【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ3rd season

pino

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本編

貴哉、学校楽しいか?

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 母ちゃんが良く話してくれる俺がガキの頃の昔話。
 覚えてるようで思い出せないぐらい小さい頃だ。

 母ちゃんは本当の父ちゃんが亡くなってから必死で俺の事を守って生きて来てくれた。
 たまに乱暴だけど、誰よりもめちゃくちゃ愛してくれてる。それは俺にも分かるぐらいに。

 母ちゃんと本当の父ちゃんの後輩である今の父ちゃんはずっと母ちゃんに片想いしていたらしい。
 だから一人で俺を育てようとしていた母ちゃんの側を離れなかったんだって。
 母ちゃんは初めは巻き込みたくないからっていうんで、中学卒業したら母ちゃんと俺の為に働くと言う今の父ちゃんを説得して高校、更には大学にまで行ってもらったらしい。

 その頃の母ちゃんは俺の事を一人で育てていくって決めてたらしいけど、少しずつ今の父ちゃんに惹かれてた。
 でも俺がなかなか懐かなかなくて、踏み切れずにいた。

 今の父ちゃんが20歳になった時、俺と親睦を深めようと俺と母ちゃんを連れて山に囲まれた川沿いの場所にバーベキュー出来る場所があって、そこに連れてってくれた事があった。
 これは薄っすら俺も覚えてる。所々だけど、この時に俺は今の父ちゃんを好きになったんだ。

 自然が多くて水が綺麗な川に、まだ5、6歳の俺ははしゃいで一人で遊んでた。父ちゃんと母ちゃんはバーベキューの準備をしていて、俺から目を離してしまったらしいけど、俺の記憶はここまで。

 ここから先は二人に聞いた話だ。

 いつの間にか深い所まで行ってしまった俺は流れの強い場所で転んでしまい、そのまま流されたらしい。
 それを母ちゃんが見てて、助けようとしたらそれよりも先に父ちゃんが動いたって。流されていく俺を必死に追いかけて、何とか助け出してくれたんだ。

 母ちゃんはボロボロ泣いて助け出された俺を一生懸命抱き締めてくれたって。
 その時父ちゃんも泣いてたんだけど、それは俺が小さな手を自分の方に伸ばして流されながらも「父ちゃん!」って呼んだからそれが嬉しくて泣いたらしい。

 俺はこの出来事を覚えてないけど、その後から俺は父ちゃんって普通に呼ぶようになったし、母ちゃんと同じぐらい好きにもなったんだ。

 俺はふと我に返ってソファにいる母ちゃんと空を見る。きっと母ちゃんはそん時の写真見せながら空にこの話してんだろうなぁ。
 母ちゃんの中でもこの出来事は記念になるぐらい嬉しかったらしい。

 目の前にいる父ちゃんはホットプレートの上を片付けて、テーブルの上を綺麗にしていた。
 父ちゃんは母ちゃんといる時本当に幸せそうだ。
 

「なぁ父ちゃん」

「んー?あ、まだ食べたかったか?」

「父ちゃんは……」

「何だよ?」


 父ちゃんは俺の父ちゃんでいいの?

 今更だけど、気になったんだ。
 だって、母ちゃんの事はずっと好きだったから一緒にいられて幸せだろうけど、俺とは血が繋がってねぇじゃん。

 それに、父ちゃんって真面目だし普通にかっこいいから違う人生があったんじゃないかって思う事があるんだ。
 母ちゃんと子供を作らないのはきっと俺に遠慮してだと思うし。


「貴哉、学校楽しいか?」

「え?あ、ああ。朝起きるのは大変だけど、楽しいよ」

「それなら良かった。凛子さんから貴哉が進級出来ないかもって聞いてたから心配してたんだ。いつもほったらかしにしてごめんな」


 父ちゃんは申し訳なさそうに言った。
 母ちゃんとそんな話してるなんて思わなかったから驚いた。確かに父ちゃんはいつも仕事だから、こうやって話す事もあまりないけど。


「本当はもっと貴哉と話したりしたいんだけどな。俺も凛子さんと貴哉を幸せにしたくて必死にやって来たけど、いつの間にか貴哉は父ちゃんよりも友達といる方が楽しいと思う年齢になってたな。あはは」

「そんな事ねぇよ。父ちゃんこそ、俺なんかの父ちゃんになっちゃって……良かったのかよ……」

「ああ、良かったよ。貴哉の父ちゃんになれて俺は幸せだ♪にしてもお前がそんな事を言うなんて珍しいな。何かあったのか?」

「な、何でもねぇよ!それより俺、弟が欲しいんだけど!」

「弟?……って、それって!」

「頑張れよ父ちゃん~」

「り、り、凛子さん!貴哉が欲しい物があるそうです!」


 俺のおねだりに父ちゃんは興奮して、片付けそっちのけで母ちゃんの方に行った。
 まぁ兄弟が欲しかったのは本当だしな。大分歳離れちゃうけどそれはそれで面白そうじゃん?

 そして、俺はそっと空に近付いて腕を引いた。


「空、今のうちに部屋行こうぜ」

「あ、おう!」


 いきなり父ちゃんが入って来て訳が分からない感じの空だったけど、俺の言葉に笑顔で着いて来た。
 さぁて俺達も楽しむぞ~♪

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