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1章 写真ばら撒き事件
ごん……よろしく
しおりを挟む初めて入った会議室は、教室二個分ぐらいある広さで、長いテーブルが窓側に、その前に椅子が二個並べられていた。その内の一個に先に来ていた伊織が座っていた。まるで面接でもするかのような配置に俺はオエっとなった。
自然と伊織の隣の空いてる方の椅子に座る。
そして俺のすぐ後に、二人のおっさんが入って来た。
「おやっ二人共揃ってるね~。キチンと座っていて偉い偉い」
「教頭!呑気に言ってる場合ですか!」
教頭だとぉ?俺、そんな奴に呼び出されたのかよ!
呑気に喋りながら入って来たおっさんは白髪混じりの比較的髪多めで目が開いてんの?ってぐらい細くなるまでニコニコしてるのが印象的だった。
そのすぐ後ろから慌てたように入って来たおっさんは、俺も見た事がある奴だった。確か一年の学年主任だ。何度か担任に職員室に呼び出されてる内にこいつも混じっていつもの倍説教された日があったのを良く覚えている。つまり俺の敵だ。頭がバーコード頭なのが印象的な。
二人は俺と伊織の前にある長いテーブルに書類っぽいのを置いてそれぞれの椅子に座った。
「他の先生方はホームルームが終わったら来てくれるのかな?じゃあ先に始めてようか」
「ゴホンッえー、二人共まず学年、組、名前を教えなさい。そちらから」
先にバーコードに指名されたのは伊織だった。
伊織は立ち上がり、淡々と答えた。
「二年B組桐原伊織です」
「よろしい。では次」
「…………」
「次ぃ!お前だ秋山!」
「んだよ、俺の名前知ってんじゃん」
「コラァ!どうしてお前はいつもそうなんだ!さっさと立って答えろ!」
バーコードに怒鳴られて仕方なくその場に立って俺も答えてやった。
「ふん……一年A組、秋山だ」
「秋山貴哉くんだね?まぁまぁ、鈴木先生、落ち着いて。桐原くんとは何度か話した事があるね。秋山くん、初めまして。僕はこの学校の教頭をやらせてもらっている阿部権次郎って言います。よろしくね」
「ごん……よろしく」
ちょっと面白い名前に反応しそうになったら、バーコードにキッと睨まれたから大人しくしてる事にした。こいつは俺の担任の二倍説教が長ぇんだ。極力避けたい敵だ。
「今回君達を呼んだのは昨日の写真の件だ。これに写っているのは自分達だと認めるな?」
早速バーコードが昨日ばら撒かれた写真を数枚チラッと見せて言った。
伊織は相変わらず落ち着いた様子でなんか癇に障った。
「はい。認めます」
「……俺らの他に誰だってんだよ。見て分かるだろ」
「秋山ぁ!お前はもうイエスかノーかでいい!喋るな!」
「んじゃ、ノー」
「お前なぁー!何だその舐めた態度はぁ!」
「秋山くんは面白い子だね。担任の玉山先生からも聞いていたが、噂通りだね」
「どーも」
教頭はずっとのんびりとした口調でニコニコ笑っていた。そこら辺の公園にいるようなのほほんとしたおっさん。嫌な感じがしなかったから教頭には逆らおうとは思わなかった。
「教頭!秋山は初めからこうだったんですよ!俺も何度も更生させようと語りかけているのですが、どうやら秋山の心に響かないようで……」
「語りかけてるとか辞めろよ……バーコー、いや、学年主任はただ怒鳴ってるだけで何も入ってこねぇんだって」
「貴様ぁ!今私の頭を見たな!」
「あはは、確かに秋山くんの言う事にも一理あるね~。今の子に怒鳴っても伝わらない事もあるよね。これは勉強になりますな鈴木先生」
「うっ……はい……」
教頭に見られてギクッとしてるバーコード。ここからじゃ良く分からねぇけど、教頭には逆らえねぇみてぇだな。
ここでチャイムが鳴って、ホームルームが終わったのが分かった。はぁ、ここからまたおっさんが増えるのかぁ。早く終わりにしてくんねぇかなぁ。
すると、チャイムが鳴り終わる前にバタバタと乱暴に入って来たおっさんがいた。俺の担任だった。
「遅くなりました!秋山の担任の玉山入ります!」
「おー、担任~!全然遅くねぇよ!早ぇぐらいだって」
「黙れ秋山!敬語を使え敬語を!」
「はーい」
昨日の帰りに少し話してから担任への見る目が変わった俺。俺の担任はうるさいけど、悪い奴じゃない。ずっと敵だと思ってたけど、味方なんだ。だから俺は返事をして大人しくする事にした。
「ほう、とうとう手懐けたのですか玉山先生」
「手懐けたって言い方は辞めて下さいよ……秋山はちゃんと話せば分かる子です」
「ふふふ、正に今その話をしていた所なんだよ。ね?鈴木先生。秋山くんには学ばせてもらったよ」
「え、秋山にですか?お前、何を言ったんだ?」
「それは後で話すよ。それよりも早く話進めてくれよ」
担任に言うと、ハッとして教頭達と俺達の間の壁際にある縦に並べられた机に座った。
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