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本編
何で俺とじゃコンビニ行けねぇの?
しおりを挟む空を引っ張って俺の部屋に連れて行き、思い切りぎゅーってしてやった。
あー、やっと二人きりになれたぜー。
空も腕を回して優しく抱き締めてくれた。
「貴哉、珍しいな。ちょー可愛いんだけど♡」
「んー、かっこいいじゃねぇの?」
「貴哉は可愛いだろ」
「まぁいっか。なぁ、今日待たせて悪かったな」
「ほんと遅すぎだろー。凛子さん達と楽しかったからいいけどさ」
「母ちゃんに俺の話何聞いた?」
「いろいろ聞いた♡凛子さんて本当貴哉の事大好きだよな」
「俺と母ちゃん見てみんなそれ言うけどさー、親なら子供好きなの当たり前じゃね?」
「……俺んちは違う。俺はあんなに愛された事ないから羨ましいよ」
空は笑顔だったけど、声のトーンが落ちたのが分かった。前に少し聞いたけど、あまり仲良くないらしいな。空の母ちゃんだし、気にはなるけど……
「今度会わせろ」
「はぁ?いやいや、会わなくていいよ」
「何で?卒業したら同棲すんだろ?挨拶しとく」
「まだ早いだろ。気持ちは嬉しいけど、本当に俺の母さんはちょっと……てか貴哉に会わせて嫌われたくねぇし」
「俺が空を嫌いになる?めちゃくちゃ厳しい母ちゃんなのか?俺の母ちゃんより?」
「厳しいとかはねぇよ。むしろ逆で、ずっと放置されて来た。あんな風に家族で撮ったアルバムなんてねぇし、人に話せる思い出も何もない」
「……そっか。しつこくして悪かったよ。なぁ兄貴は?会わせてくれるか?」
「ああ、兄貴なら。てか兄貴が貴哉を連れて来いって言ってたんだ」
「俺の事話したのか?」
「うん。付き合ってる事も知ってる。何か兄貴が前に男と付き合って良い思いしなかったから心配してんだよなー」
「ふーん。俺達なら大丈夫だって見せ付けてやろうぜ」
俺はベッドに移動しながら空に言ってやった。
俺もその内弟が出来るかもしれねぇからな、兄貴ってやつを勉強しなきゃだからちょうど良い。
空も俺の横に座ってほっぺにキスして来た。
「貴哉ってば兄貴の前でこういう事出来んの?」
「キスする必要はねぇだろ」
「見せ付けるんだろー?」
「んー、そういう見せ付けるじゃなくて……」
見てるだけで仲良しですって分かるようなとこを見せてやりてーんだよなぁ。そう、茜達みたいなバカップルみてーに。
あ!茜達と週末祭り行くの言わなきゃだった!
「空!今週末空いてるか!?祭り行こーぜ♪」
「いきなりだな!いいじゃん♡行こうぜ」
「実は茜達に誘われたんだ。ダブルデートしようって」
「ダブルデートか。あの人達となら楽しそうだな♡」
「んじゃ土曜日空けといてな♪」
「りょーかい。なぁ貴哉……」
「ん?」
無事祭りに誘う事が出来て満足した俺は、ベッドに寝転がると、空が上に乗って来てキスされた。
空の長い髪が垂れて顔に当たってくすぐったかった。
「そ、ら……んっ」
「貴哉♡イチャイチャするんだろ♡」
「おう……」
「てか貴哉だけ風呂入ってズルいんだけど。俺もシャワーぐらい浴びたかったな」
「入ってくれば?何なら泊まってけばいいじゃん」
「いいの?」
「もう時間も遅いし。てか空が風呂入ってる間にコンビニ行ってくる。何か欲しい物あるか?」
「え、それなら俺も一緒に行く」
「いや、一人でいいし」
「何それ?怪しくね?」
「怪しくねぇよ。ほら早く風呂入って来いって」
「何で俺とじゃコンビニ行けねぇの?」
あちゃー、すっかり怪しまれちまったな。実はローションが欲しかった俺。空とイチャイチャしたらヤリたくなるだろうからあのヌルヌルする液体を買いに行きたかったんだ。
んー、もう空と買いに行っちゃうかー。
「うるせぇなぁ。ローション買うんだよ」
「ローション?えっ貴哉、ローションって何の事だか知ってるの?」
「知ってるわ!ヌルヌルするやつだろ。空を傷付けたくねぇから使った方がいいだろ」
「んんん?待て待て。いろいろ突っ込みたいけど、順番に行くわ。まず、ローションをどこで知った?」
「あ?そんなの伊織に……あ」
「桐原さんね。だと思った」
普通に答えちまったけど、やべーよな。これから空とするかもしんねぇのに、他の男とヤッた話なんて。空は笑ってるけど、すげー我慢してるのが分かる。
「悪かったよ……」
「ふぅ。すげぇムカつくけど、終わった事だから」
空怒ってるよー。これじゃイチャイチャどころじゃなくね?どうすれば空の機嫌良くなるかなぁ?ダメだ!思いつかねぇ!
そもそも俺が人の機嫌を取るなんて出来る訳がねぇ。もう何も考えずに、普通にしたい事を、空をギュッて抱き締めて俺からキスしてやった。
「……空、怒らないでくれよ。もう空だけだから」
「貴哉ぁ♡……怒ってねぇよもう!そんな事言うとか可愛い過ぎるだろー!よし!一緒に買いに行くぞローション!てかコンビニに売ってねぇだろ。ドラッグストア行くぞ」
「コンビニにないのか?てか空も知ってたんだな、ローション」
「……男なら知ってんじゃね?それともう一個突っ込みてーんだけど、貴哉が挿れんの?」
「おう♪俺、そっちは初めてだからやってみてーんだ♡」
「貴哉の初めてとか欲しい!いや、でも絵的に俺が挿れるべきじゃ……あ、これは雰囲気で決めるかー♡」
やっぱり男だからそっちもやってみてぇんだ。
俺と空はチャラ男号で最寄りのドラッグストアまで最速で向かった。
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