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本編
早川と秋山は似てるなっ
しおりを挟む※空side
貴哉達とはぐれてから、茜さんと二人で駅前でずっと並んで立っていた。
一応貴哉からはメッセージで今向かうって来てたけど、あの二人だから時間かかるだろうなぁ。
てかあの二人どんどん進んで行っちゃうんだもんなぁ。屋台を見つけては勝手に始めてやいのやいの言ってるし、もっと俺も貴哉といろいろ回りたいし、ダブルデートっぽい事してぇのに。
隣にいる茜さんはずっと黙っていた。
気まずいから何か話してようかな。
「お互い苦労しますね」
「え?何が?」
「彼氏にですよ。貴哉も桃さんも暴れん坊だから」
「ああ、でもそれがあの二人だからな」
「……そうですね」
「…………」
そしてまた沈黙。
この人絶対人付き合い下手だろ。良い人なんだけど、少しズレてるところあるしなー。
貴哉の事を良くしてくれてるからいいけど、真面目そうだし俺だけだったら絶対関わらないタイプだな。
「俺と二人きりなんて嫌だろ?」
「えっ」
こ、この人ってば俺の心の中読めてるのか!?
図星っぽい事言われてドキッとしてると、顔に出てたのかハハと苦笑いされた。
「いいんだ。慣れてるから」
「そんな事ないですよー。茜さんと二人になるって無いから緊張してるだけです」
「早川は秋山と違って気を使えるんだな」
「えっとー」
「俺なんかに気を使わなくていいぞ。早川も秋山みたいに気軽にしてくれ」
「はい……」
「俺は秋山に出会って救われたんだ。それまでは周りから除け者にされてて、ずっと一人だった。自分の性格は分かっているつもりだったけど、どうにも上手く出来なかったんだ。けど、秋山だけはちゃんと向き合ってくれたんだ。俺の言う事にも耳を傾けて、初めこそはお互い嫌い合っていたけど、一緒にいる内にだんだん仲良くなれてさ、本当に嬉しかったよ」
「はい。その気持ち、分かります」
「今なら秋山の周りには人が絶えない理由が良く分かる。あいつは人を惹きつける魅力があるんだ」
「本人に自覚は無いみたいですけどね。俺といる時も茜さんの話し良くしてますよ。茜茜~って。あと数馬。貴哉は茜さんと数馬といるのが好きみたいです」
俺が教えてあげると、茜さんはクルッとこっちを向いて嬉しそうに笑った。
あ、笑ったら普通に可愛いんだなこの人。
黒髪だし、目付き悪いけど、何か貴哉みたいだ。
「本当か?それは嬉しいな!」
「茜さん!貴哉といる時以外ももっと笑って下さい!笑顔の方が絶対いいですって」
「そ、そうは言っても何も無いのに笑うのもなぁ」
「茜さんは目付きが悪いから勘違いされちゃうんですよ。話したら楽しい人なのに、勿体ないですよ」
「嬉しい事を言ってくれるな。早川は口が上手いな」
「だからお世辞とかじゃないですってば~」
ほんとーにやりにくいなぁ。どうしたらもっと普通に話せるかなぁ?
貴哉みたいにタメ口きくのはちょっとアレだしな……
「それにしても二人共遅いな。まさか二人で遊んでるんじゃないだろうな?」
「あー、桃さんとか勝手に遊んでそうですもんね。そんで貴哉もつられて夢中になっちゃうの」
「俺、ちょっと見てくる」
「ちょ、ここにいた方がいいですって!俺達まで動いたら分かりにくくなりますよ」
「でも……」
「どうしたんですか?」
「早川に気を使わせるの悪いだろ。俺といるとイライラして疲れるだろ」
「そんな事……少しありますけど」
「や、やっぱりな!俺は二人を探しに行くよ。早川は二人が来るかもしれないからここにいてくれ」
焦ったように言って俺から離れて行こうとする茜さん。確かにこのまま行かせたら俺は一人になって楽になるだろう。
だけど、そんな事をしたら茜さんとはずっと距離が出来たままになるだろ。別にそれでも構わないのに、何故か俺は茜さんの手を掴んで止めていた。
「え、早川?」
「本当に面倒な人ですね!茜さんを一人で行かせたら俺が貴哉に怒られるんです。だから側にいてください」
「……分かった」
一瞬悲しそうな顔をして再び俺の横に並んだ。すっかり元気のなくなった茜さんはずっと下を向いたままだった。
「茜さん、お望み通り気を使うのやめますよ」
「ん……そうか」
「俺喉乾いたんで一緒に買いに行きましょ」
「あ、ああ」
茜さんと一緒に歩いて入口ら辺の屋台でかき氷を売ってるのを見つけたから立ち止まる。よし、あれにしよう。
「茜さん!かき氷ありますよ♪シロップかけ放題だって。一緒に食べましょ♪」
「…………」
「何味が好きですか?俺はいちごですね♪」
「早川の好きな味でいい」
「じゃあいちごで♪いっぱいかけちゃお~♡」
かけ放題ってついかけ過ぎちゃうよなぁ。貴哉とか氷が無くなるまでかけそうだな。あ、想像したら面白れぇや。
「楽しそうだな」
「え、あ、俺ニヤけてました?何か貴哉を思い出したら面白くなっちゃって」
「秋山か。早く合流出来るといいな」
「ほんとどこ行っちゃったんだか。桃さんも暴れてないといいけど」
かき氷にシロップをかけてると、茜さんが財布を出して支払いをしてくれた。へー、そういうのはちゃんとしてくれるんだな。まぁ俺も半分出すけどね。
「ありがとうございます。半分出しますね」
「いや、いい。かき氷も早川が食べてくれ」
「えー、一緒に食べましょうよー。ほら、あーんして♪」
「なっ」
俺はいつもの調子で茜さんに接すると、困ったような顔をして少し後ろに下がった。
うん。この人こういうの慣れてなさそうだもんな。でもそんなの知るか。こうでもしなきゃこの人とは近付けない気がするんだ。
「どうせ桃さんとはしてるんでしょ?ほら早くあーんして♡」
「してねぇよ!まったく!早川と秋山は似てるなっ」
文句を言いつつも口を開けてくれる茜さんにかき氷を食べさせてあげる。あはは、何か面白ーい♪
それに、貴哉と似てるって言われたのが嬉しかった。
「美味しいですか?」
「ああ。早川も食べろよ。喉乾いたんだろ?」
「ああそうだった。いただきまーす♪」
「……早川、ありがとうな」
「へ?いきなりなんです?」
「かき氷、こうして誰かと食べるのってとても美味しいんだな」
うわぁ、この人天然!?まるで貴哉といるみたいでちょっとときめいちゃったじゃん!
そんな俺友達いないんですみたいな言葉サラッと可愛い笑顔で言っちゃうとか、貴哉が言うズレてるってのが分かった気がする。
「それにしても二人遅いな。何か奥が騒がしくなって来たし」
「それ、俺も思いました。誰か揉めてるんですかね?」
かき氷を食べながら奥で叫び声がしてたのには気付いていた。それと、さっきから数人の若い人達が駅の方に走って行ってるんだ。
「まさか桃さんじゃないですよね?」
「まさかな……」
俺と茜さんは目を合わせて頷き、その騒がしい奥まで行ってみる事にした。
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