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本編

俺へのお礼はそれがいい♡

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 俺と桃山の勝負は続いて、今度は射的をやろうと、桃山の腕を引っ張って連れて行く。もう桃山は勝負に興味が無いのか反応が薄かった。


「どうした?怖気付いたか?」

「違う違う。二人がいねぇんだよ。ほら、茜と空がさ」

「へ?さっきまで後ろにいただろ」

「あちゃーはぐれちゃったねこりゃ。貴哉が遊びたがってどんどん先に行っちゃうから」

「んな!さっきまでお前もノリノリだったじゃねぇか!」

「て事で勝負はおあずけ。まずは二人探すぞー」


 桃山はスマホを出して連絡を取ろうとしていた。
 確かに俺も二人の事をほっとき過ぎたか。空と茜が二人でいるんなら心配いらねぇと思うけど、このまま離れてる訳にはいかねぇしな。


「んー、電話気付かないかなぁ?茜出てくれなーい」

「うわ、俺のスマホ電波悪いし!あ、でも空からメッセージ来てる」


 どうやらはぐれた事に先に気付いた二人は分かりやすい駅の前まで戻ってるらしい。桃山にそれを伝えて俺達も戻る事にした。


「やれやれ、貴哉はいつか迷子になると思ってたよ」

「俺が迷子ならお前もだろ」

「違いますー。俺は貴哉が迷子になるって分かってたから監視してただけですー」

「分かってたならはぐれる前に止めてくれ!」

「あ、良い匂いがすると思ったらお好み焼きじゃん♪なぁ、食おうぜー」

「はいはい、二人と合流してからな」


 チョロチョロとお好み焼き屋の屋台に並ぼうとする桃山を引っ張って駅に向かう。こいつの奔放さには大分慣れたけど、毎回こんなんじゃ身が持たねぇよ。茜は良く付き合ってられるな。


「あ、貴哉ー、こうした方がいいよ」

「は?」


 桃山は引っ張っる俺の腕を解いたと思ったらギュッと手を繋いで来た。しかも指を絡める方の繋ぎ方!これは恋人同士がやるやつじゃねぇの!?
 目線だけ桃山に移して見ると、ニコッと笑っていた。下心はねぇみたいだな。


「これならはぐれないでしょ♪」

「仕方ねぇ。もうこのままでいいや。もう脱線しねぇで駅まで行くからなー」

「わーい♡仲良しこよし♡楽しー♡」

「恥ずかしいから黙って付いて来い!」


 まだ明るい時間だったので、大の男二人が手を繋いで歩くのは目立つ。そうしなくても桃山は目立つってのに。
 

「なぁ貴哉ぁ、浴衣似合ってるじゃん」

「え?ああ、作ってくれてありがとうな!母ちゃんもすげぇって言ってた」

「そりゃ良かった♪」

「お礼したいんだけど、何がいい?あ、俺が出来る範囲でな」

「んー、そうだなぁ」

「高い物もダメだぞー。あと茜にもお礼したいからな」

「それならさ、このままずっと茜と友達でいてやってよ。俺へのお礼はそれがいい♡」

「……なんだそりゃ?」


 予想外の答えが返って来て驚いた。
 てっきりまた変な事言われて却下するのがオチだと思ってたのに、なんだよその拍子抜けするようなお願いは。


「茜って貴哉の前ではああだけど、まだ周りからは嫌われてるんだよねー。まぁそれは俺もだけど。本人は気にしてないのを装ってるけど、俺と違って周りと上手くやりたいって気持ちがあるんだよ茜には。貴哉といるようになってあいつの笑顔初めて見たけど、これからも茜には笑っていてもらいたいんだ。それには貴哉が必要だからさ。茜の事頼むわ♪」

「お前、本当は茜の事ちゃんと考えてんだな」

「もちろんさ♪俺から好きになって初めて付き合えた人だからな♡それも貴哉のおかげだよな~。貴哉がいなかったら俺と茜何て話す機会なかったし」

「いや、お前らならどっかで関わってただろ。分かった。桃山へのお礼、ちゃんとするからな」

「わーい♡あ、茜とエッチするなら俺も呼んでな?ムービー撮るから♡」

「しねぇよ!お前はそう言う事言わなきゃいい男なのに!」


 本当に惜しいんだよ桃山は。黙ってりゃ誰よりもかっこいい見た目してんのに、どうして肝心な時にボケるかなぁ。いや、ボケてる訳じゃねぇ。こいつの場合はマジだったわ。
 
 桃山と手を繋いで人混みの中を歩いていき、駅まであと少しと言う所で桃山の足がまた止まった。
 またかと思って桃山を見ると、どこかをジーッと見て固まっていた。


「何だよ?今度はどの屋台だ?」

「なぁ貴哉、先に行っててくんね?ちょっと用出来たから」

「は?」


 そう言って桃山は俺から手を離して見ていた場所に向かって歩いて行ってしまった。
 なになに、また暴走が始まったのか!?
 俺は放っておく事が出来ずに、桃山の後を追った。すると、そこには同年代の賑やかな集団がいて、騒いでいた。


「なぁアンタら楽しそうだなぁ♪俺も混ぜてくれや」


 桃山の知り合いなのか?その集団に普通に声掛けてるけど、集団は見た目こそ悪そうな奴らばかりだった。中には女とかもいて、地べたに座って楽しそうにしていた。そんな集団を他の人達は迷惑そうに避けて歩いていた。
 桃山の声に、一人が反応して振り向いて桃山を睨み付ける。そして桃山を見て驚いた声を上げた。


「ひっ!も、桃山ぁ!?」

「はぁ?桃山だって!?」

「うわっマジだ!桃山だ!」

「よう、久しぶりだなお前ら。元気そうじゃん。俺とも遊んでくれよ」


 一体何なんだ?桃山は至って普通だったけど、桃山を見た奴らはみんな怯えていた。立ち上がって逃げて行く奴までいた。


「あ、遊ぶ訳ねぇだろ!もう勘弁してくれよ!」

「勘弁する訳ねぇだろ。お前ら見てっと殴らなきゃ気が済まねぇんだ」

「おい桃山!どうしたんだよ?」


 俺が呼んでも全く反応しなかった。腕を引っ張るけど、びくともしない。てか腕がさっきより硬くなってる気がする……まさか、怒ってんのか?
 桃山の顔を見上げると、奴らを睨み付けてて、目がめちゃくちゃ怖かった。


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