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本編

直登凄い!上手!

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 その後俺と空で数馬を送って行く事にした。
 数馬は電車やバスには乗れない。だから自転車で通学してるんだけど、それがなかなかの距離らしい。俺と空は今二人乗り出来ねぇから四人で歩いて帰ってた。


「数馬くん、悪かったよぉ、もう人前ではしないからさぁ」

「…………」

「そうだ、お詫びに何か奢るよ♪スイーツなんてどう?」

「…………」

「何だよ数馬くんってば!貴哉にばっかりベタベタしちゃってさぁ!俺の事好きって言ったじゃん!」

「…………」


 直登の言う事に全く反応しない数馬。直登も痺れをきらしてるみたいだった。
 相手が数馬だから仕方ねぇ。俺も初めて数馬のとこ行った時はシカトされまくったもんな。


「直登ー、数馬に好かれてぇなら普通の奴と同じだと思っちゃダメだぜ」

「ふん、貴哉はいいよ懐かれてるから」

「懐いて欲しいならもっと頼りになると思われなくちゃな?」

「俺だって数馬くんの事考えてるもん!少しでも好かれたいから今日だって、暑い中制服着て学校行ったんじゃん」

「分かった♪中西も貴哉になればいいんじゃね?」

「「はい!?」」


 空の呑気な発言に、思わず直登と綺麗にハモってしまった。
 何言ってんだ?直登が俺になるとか無理だろ!


「だって、数馬は貴哉がいいんだろ?だったら中西も貴哉になれば懐いてくれんじゃね?」

「空くんってアホだよね。髪切ってちょっとはマシになったかと思ったけど、相変わらずだったね。貴哉になるって意味分からないんだけど」

「見た目とか、喋り方とかを真似してみれば?まぁ貴哉愛が中途半端な中西には出来ねぇだろうけど」

「なるほどね。それなら余裕だよ。俺の貴哉愛舐めないでくれる?これでも元彼なんでね」


 黙って聞いてたけど、何だか面白い事になって来たな。あの王子キャラの直登が俺になるとか想像出来ねぇけど、自信ありそうな事言ってっし、ちょっと注目だな。
 そして直登はネクタイを取り、一番上だけ外していたワイシャツのボタンを、ガッツリ三個目まで外して胸元を広げて数馬に歩み寄った。
 まずは見た目からですか。俺、ネクタイしてねぇしな。でも胸元をそんなに開けたりはしてねぇぞ?
 それからニヤリと笑って喋り出した。


「おう数馬!俺また赤点取っちまったんだ。勉強教えてくんね?次良い点取れねぇと、進級出来ねぇんだわ」

「ギャハハ!やべー!中西ウケる!」

「直登やるじゃん!セリフまで俺っぽいし!」

「ふん、こんなの序の口だろ。なぁ数馬、手取り足取り教えてくれよ。じゃないと俺馬鹿過ぎて分かんねーからさ」

「コラ!馬鹿過ぎは余計だ!」

「うるせぇお前は黙ってろ」

「あ?んだとコラ」

「ヤバ。貴哉が二人♪まじ面白過ぎ!」

「……直登」


 俺がもう一人いたら喧嘩になるって事は分かったな。だってすげー生意気じゃん。
 でもこんなんで数馬が懐くとは思えねぇけど……お?


「直登凄い!上手!」


 まさかの高評価!数馬は目を輝かせて俺を演じる直登を見ていた。褒められた直登はまたニヤリと笑って演技を続けた。
 俺って笑う時ニヤリって笑うんだ……


「当たりめーだろ?俺を誰だと思ってんだ。ほらそんなカスにくっ付いてねぇで俺のとこに来いよ」

「ちょいちょい俺ディスられてねぇか?」

「俺様王子、面白いから有りでしょ♪」


 発案者の空は終始ゲラゲラ笑ってた。数馬も笑顔になったし、良しとするか!
 直登もこんなに頑張ってるし、そろそろ俺からも直登を応援してやっかな?


「数馬、ちょっと我儘なとこあるけど、直登って良い奴だぜ?それは俺が保証する。だから怖がるのは辞めてやれよ」

「貴哉……」

「お前が初めて教室に来た時、いろいろ助けてくれたのは直登なんだぞ。正直直登いなかったらお前を馴染ませるの無理だったかもだし。直登が調子に乗ったら俺が叱ってやるからさ」

「貴哉ってばあんな連れて来方するんだもん。あの時はファインプレー俺って感じ?」

「……うん。直登、良い人なの知ってる。優しいのも知ってる。でも、俺が直登を好きになったら、貴哉は俺を嫌いにならない?」


 モジモジとしながらそんな事を言う数馬に、俺と直登は本気で驚いた。空はまたゲラゲラ笑ってたけど、数馬の奴、そんな心配してたのかよ!


「何言ってんだよ!嫌いになる訳ねぇだろ!むしろ俺は数馬にも恋愛して欲しいって思ってたんだよ。好きな人作って、そいつと一緒に過ごして、ああ楽しいって、お前には俺との友情の他にもたくさん楽しい思い出を作って欲しいんだ。そんな事心配してねぇで、自分の気持ち大事にしろ!」

「はぁ、さすが貴哉だね。ここぞと言う時においしいとこ持ってっちゃうんだもん」

「だな。貴哉らしいや」


 俺の言葉に直登はやれやれと言った顔をしつつも少し照れてるようだった。そして数馬はと言うと、涙目になりながら大きく頷いた。


「貴哉っ大好き!ありがとう!直登、変な態度ばかりごめんな。これからはちゃんと直登の事見るから……その……俺の事嫌いにならないで?」

「数馬くん……嫌いになる訳ないだろ♡だって俺から好きになった人なんだから♡」

「おー、めでたしめでたしだな。そんじゃこっからはお前ら二人で帰れよ。あ、二人乗りすると生徒会長に怒られるからするなよー」

「バレないようにするから大丈夫♡それよりも貴哉を演じるのって凄く恥ずかしかったよ」


 ベーっと舌を出して爽やか王子が言った。
 ふん、俺になりきるなんて素人じゃ出来ねぇだろうな。
 直登の言う事に笑ってる空を引っ張って俺達は数馬達と別れて帰った。
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