【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ3rd season

pino

文字の大きさ
上 下
76 / 116
本編

俺へのお礼はそれがいい♡

しおりを挟む

 俺と桃山の勝負は続いて、今度は射的をやろうと、桃山の腕を引っ張って連れて行く。もう桃山は勝負に興味が無いのか反応が薄かった。


「どうした?怖気付いたか?」

「違う違う。二人がいねぇんだよ。ほら、茜と空がさ」

「へ?さっきまで後ろにいただろ」

「あちゃーはぐれちゃったねこりゃ。貴哉が遊びたがってどんどん先に行っちゃうから」

「んな!さっきまでお前もノリノリだったじゃねぇか!」

「て事で勝負はおあずけ。まずは二人探すぞー」


 桃山はスマホを出して連絡を取ろうとしていた。
 確かに俺も二人の事をほっとき過ぎたか。空と茜が二人でいるんなら心配いらねぇと思うけど、このまま離れてる訳にはいかねぇしな。


「んー、電話気付かないかなぁ?茜出てくれなーい」

「うわ、俺のスマホ電波悪いし!あ、でも空からメッセージ来てる」


 どうやらはぐれた事に先に気付いた二人は分かりやすい駅の前まで戻ってるらしい。桃山にそれを伝えて俺達も戻る事にした。


「やれやれ、貴哉はいつか迷子になると思ってたよ」

「俺が迷子ならお前もだろ」

「違いますー。俺は貴哉が迷子になるって分かってたから監視してただけですー」

「分かってたならはぐれる前に止めてくれ!」

「あ、良い匂いがすると思ったらお好み焼きじゃん♪なぁ、食おうぜー」

「はいはい、二人と合流してからな」


 チョロチョロとお好み焼き屋の屋台に並ぼうとする桃山を引っ張って駅に向かう。こいつの奔放さには大分慣れたけど、毎回こんなんじゃ身が持たねぇよ。茜は良く付き合ってられるな。


「あ、貴哉ー、こうした方がいいよ」

「は?」


 桃山は引っ張っる俺の腕を解いたと思ったらギュッと手を繋いで来た。しかも指を絡める方の繋ぎ方!これは恋人同士がやるやつじゃねぇの!?
 目線だけ桃山に移して見ると、ニコッと笑っていた。下心はねぇみたいだな。


「これならはぐれないでしょ♪」

「仕方ねぇ。もうこのままでいいや。もう脱線しねぇで駅まで行くからなー」

「わーい♡仲良しこよし♡楽しー♡」

「恥ずかしいから黙って付いて来い!」


 まだ明るい時間だったので、大の男二人が手を繋いで歩くのは目立つ。そうしなくても桃山は目立つってのに。
 

「なぁ貴哉ぁ、浴衣似合ってるじゃん」

「え?ああ、作ってくれてありがとうな!母ちゃんもすげぇって言ってた」

「そりゃ良かった♪」

「お礼したいんだけど、何がいい?あ、俺が出来る範囲でな」

「んー、そうだなぁ」

「高い物もダメだぞー。あと茜にもお礼したいからな」

「それならさ、このままずっと茜と友達でいてやってよ。俺へのお礼はそれがいい♡」

「……なんだそりゃ?」


 予想外の答えが返って来て驚いた。
 てっきりまた変な事言われて却下するのがオチだと思ってたのに、なんだよその拍子抜けするようなお願いは。


「茜って貴哉の前ではああだけど、まだ周りからは嫌われてるんだよねー。まぁそれは俺もだけど。本人は気にしてないのを装ってるけど、俺と違って周りと上手くやりたいって気持ちがあるんだよ茜には。貴哉といるようになってあいつの笑顔初めて見たけど、これからも茜には笑っていてもらいたいんだ。それには貴哉が必要だからさ。茜の事頼むわ♪」

「お前、本当は茜の事ちゃんと考えてんだな」

「もちろんさ♪俺から好きになって初めて付き合えた人だからな♡それも貴哉のおかげだよな~。貴哉がいなかったら俺と茜何て話す機会なかったし」

「いや、お前らならどっかで関わってただろ。分かった。桃山へのお礼、ちゃんとするからな」

「わーい♡あ、茜とエッチするなら俺も呼んでな?ムービー撮るから♡」

「しねぇよ!お前はそう言う事言わなきゃいい男なのに!」


 本当に惜しいんだよ桃山は。黙ってりゃ誰よりもかっこいい見た目してんのに、どうして肝心な時にボケるかなぁ。いや、ボケてる訳じゃねぇ。こいつの場合はマジだったわ。
 
 桃山と手を繋いで人混みの中を歩いていき、駅まであと少しと言う所で桃山の足がまた止まった。
 またかと思って桃山を見ると、どこかをジーッと見て固まっていた。


「何だよ?今度はどの屋台だ?」

「なぁ貴哉、先に行っててくんね?ちょっと用出来たから」

「は?」


 そう言って桃山は俺から手を離して見ていた場所に向かって歩いて行ってしまった。
 なになに、また暴走が始まったのか!?
 俺は放っておく事が出来ずに、桃山の後を追った。すると、そこには同年代の賑やかな集団がいて、騒いでいた。


「なぁアンタら楽しそうだなぁ♪俺も混ぜてくれや」


 桃山の知り合いなのか?その集団に普通に声掛けてるけど、集団は見た目こそ悪そうな奴らばかりだった。中には女とかもいて、地べたに座って楽しそうにしていた。そんな集団を他の人達は迷惑そうに避けて歩いていた。
 桃山の声に、一人が反応して振り向いて桃山を睨み付ける。そして桃山を見て驚いた声を上げた。


「ひっ!も、桃山ぁ!?」

「はぁ?桃山だって!?」

「うわっマジだ!桃山だ!」

「よう、久しぶりだなお前ら。元気そうじゃん。俺とも遊んでくれよ」


 一体何なんだ?桃山は至って普通だったけど、桃山を見た奴らはみんな怯えていた。立ち上がって逃げて行く奴までいた。


「あ、遊ぶ訳ねぇだろ!もう勘弁してくれよ!」

「勘弁する訳ねぇだろ。お前ら見てっと殴らなきゃ気が済まねぇんだ」

「おい桃山!どうしたんだよ?」


 俺が呼んでも全く反応しなかった。腕を引っ張るけど、びくともしない。てか腕がさっきより硬くなってる気がする……まさか、怒ってんのか?
 桃山の顔を見上げると、奴らを睨み付けてて、目がめちゃくちゃ怖かった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンキーDKの献身

ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。 ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。 性描写があるものには、タイトルに★をつけています。 行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

ヤバい薬、飲んじゃいました。

はちのす
BL
変な薬を飲んだら、皆が俺に惚れてしまった?!迫る無数の手を回避しながら元に戻るまで奮闘する話********イケメン(複数)×平凡※性描写は予告なく入ります。 作者の頭がおかしい短編です。IQを2にしてお読み下さい。 ※色々すっ飛ばしてイチャイチャさせたかったが為の産物です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!

処理中です...