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本編

気に入らない奴は徹底的に叩いて潰すがな

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 集合写真を撮った後、俺は急いで茜と桃山が待っている駅まで向かった。
 少し遅くなっちまったから桃山の気分が変わってないか心配だったけど、最悪茜に説得して貰えばいいかとか考えていた。


「おーい、秋山こっちだ!」


 遠くで手を振る茜を見付けて走って合流する。帰ってなかったみたいでホッとした。目の前で息切れしてる俺を見下す桃山と目が合って、ギクっとしてしまう。


「わ、悪かったよ。遅くなって」

「んーん。茜がいたからへーき。それより腹減ってるだろ?何か食うか?」

「へ?桃山怒ってねぇの?」


 これは驚いた。てっきりボロクソに言われるかと思ってたら何か優しくね?
 不思議に思ってると、茜がこっそり教えてくれた。


「湊ってば秋山の事を気に入ったらしいんだ。お前が来る間もずっと秋山の事を聞かれたよ」

「そ、そうなんだ。怒ってねぇなら良かったけど」

「湊って変な奴だけど、何だかんだいろいろ出来るし頼りになるから仲良くしてやってよ」


 何故か嬉しそうに笑う茜。茜がそう言うなら仲良くしてやるけどさ。
 コソコソ話す俺達を見て桃山が言った。


「おう早く行くぞ二人共ー」


 どうやら電車で買い物に行くらしい。桃山に任せてれば間違いないだろうけど、生地っていくらするんだろ?正直あんま金持ってねぇから高かったら無理なんだけど。
 電車に揺られながら吊り革を掴んで立ってる桃山に聞いてみる事にした。


「なぁ桃山、浴衣の生地っていくらぐらいするんだ?」

「んー、ピンキリ。高い物は高いし、安い物は安い。何千円かあれば買える」

「あのさ、俺千円しか持ってないんだけど、買えるか?」

「プッ貧乏ウケる。安心しろ。プレゼントしてやるから」

「え、いいのか!?」

「良かったな秋山。俺も何か買ってあげたいんだけど、何がいい?」

「ちょ、お前ら何でそんなに買ってくれようとしてんだよ!?」

「えー、そりゃなぁ?」

「うん。秋山って可愛いからさ、何かしてあげたくなっちゃうんだよな」

「かわっ……そうですか先輩方。非常にありがたいですっ」


 可愛いって言葉には喜べなかったが、気持ちは嬉しい。だって二人は顔を見合わせて笑っていて、本当にそう言ってるんだと分かったからだ。
 持つべきものはいい先輩だな!


「あ、じゃあ俺も半分出させてよ。二人でプレゼントしよう」

「いいねー。そうしよそうしよ。茜と共同作業イエーイ♡」

「ありがとうな二人共!俺、絶対かっこよく着こなすからな!」

「おう、そうしてくれ。ところで彼氏と祭りデートいつ?」

「いや、決まってねぇけど」

「調べとけよ。じゃあ俺らが行こうとしてる祭り来れば?今週末にあるんだけど、浴衣も間に合うと思うからさ」

「行くー!どこでやるんだ?」

「ちょっと遠いんだけど、なんなら一緒に来るか?ダブルデートってやつすっか♡」

「それ楽しそう!あ、茜は俺と空がいても大丈夫か?」

「もちろんだ♪秋山とはいろんな所に行きたいと思っていたんだ」

「決まりだなー♪彼氏誘っておけよー」


 ダブルデートって、初めてじゃないか!?うわぁ、なんかすっげぇ楽しそう♪
 想像したら楽しみ過ぎてワクワクしてると、目の前にいた桃山に笑われた。


「貴哉はしゃいでるー。かーわーいーいー♡」

「可愛いって言うな!ってかお前そんなキャラだったっけ?」

「俺、気に入った奴には優しいんだぜ♪気に入らない奴は徹底的に叩いて潰すがな」

「どうやらそうらしい。見事秋山は気に入られたんだよ」

「俺のどこを気に入ったんだよ?急過ぎねぇか?」

「俺を褒めたところ」

「褒めた?あ、浴衣かっこよかったってやつか?」

「そうだよ。センスあるって事じゃん。俺センスある奴が好きなんだよ」

「センスって、それ桃山基準のセンスだろ?」

「当たり前じゃん」

「あ、茜の事は何で好きになったんだ?前は伊織だったのに」

「面白いから♡」

「俺が聞いても同じ事を言うんだ」

「前にさ、秋山の為に俺にインタビューしに来ただろ?周りに陰口叩かれても笑われてもそれでも俺に交渉してたじゃん。ただの堅物かと思ってたんだけど、意外と面白いとこあんなーってね。その後に貴哉が呼び捨てしてるの聞いてムカついて、俺茜の事好きなんだって気付いたんだ」

「ああ、あったなそんな事」

「いーくんの事は何でも出来るしかっこいいから好きだよ。でも全然相手にしてくんねーし、寂しかったんだよね俺も」

「じゃあさ、もし今伊織に好きだって言われたらどうするんだ?伊織に戻るのか?」

「嬉しいけど、丁重に断るよ。だって茜いるもん」

「湊……」


 茜が桃山と付き合う前に心配してた事が聞けた。好きな奴がコロコロ変わる桃山だからまた違う奴を好きになるんじゃねぇかと思ってたけど、どうやら意外と一途らしい。これにはホッとしたな。
 茜も目を潤ませて喜んでるし。


「てか俺茜に嫌いだ別れるって言われても別れてやらねーよ?そんな事言い出したらどっかに監禁してずっと俺の側に置いとくし。そんぐらい好きだから茜の事」

「俺も湊の事好きだぞ!別れるなんて言わない!」

「いやいや、今桃山がこえー事言ったんだぞ?そこ突っ込めよ」

「茜大好きー♡なぁちゅーしようぜー♡」

「こんなとこでする訳ないだろっ」


 相変わらずバカップルだけど、今ではこの二人を見てると何か安心するわ。
 
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