【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

文字の大きさ
上 下
38 / 178
1章 写真ばら撒き事件

※それよりもさっさと中に入れてくれないか?

しおりを挟む

 ※空side

 放課後、一度職員室へ寄って担任から倉持の事を少し聞いてからボランティア部部室へ行くと、中には既に来ていた中西と数馬の二人だけが机に座っていた。

 貴哉と桐原さんはしばらくは来れないだろう。部長になった桐原さんの代わりに副部長の俺が仕切らなきゃいけないんだけど、副部長になった途端これじゃどうしたらいいのか分からない。

 せめて怜ちんがいてくれれば頼りに出来たのに……
 休みの連絡も来てないからもう少し待つか。


「この教室も寂しくなっちゃったね」


 ここで中西が普通に言った。
 元々部員の多い部活じゃなかったけど、三年が居なくなって更に人数が減った。
 いつも騒いでる人達がいないだけでこうも違うなんてな。


「で、どーするの?ボランティア部」

「え?」

「えって、副部長なんでしょ?早く指示出してよー」

「直登、空も副部長になったばかりだし、あまり言っちゃダメだ」

「数馬くん優し過ぎー。部長不在の時こその副部長でしょ?しっかりしてよね」

「…………」

「あーもう!空くんジメジメし過ぎ!今ボラ部がやるべき事なんて一つしかないだろー!」

「そ、空っ、貴哉と桐原さんを助けよう!」

「……二人共」


 そうか。部員が少なくてもそれがボラ部だ。
 はは、俺は何を迷っていたんだ。ボランティアって名前してんのに、困ってる奴がいたら助けるのが当たり前なのにな。

 学年の違う茜さん達だって一生懸命何とかしようとしてるのに、俺は何を落ち込んでるんだ。
 いや、正直同じクラスの奴が写真を撮ってばら撒いた犯人なのかっていう話が出て複雑な気持ちに変わりはない。
 この事は中西達にはまだ話してないから余計にモヤモヤしていた。

 俺はそんな心境がバレたくなくて、無理矢理気持ちを切り替えて仕切る方向で行く事にした。


「そうだな!そんじゃまだ二年の二人が来てないけど、始めるか!」

「やっといつもの空くんだ。怜ちん達もそろそろ戻ってくるんじゃない?」

「ん?怜ちん達どっか行ってるのか?」

「うん。俺達より先に来てて凄い人連れて来る~って出てったの」

「凄い人?」


 何の事か分からなかったので、怜ちんに電話を掛けてみる事にした。
 すると、すぐに出ていつもの感じで話し始めた。


『もしもーし!空くんー?部室に来たのー?俺達ももうすぐ着くよーん♪』

「中西に聞いたけど、凄い人って誰の事なの?」

『それは見てからのお楽しみ~♡あはは~♡』


 と、ここで電話は切れた。
 えー、誰が来るのか知りたかったのに。

 でもすぐに誰が来るのか分かる事になった。
 そう、怜ちん達はボラ部部室のすぐそこまで来ていたから。

 廊下の方が少し騒がしくなって、ふと気になってドアを開けて様子を見てみる。
 そこには怜ちんと、那智さん、そして、二人の真ん中に、高校生とは思えない程大人びた綺麗な顔と、綺麗に伸びた長い黒髪を一本に束ねて靡かせて姿勢良く歩く姿。そしてモデルの様なスタイルとスラッと伸びた長い足。
 あの生徒会長、神凪葵が颯爽とこちらに向かって歩いていたんだ。

 えー!?生徒会長!?
 凄い人過ぎねぇか!?
 そりゃ廊下も騒がしくなるわ!
 怜ちん達だけでもみんな騒ぐのに、あの生徒会長だぞ!?

 そして俺に気付いた怜ちんは手を振って近寄って来た。


「空くんてば先に見ちゃったね~!ばーって入って驚かせようと思ったのにぃ~」

「ちょっと!何で生徒会長がいるの!?」

「私がここにいてはマズイのか?」


 いつの間にかすぐ側まで来ていた神凪生徒会長にギロリと睨まれた。近くで見るのは二回目だけど、ヤバい人だってオーラで分かる。
 噂だと、生徒会長としては十分過ぎるぐらい仕事をこなすし、他の生徒達や教師達からも一目置かれている存在だ。でもそのやり方は冷酷非道で、目的の為なら手段を選ばない。そんな感じで怖がる生徒もいる。
 だから貴哉を関わらせたくなかったのもあった。

 俺が怯んでいると、生徒会長の後ろからボラ部の元副部長の風間さんがひょこっと顔を出してニコッと笑った。


「やあ早川くん♪俺達もいるよ~」

「風間さん!今一番会いたかった人ですぅ!」


 ボラ部の副部長として、一番頼りにしたかった人の顔が見れて俺は心の声が漏れた。
 それを聞き逃さなかった風間さんの隣にいた男、元部長の渡辺さんがメガネを光らせて不機嫌そうに言った。


「あ?俺には会いたくなかったってのかよ早川ぁ?」

「ぶ、部長!勿論会いたかったですよぉ!」

「ふん、それよりもさっさと中に入れてくれないか?ここは目立って仕方ないからな」

「はーい♪狭い所ですがどーぞ♪」


 廊下にずっと立たされてなのか、はたまた俺を見てなのか不機嫌そうな生徒会長が言うと、怜ちんが中に案内した。

 懐かしい人達に会えた事で俺は感動していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け 《あらすじ》 4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。 そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。 平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

処理中です...