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本編
ヘルプ!早く来い!
しおりを挟む写真撮影の後、茜達と合流する為に駅に向かう。さすがに今日はチャラ男号じゃなく、歩いて来たらしい。暑い中慣れない格好でご苦労なこった。
それにしても空の新しい髪型にまだ慣れないんだが……隣を歩く空をチラッと見てはドキドキしてる俺だった。
そんな俺に空は呆れたように言った。
「あのー、そろそろ慣れて欲しいんだけど?それとも似合わないかな?」
「悪ぃ。慣れるまで時間かかるかも。だってお前髪伸ばすとか言ってたじゃん?それに昨日も会ったけど、普通だったじゃん!」
そうだ。昨日は部活無かったから、昼過ぎに空と会ってイチャイチャしてたんだ。今日祭りだったから早めに帰って行ったけど、まさかあの後切ったのか?
「夜美容室行って来たの。兄貴の知り合いのとこだったから、今日の午前中も行ってアレンジもして貰ったんだ♪この編み込みかっこいいだろー?」
「カッコ良過ぎだ馬鹿!色もそんな染めて……」
「染めたってか色抜いたんだよ。夏だし明るくしたいなぁって。それに貴哉にずっと切れって言われてたからさ」
「え、俺が言ったから切ったのか?」
「うん。貴哉にはもっと好きになってもらいたいからな♡」
ニシシと笑う空はいつもと違う人みたいだったけど、この笑顔は俺が知ってる空だった。
俺の為に髪を切った空が無性に愛おしくて、今すぐ抱き締めたい気持ちだった。
てかこれじゃあ逆サプライズじゃねぇか。
「ありがとうな空。すげぇ似合ってるよ。かっこいい♡」
「やったー♡貴哉だーいすき♡」
「あーあ、今日は俺が空をビックリさせたかったのになぁ~。コレさ、桃山に作って貰ったんだ。こっそり着てって空を驚かせようとしてたんだ」
「驚いたよ!まさか貴哉が浴衣着るとは思ってなかったもん!着て欲しかったけど、絶対嫌がられると思ったから言わなかったし。てか桃さんすげーな。こんなの作っちゃうんだぁ」
「あいつはどこまでも変人だからな」
てか桃山のやつ、部活中とかちょいちょい俺と茜のとこに顔出しては居座ってるんだ。おかげで、空とも仲良くなったから良かったけど、あいつ何しに夏休みも学校来てんの?って思ぐらい茜にちょっかいだしては怒られて遊んでた。
それにしても暑いな。浴衣を着慣れないから動きにくいのもあるけど、このままずっと歩くとか地獄のようだ。
暑くて胸元をパタパタしてると、すかさず空に止められた。
「ちょっと貴哉それ禁止ー!今乳首見えてたぞ!てか何でそんなにはだけてんの!」
「だってあちーんだもん。お前がチャラ男号でこねーから」
「だからってこれはダメだって!ほら直してやるから!貴哉は次からは浴衣着る時は中に一枚着ろよなー」
「お前母ちゃんみてーだな。なんでもいいけど早く行こうぜー。起きてから何も食ってねぇから腹減ったぁ」
「茜さん達は駅にいるんだっけ?合流したら何か食おうな」
「そうそう。多分もういるんじゃん?さっき茜から連絡来てたし」
「何て?」
「ヘルプ!早く来い!って」
「え、何かあったのか?」
「知らね。多分桃山が何かやらかしてるんだろ」
だから俺はほっといた。何だかんだ仲良いから焦ったりはしてない。きっと桃山が変な事して茜が困ってるだけだろ。
そんな感じでゆっくり歩いて駅までたどり着くと、駅外の一角に人集りが出来てた。
俺達はそれを避けて駅の中に入ろうとすると、人集りの中から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「みんなありがとー!最高の夏になったぜー!」
えっ!?桃山じゃね!?
空と顔を見合わせてると、人集りから歓声が上がり、凄い賑わっていた。
ちょ、あいつ何してんの?てか今マイクで喋って無かった?
俺達は混乱してると、どこからか現れた茜に声を掛けられた。
「秋山!やっと来たか!」
既に疲れた顔をしている茜はまさかの黒地に白い縞模様が入ってる浴衣姿で登場。四人とも浴衣とか息ぴったりと言いたいところだが、今はそれどころじゃなさそうだ。
「茜の浴衣姿を褒めてーけど、桃山何してんの?」
「それが、あの中でギターで弾き語りしてる人がいるんだけど、湊がいきなり乱入してな……どうやらその人は湊のファンだったらしく、もう一時間もああしてやってるんだ」
「ファン!?何それ?」
「あー、湊ってたまにバンドのヘルプやってるんだよ。主にドラムって言ってたけど、どうやらギターもいけるみたいでな。秋山、あの馬鹿なんとかしてくれ!俺にはこの人混みの中に入って行く勇気はないっ」
「桃さん、普通にすげーな」
「茜を困らせるなら黙ってらんねぇな。ちょっと連れて来るわ」
俺も人混みとかめんどくせーからやだよ。でも茜からのSOSを無視しちまったからな。ここで返しとかねぇと。
人混みを掻き分けて桃山がいると思われる中心部まで辿り着くと、知らない男の横に座ってギターを持ってカッコよく決めてる桃山と目が合った。
マスクまで外してガチじゃねぇか!
「あ♡貴哉じゃーん♡そんなボロボロで何してんの?」
「そりゃこっちのセリフだ!さっさと来い!祭り行くんだろ!」
「あ、そうだった。そういう事で俺行くわ。またな~」
「ミナトさんありがとうございました!一生の思い出にします!」
「おう、お前も頑張れよー。ほら道開けた開けた~」
マスクをスッと装着して俺を抱えながら人混みをどけて颯爽と歩いて行く桃山。こいつ、本当訳が分からな過ぎ!突っ込みどころ多過ぎて全部どうでもいいわ!
何とか空達の所に戻って来れた時には、せっかく母ちゃんが着付けてくれた浴衣が、上から下まではだけまくって変態みたいな格好になっていた。
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