65 / 116
本編
やっぱり父ちゃんか
しおりを挟む茜、桃山バカップルに焼肉をご馳走してもらって急いで家に帰る。やべー、すっかり遅くなっちまった!もう19時過ぎとか家で待ってる空が怒ってそー。俺だけ飯食っちゃったし。
でも空から思ってた程連絡来てねぇんだよな。茜達と飯食ってくって言ってもオーケーってだけだったし。きっと母ちゃんがいて話してるとかなんだろうけど、心配だったから走って帰った。
「ただいまー!」
「貴哉おかえりー♡」
息を切らしながら玄関に入ると、真っ先にリビングの方から空が飛び出して来た。あれ?機嫌良い?てか何か良い匂いするけど、この匂いは焼肉か!?
「おう帰ったか愛しの息子♪貴哉の好きな肉あるぞ~」
「マジかよぉ!」
さっき焼肉は食って来たばっかだっつの!しかもたらふく!でも何で焼肉なんかやってるんだ?今日は空が来てるから奮発したのか?いつもは俺と母ちゃんしかいないから簡単な物ばっかなはずなのに。
俺がガッカリしてると、缶ビールを持った母ちゃんが近付いて来てムッとして言った。
「何だよその反応?あんた焼肉好きじゃん」
「好きだよ。でもさっき食って来たばっか……」
「はぁ!?高校生の分際でど平日にしかも制服着たまま焼肉だぁ!?どこにそんな金があるんだ!」
「先輩に奢ってもらったんだよ!ちょ、空助けろ」
酔った母ちゃんはしつこくなるから、俺は空に振って着替える為に部屋へ逃げた。
風呂にも早く入っちゃお……
着替えながら考えるけど、やっぱり変だ。空が来たぐらいであの母ちゃんが家で焼肉なんかやろうとするか?いや、焼肉ならする。だけど、それは父ちゃんがいる時だけ。俺も母ちゃんも面倒くさがりだから準備する人がいないとやらねぇんだ。
まさか父ちゃんがいるのか?慌てて帰って来て玄関からそのまま部屋に来ちゃったから分かんねぇや。父ちゃんの革靴あったかなぁ?
まぁいいや。下に行けば分かる事だしな。
とりあえず風呂入ってサッパリするか~。
着替えて、替えのパンツ持って脱衣所に行くと、風呂の電気が点いてるのに気付く。誰か入ってんのか?えー、母ちゃんは酒飲んでたし、空な訳ねぇだろ?じゃあやっぱり父ちゃん?
俺は服を着たまま風呂のドアを開けて中を確認すると、湯船に浸かってた父ちゃんがいきなり現れた俺に驚いていた。
「やっぱり父ちゃんか」
「貴哉!帰ってたのか!」
「今帰った。父ちゃんもう出るのか?」
「今浸かったばかりだよっもー俺はどこ行ってもゆっくりさせてもらえないのな」
やれやれといった顔をしてる父ちゃん。やっぱり焼肉の準備は父ちゃんがやらされたんだ。
俺も早く入りたかったからそのまま服を脱いで中に入った。
「なんだ、今日早かったんだな」
「頑張って早く終わらせて来たの!それなのに、帰って来るなり凛子さんに肉と酒買ってこいって言われるし、ホットプレート出せってこき使われるし、やっと風呂に入って疲れ癒せると思ったら貴哉入ってくるし……」
「いいじゃん。好きな母ちゃんにこき使われるなら」
適当に聞きながらシャンプーしてると、父ちゃんはまだブツブツ言ってた。
きっと父ちゃんは早く帰って母ちゃんと二人で過ごせると思ってたんだと思う。普通のサラリーマンだけど、父ちゃんはキチンと大学も出てて真面目に仕事してる。だからか去年とかにまだ若いのに役職ってのを貰ったらしく、それからは毎日遅くまで仕事の日々で父ちゃんに会うのは休みの日ぐらいになってた。
それでも俺は知ってるんだ。母ちゃんは寝ないで父ちゃんを待ってる事を。きっと父ちゃんも気付いてる。母ちゃんも、俺が産まれてからずっとスーパーでパートやってて働いてるけど、風邪とか体調悪い時以外はずっと起きてる。
二人が仲良いのは俺でも分かる。一見父ちゃんの一方通行に見えるけど、母ちゃんもちゃんと父ちゃんの事が好きだと思う。
だから俺はそんな二人が好きだ。
「そりゃあ凛子さんの為なら何でもするけどさぁ」
「父ちゃん背中流してやろっか?」
「何だよ急に……てかもう洗ったよ」
「大きくなってからは一緒に風呂なんて入らないからたまには親孝行しようと思ってさ」
「貴哉……」
俺の言葉に驚いて鼻を赤くする父ちゃん。
父ちゃんは俺がこういう親子みたいな事を言うと必ず鼻を赤くする。母ちゃんが言うには喜んでるらしい。
「まったく貴哉は一丁前な事言うようになって!俺からしたらまだまだ貴哉は子供だ!俺が洗ってやるからな!」
「うわっいきなり触るからシャンプー目に入ったじゃねぇか!」
湯船から手を伸ばして俺の頭をわしゃわしゃとしてくる父ちゃん。泡が目に入って痛くて目を閉じた。
あー、これ父ちゃん泣いてるな。俺は目が痛い振りをしてしばらく目を閉じていた。
10
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どいつもこいつもかかって来やがれ 5thのその後
pino
BL
どいつもこいつもかかって来やがれ5th seasonのその後の話です。
秋山貴哉は口悪し頭悪しのヤンキーだ。無事文化祭をやり遂げたけど、実はまだやり残した事があった。
二年でフェミニンな男、小平七海との約束を果たす為に遊ぶ約束をするが、やはりここでも貴哉は遅刻をする事に。寝坊しながらも約束通りに七海と会うが、途中で貴哉の親友で真面目な性格の二之宮茜と、貴哉の元彼であり元チャラ男の早川空も合流する事になって異色のメンバーが揃う。
他にも貴哉の彼氏?桐原伊織の話や元チャラ男の早川空の話もあります。
5thの新キャラ、石原類、浅野双葉も登場!
BLです。
今回の表紙は褐色肌キャラの浅野双葉くんです。
こちらは5th seasonのその後となっております。
前作の続きとなっておりますので、より楽しみたい方は、完結している『どいつもこいつもかかって来やがれ』から『どいつもこいつもかかって来やがれ5th season』までを先にお読み下さい。
貴哉視点の話です。
※印がついている話は貴哉以外の視点での話になってます。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺
高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる