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1章 写真ばら撒き事件編
※おい、みんなが引いてるぞ
しおりを挟む※茜side
昨日から、学校中が秋山と桐原の話題で騒いでいた。今日、二人は朝から会議室に呼び出されるらしいし、俺はずっとソワソワしていた。
秋山、大丈夫かな?
今日から本格的に授業が始まる為、参加してるけど、全く頭に入らなかった。考えるのは秋山の事ばかり……
そして休み時間の度に湊が来て俺の心配をしていた。
今もため息ばかりを吐く俺をジーッと見ている。
「秋山……」
「まるで恋する乙女だな」
「そうか、これが恋する乙女の気持ちなのか……って違うだろ。会議室に呼び出されるなんて、絶対良い話な訳無いじゃないか。無事ならいいんだけど」
「あいつなら大丈夫だろ」
「なぁ、俺らに出来る事は何だろ?」
「んー、信じて待つとか?」
「それだけなのかぁ?」
「あ、犯人探しとかしてみる?」
「探し出せたらいいけど、どうやる?俺達だけじゃ難しいだろ」
「まずは演劇部に絞り込めただろ?次は二人に関連してる奴らをピックアップする。そしたら大体絞り込めるんじゃね?」
「二人に関連か……桐原繋がりだとほとんどの人が対象になるから、秋山で見てみるか。秋山と話すのは限られているからな。一年の数名とは同じクラスらしく話してるのを見た事がある。二年だと、俺か部長の卯月か、あと小平か。三年は薗田さんぐらいかな。俺が知る限りはこんな感じだな」
「やっぱ小平が怪しくね?」
昨日の帰りにも少し話が出たが、もし小平が犯人だとしたら不可解な点があるんだ。
「昨日はそう思ったんだが、バーベキュー大会の時は俺と小平ってほぼ一緒にいたんだよ。あんな写真を撮る時間なんてなかった筈なんだ」
「カチーン。あいつ俺のいない所で茜に手出してたの?ん?」
「勘違いするな。一緒に過ごしただけだ」
「小平んとこ行ってきまーす♡」
湊が暴走しかけてたからシャツを引っ張って止める。
こいつは俺の事になると誰が相手でも暴走し出すんだ。もう少し理性を働かせて欲しいところだよ。
「待てって!てか次の授業始まるだろ!」
「もうあいつが犯人で良くね?そんで、茜に手を出した罪も合わせてダブルで処刑すりゃいいじゃん。はい解決~」
「お前はどうしていつもそうなんだ!昼休み!昼休みに一緒に小平の所へ行こう。そこでちゃんと話して判断しよう」
「個人的にボコりたい」
「そんな事したら嫌いになるぞ」
「やだ!てか俺の事嫌いになれねぇ癖に♡」
嫌いになるって言ってるのに嬉しそうに抱き締めてくる湊。
ここは俺の教室で、みんなが見てるから辞めてもらいたい。引き剥がそうとすると、たまに見せる馬鹿力でなかなか離れなかった。
「おい、みんなが引いてるぞ。離れろって」
「じゃあ好きって言って♡」
「す、きだよ……」
「もっと言ってー♡」
こんなやり取りをしていたら授業が始まるチャイムが鳴って次の授業の先生が入って来て扉を閉めていた。
え、湊がまだここにいるんだが!
「ちょ、お前早く出て行けって!」
「もう鳴っちゃったし、俺もここで授業受けるよ。せんせー気付いてねぇみてぇだし♡マジウケる!キャハハ」
馬鹿な湊がケラケラ笑うと、先生がキョロキョロして、こちらを見た。
そして部外者に気付いて怒り出した。当たり前だな。
「ん?その笑い声は……やっぱり桃山かー!お前のクラスはA組だろぉ!」
「今日からC組になるんだよ。そうだ、ここに草間いるだろー?俺の代わりに体育行ってくれー」
「ひぃ!俺を巻き込むな!桃!さっさと出て行けよ!」
巻き添えを喰らったのは、湊と同じデザイン部の草間だった。草間も湊とはジャンルは違うけど、いつも個性的な髪型や服装をしているちょっと変わった奴だ。ちなみに今の髪型は形といい色といいまるでマッシュルームみたいだった。
「桃山!ふざけた事を言ってないで早く戻るんだ!C組の授業が遅れるだろ!」
「うるせーなぁ。俺もちゃんと授業聞くからいいだろー?」
「湊、みんなが迷惑してるんだ。早く自分のクラスへ戻れ」
「はーい♡また休み時間になったら来るからな♡んじゃ」
散々人のクラスを荒らして、俺が言ったらあっさり戻るようだった。それに対して先生や他の生徒達はポカーンと口を開けたまま驚いていたが、湊が立ち去ろうとした場所に更に驚いて声を上げる者もいた。
それは、廊下側のドアじゃなくて、窓だったんだ。窓を開けて縁に足を乗せて「とう!」と掛け声を掛けてそのまま外に飛び降りた。
ちなみにここは三階だ。
「桃山ー!!何やってるんだぁー!!」
先生は慌てて窓から顔を出して下を見ていた。
先生だけじゃない、クラス中が立ち上がり、湊が降りた所を覗き込んでいた。
驚くのも無理もないが、俺はもう慣れていた。
目的地に向かう時は最短距離を選びたがる湊はああして道無き道を行くんだ。さっき体育って言ってたから外に行きたかったんだろ。
本当にあいつの行動は読めない。
でもそんなあいつを可愛いなと思う俺。
嫌いになんてなれる訳ないだろ。
次の休み時間も待ってるからな。
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