来ずにいたが、最後に大きな賭けに出ようと思っている。ただし、あくまでも学生の本分は学舎に通い勉学を学ぶ物。それを踏まえた上での軽減を考えてもらいたいと思っている……』


 何とも生徒会長らしい言葉がスピーカーから聞こえて来ていた。内容は昨日生徒会長から聞いた話そのままだった。
 これには動揺してる人が多かった。
 少なからずこの学校にカップルや同性愛者はいるだろう。その人達の心には響いた筈だ。

 茜さんと小平さんも驚いた顔をしてしばらく固まっていた。けど、桃さんだけはケラケラ笑っていた。

 その後も生徒会長の話は続いたが、途中で後ろで誰かの声が聞こえて来た。生徒会長の他に誰かいる?


『もー、葵くんはいつも難しくし過ぎなんだよ!そんなんじゃみんなもかしこまってしまうではないか!』

「え、嘘……!」

「薗田さんだ……」


 もう一人の声にいち早く反応したのは茜さんと小平さんだった。
 そうか、この声は元演劇部の部長の薗田詩音さんだ。生徒会長同様、影響力のある二人が揃って学校中大騒ぎだった。


『皆の諸君!素敵なランチタイムをお過ごしかな!?葵くんのお経のような演説を聞かされて疲れただろうけど、僕の話も聞いて欲しいんだ』


 生徒会長とは違い、優しい甘い言葉、声に演劇部なのか「きゃー♡」と言う歓声が上がった。

 俺も薗田さんがどんな人なのかは知ってる。生徒会長と同じぐらい有名な人で、貴哉の事を良くしてくれている人だ。
 まさかこの人まで動いてくるなんて……


『みんなのアイドルいーくんと私にとって神である貴哉くんが今とてもピンチらしいんだけど、僕にも何か出来ないかと思ってね!でも僕が彼らの罰を決める事は出来ないから、僕の出来る事をしようと思っているよ♪それは演劇部での話になってしまうんだが、今彼らを外すか否かで揉めているみたいなんだよね。勿論僕は外す事には反対だ。でもそれを決める事は引退している私には出来ない。でも文化祭で公演する予定の作品を取り上げる事は出来る。あれは僕が作った作品だからね。演劇部には代わりの物語を作って届けるつもりさ。もし二人を外すのならその代わりの台本を読んで良く考えてから外すといいよ。僕からは以上!ほら葵くんマイク返すよ』


 どうやら演劇部にしか分からない話らしい。てか文化祭って来月だよな?そんな急にやる話を変えても大丈夫なのか?

 これには現役演劇部の茜さんと小平さんは思わず立ち上がって険しい顔をしていた。


「ちょっと今の何!?いきなり過ぎない!?」

「そんなの絶対間に合わないだろ!」

「薗田さんの逆鱗に触れたね~。演劇部大変~」

「ちょっと部長のとこ行ってくる!」

「俺も!」

「あ、二人共、もう休み時間終わりますよ!」


 二人は俺の言葉なんか聞かずに教室を出て行った。その後に続く人も何人かいた。
 薗田さんの言葉に演劇部達が大慌てだ。
 こんな騒ぎして生徒会長も薗田さんも大丈夫なのかな?


「演劇部だけじゃねぇ。デザイン部だって、他の部活だって文化祭での演劇部には力貸してんだ。なんてったって天下の演劇部様だからな。その元トップがあんな事言ったらセンコー達も動かずにはいられねぇよな。ほんと、ぶっ飛んだ事考えるよな先輩達は」


 相変わらず楽しそうに笑ってる桃さんは他人事みたいに言っていた。
 

「生徒会長も薗田さんも受験で大変なのに、貴哉たちの事を考えてくれてるんだ。良い人達だなぁ」

「へー、早川はそう捉えるんだ。俺は違うと思うぜ?あの人達は自分の思うようにしたいだけだ。騒ぎに便乗して己の欲を満たしてんだよ」

「まぁ、そうとも思えますけど」

「俺そういう奴らだーいすき♡」

「…………」


 うん。何となく生徒会長も薗田さんも桃さんも同類な気がするよ。
 自分に自信たっぷりで、誰に反対されようとも決して己の信念を曲げない頑固者。

 俺には出来ない生き方だ。
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