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本編
その甲高い声出すな!
しおりを挟む俺と桃山はジャンケンに負けたので人数分のジュースを買いに来てた。
それにしても直登が数馬をねー。数馬の奴、結構怯えてたけど大丈夫かなぁ?
「貴哉貴哉ぁ、なんかこっち見てるんだけど」
「なんかってなにが……ってチワワ!」
自販機の前で俺が買ったジュースを取ってると、桃山が廊下の先を見て言うから見てみると、キャンキャンうるせぇチワワが離れた所から顔だけ出してこちらを見ていた。
なんなんだよあいつはよぉ!
俺が見てるのに気付くとチワワはすぐに近付いて来た。
「秋山!少し顔貸せ!」
「今忙しいんだよ!いい加減突っかかってくんな!」
「何で言う事聞かないんだよ!」
「お前の事が嫌いだからだよ!」
「おー、貴哉言うね~。何、小平と知り合いなの?」
「知らねー!桃山行こーぜ!」
「おう。じゃあな小平~」
「待ってくれよ!少しだけ、少しでいいからっ」
「お前もしつこいなぁ!」
俺の前に立って両手を広げてまだ言うチワワ。すると、桃山が俺の肩を叩いてニコッと笑って言った。
「貴哉が言うなら消してやるよこんなの」
「ってか何で桃山と一緒なんだよぉ!」
チワワは泣きそうな顔して桃山を指差してキャンキャン鳴いていた。もーうるさ過ぎ!こうなったら話ぐらい聞いてやるか。
「お前なんかが貴哉に絡んでいいと思ってんの?ん?小平ちゃん」
「ひっ!」
「あーもう分かったよ。話聞いてやる!その代わりその甲高い声出すな!頭痛くなるんだ!」
「わ、分かったよ!」
「桃山、悪ぃんだけどジュース持って先戻っててくんね?すぐ行くから」
「えー、心配だから俺もいるよ。一緒に戻ろー♡」
「桃山がいる方が危ないだろ!」
「で?話って何?」
「……二之宮の事だよ」
「茜の事?」
「俺の茜がどうしたって?」
「うう、桃山睨まないでよ……二之宮が部活を辞めるって、本当なのか?」
「…………」
「……そうなのか?貴哉」
チワワがどこでその話を知ったのか知らねぇが、その話は茜本人から聞いてるから本当だった。でも俺から話していい事か分からなかったからしらばっくれる事にした。
「知らねー!」
「本当に?詩音さんから聞いたんだ。文化祭が終わったら次の副部長をやってもらいたいって相談されて……なぁ、二之宮が辞めるのって俺のせいなのか?」
「何お前、茜に早く辞めろとか言ってたじゃん」
「そうだけどっもし俺が言ったからだとしたら……俺……」
チワワは声のトーンを落として話してた。そして最後言いにくそうに桃山をチラッと見た。
桃山はそんなチワワを睨んでいた。
「小平、茜に何て言ったの?」
「……お前いつ辞めるんだって……目障りだって……」
確かにチワワは茜に言ってたな。桃山が怖いのか、泣きそうな顔しながら小さな声でポツポツと喋ってた。
桃山はと言うと、見て分かるぐらいキレてた。まるで祭りの時みたいな恐ろしい目でチワワを見てた。
「も、桃山」
「なぁ貴哉、ここ祭りの会場じゃないから暴れてもいいよな?」
「バカ!場所は関係ねぇよ!どこにいても暴れちゃダメだ!茜と約束しただろ!」
「わ、悪かったよ!二之宮にも謝りたいんだ!だから、謝る時間を作ってもらえないかな……」
「どんな風の吹き回しだ?」
「も、桃山がいるから言いづらいけど、実は俺……二之宮の事が……好きなんだよっ」
「はい死刑」
「やめろ桃山!」
チワワのまさかの告白に驚いたが、それよりも殴りかかろうとしてる桃山を止めるのに必死だった。こいつ茜との約束、全然約束守る気ねぇじゃねぇか!
「だって、桃山よりも俺が先に好きになったんだ!それなのに二之宮は桃山なんかと!俺、悔しくてっ」
「どっちが先か後か何か関係ねぇ。選ばれるか選ばれねぇかだクソチビが!」
「チワワ!お前の言いたい事は分かったから今は逃げろ!こうなったら桃山は止められねぇ!」
「っ…………」
チワワは涙を流しながら悔しそうに桃山を睨み付けて、走ってどこかへ消えた。
いきなりの展開で、もう俺には何が何だか……
今は桃山を落ち着かせるので精一杯だった。
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