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本編

負けたら猫ちゃんね♡

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 電車の中は混んでいて、すぐ隣は人状態だった。そんな中俺達はドアの近くに立っていた。俺をドア側にして空は俺の目の前に立っているんだけど、距離が近くて目のやり場に困る。


「結構混んでるな。桃さん暴れないといいけど」

「もうあいつが暴走してもほっとこうぜ。茜には悪ぃけど」

「貴哉、苦しくないか?」

「おう、空は?」

「平気♪貴哉とくっ付けるから満員電車に感謝かな」

「何かまだ慣れねぇな。空に」

「えー、そろそろ慣れてよ」


 ジッと空を見ると、首を横に傾げてニコッとした。ああダメだ。かっこいい。
 まさか俺が空の事をこんなにかっこいいって思うなんて……

 俺と空が話してると、空のすぐ後ろにいた桃山が空にボソボソ何かを話していた。
 俺は電車の音と周りの音で上手く聞き取れねぇ。


「……はぁ?嫌ですよっ何言ってるんですか」

「いいじゃん♪こういう時にしか出来ねぇんだから」

「桃山、何て言ってるんだ?」

「貴哉に痴漢したいから場所変われって」

「あ、言っちゃったら面白くねぇじゃん。もういいよ。茜にやるから」

「俺にも聞こえてるっつーの。ほんとにお前はろくな事考えないな」

「だってこんな人だらけのとこで突っ立ってるだけとかつまんねぇじゃん。あー早く着かねぇかなぁ」


 俺達より少し背の高い桃山は吊り革のその上の棒に捕まりながらつまらなそうにしていた。そんな桃山に一生懸命掴まり、揺れに耐えてる茜が見えて面白くて笑えた。


「茜必死過ぎるだろー!見てみろよ空ー」

「桃さん羨ましいな。貴哉も俺に掴まっていいんだぞ♡」

「俺背もたれあるから必要ねぇし!てかこのぐらいの揺れなら掴まらなくても大丈夫だろ」

「貴哉ちゃん、そこは嘘でも大袈裟なぐらい倒れちゃう~♡って演技して彼氏に抱き付かなきゃ~。女なら可愛こぶってなんぼよ?」

「女じゃねぇから!それなら空がやってもいいんじゃね?」

「やってもいいの!?」

「あ、やっぱ辞めて?さすがに恥ずかしいから」


 俺の言葉に嬉しそうに目をキラキラさせてる空。こいつなら喜んでやりそうだ。
 にしても桃山はどうしても俺を受けにしてぇみたいだな。ふん、今日は俺が男らしいとこ見せてやるぜ!

 電車は目的地に到着して、やっと窮屈なところから解放された。
 はー、帰りもあれに乗るとかしんどいなぁ。


「着いた着いた~♪茜~!カチューシャ買ってやるよー♪猫耳付けて~」

「あんなの嫌だわ!お前が付けろ!」

「茜吊り目だから絶対猫ちゃんが似合うもん♡貴哉とお揃い買ってやる♡」

「えー、俺もあんなのやだぁ。それよりも桃山!何か勝負しようぜ!今度は負けねぇ!」

「いーよ。負けたら猫ちゃんね♡」

「よーし!俺が勝ったらもう可愛いって言うなよ!今度はボールすくいだ!」


 前回負けたから今回は何となく何でも出来ちゃう桃山を負かしてもう可愛いって禁句にしてやるんだ!
 俺達は小さいボールが水にふよふよ浮いてる前に並んで各々すくい始めた。そしてすぐに脱落者が出たり


「あ!破けた!」

「茜下手過ぎ!水に入れただけで破けるとか逆にすげぇわ!」

「くそー、そういう秋山は取れるんだろうな?」

「当たり前だ♪見てろよー?ほれ!」

「おお!やるなぁ!」


 上手く枠を使って小さいボールを一個ゲット出来た!ドヤと桃山を見ると既に大きいボールを五個皿に入れていた。何ー!?こいついつの間に!


「ふっふっふっ。俺に勝とうなんて馬鹿が思いつく事さ」

「空!お前は!?」


 俺の左隣にいた空の皿の中を見ると、小さいのが何個か入ってた。


「見て見てー♪星とハートのボール取れたよー♡キラキラしてて可愛いだろー?」

「お前が可愛いわ!なんだよ二人共うま過ぎるだろ!」


 そして俺も二個目を取ろうと集中してデカいのを狙っていると、左隣にいる桃山が大きな動きをしたと思ったら……


「あ、手が滑ったー」

「あーーー!」


 桃山が自分のすくうやつを大きく振って、一つのボールを俺のすくうやつに当てて破ったんだ!そのせいで桃山のも破れたけど、俺は結局一個しか取れずに終わった。


「てめぇ!卑怯だぞ!」

「にゃはは♪面白ーい♡」

「あ、俺も破れちゃった。貴哉、ハートのあげるー♡」

「秋山、一個とれただけでも凄いぞ!俺なんかボールにすら触れられなかったからな」

「お前らそれよりもこいつの反則を突っ込めよ!」

「さて次行きますかー。約束通り猫耳着けてもらわねぇとな」

「今のはノーカンだ!あのままやってたら俺が勝ってたかもしれねぇからな」

「んな訳ねぇだろ。時間勿体ねぇからさっさと終わらせてやったんだ」

「貴哉、猫耳いいじゃん。俺も何か着けるからさ♪」

「いや、空はそのままでいいよ。せっかくかっこいい髪型崩れちゃうだろ」

「そんじゃ次は空の髪型を賭けて勝負すっかー♪」

「上等だ!ぜってー負けねぇ!」

「秋山、本当に早川の髪型を崩したくないならそんな賭けしない方がいいのでは?」

「あれが貴哉ですから」


 もはや勝負から離脱した二人は俺と桃山のやり取りを後ろで見ていた。
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