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本編

アホ。俺がお前をボコるんだ

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 貰って来た弁当を開けてみると、本当に野菜炒めをメインに、他のおかずも野菜ばかりだった。かろうじて唐揚げが一個入っていたから許してやる事にした。


「空~、野菜ばっかですぐ腹減りそうだから帰りに何か食ってこうぜー」

「いいけど、節約はどうしたよ?ほら俺の唐揚げあげるから」

「やったー♪サンキュー空ぁ」


 俺達のやり取りを物珍しそうに見てる茜。その横では桃山がサンドイッチを頬張りながら見てた。


「二人は仲良いんだな。聞いた話だと秋山から告白したそうだな」

「そう!俺が男らしくバシッと決めてやったんだぜ」

「初めに好きになったのは俺だけどなっ」

「早川も桐原に負けず劣らず男前だし、秋山は本当にモテるな」


 伊織の名前が出て一瞬ヒヤッとしたが、空は態度を変えずに笑顔で話してた。


「あはは、俺なんて桐原さんにはまだ及びませんよ。でも必ず追い抜きますから♪」

「言うね~。あのいーくんを追い抜くとかチャラ男くんに出来んのかね」

「出来ますよ。現に貴哉は俺を選んでくれましたから。その点では勝ってますので」

「ふーん。お前面白いじゃん。なぁ秋山のどこが好きなんだ?」

「俺も聞きたいな」


 何故か会話に加わってくる桃山の質問に、茜も楽しそうにしていた。これは俺も聞きたい。


「どこがって全部なんですけど、強いて言うならちゃんと相手してくれる所ですね。適当そうに見えてしっかりしてるんです貴哉って」


 空が答えた言葉に少し恥ずかしくなった。それを聞いていた茜は笑顔のまま頷いていた。


「ああそれは分かるな。俺も秋山に初めて会った時はこいつに演劇部なんて絶対無理だと思ったもんな」

「俺も茜の事ムカつく奴って思ってた。ずっと俺の事睨んでたもんな」

「薗田さんが気に入った理由が今なら良く分かるぞ」

「え、薗田さんって、秋山の事気に入ってんの?意外ー」

「秋山は自分にとって神だって言ってた。今回の作品も秋山からヒントをもらったそうだからな」

「そうなんですか?凄いじゃん貴哉」

「あー、あれな。俺が中庭に飛び降りたやつな。ほら空が男といちゃついてた時に俺がキレて飛び降りたのあったろ?あれを詩音が見てたんだと」

「あったねー!マジで何が落ちて来たのかと思ったよ。てかいちゃついてねーし」

「なに、秋山って運動神経いいの?」

「普通だ普通。あの時は最短距離で空のとこに行けるのが飛び降りだったから、ああしただけだ」

「ちょー意外。なぁ今度俺と勝負しね?」

「何のだよ。てか球技大会で勝負するかもじゃん」

「ねぇ貴哉、球技大会で勝負ってどう言う事?」

「ああ、俺ら9月にある球技大会でテニスを選ぶ事にしてんだよ。学年不問で対戦するらしいから桃山を思う存分ボコボコに出来るチャンスって訳♪」

「アホ。俺がお前をボコるんだ」

「貴哉テニス出来るの?」

「やった事ねぇよ」

「ギャハハ!それなのに粋がってんのかよ!余裕だなこりゃ」

「安心しろ秋山、俺が教えてあげるからな」

「さっすが茜~♪どっかの前髪斜めとは違って頼りになる先輩だなぁ」

「貴哉がテニスにするなら俺もテニスにするー♡」

「あ、悪ぃ。数馬と出るんだわ」

「えー!何で数馬ぁ!?」

「茜と数馬と俺ってゲーム仲間なんだよ」

「いや、テニス関係なくね?」

「イラッとするから桃山は会話に入ってくんな」

「こうしたらどうだ?香山みたいに秋山が他の競技にも参加すればいいんだよ。そうすれば早川とも一緒に出来るだろ」

「やだよ面倒くせー!」

「こうなったら数馬を脅して辞退させるか……」

「余計な事すんなって。それに数馬は団体だと参加出来ねぇだろ」

「ああ、あの広瀬には地獄だろうな」

「そういや広瀬、ちゃんと坊主にしたか?」

「する訳ねぇだろ。だからお前は入ってくんなって」

「湊、そろそろ戻ったらどうだ?」

「何だよ茜まで俺を邪険にすんのかー?拗ねるぞコラ」

「拗ねるな。帰りに迎えに行くから。な?」

「……分かった♡愛してるぜ茜♡」

「バカ!秋山達が見てるだろっ」


 桃山はマスクをずらして茜のほっぺにチュッとキスをして立ち上がって部室から出て行った。茜が照れてるー。何だかんだ茜達も仲良いよなぁ。
 あ、そうだ俺、桃山に頼みたい事があったんだった!


「茜、時間まだ平気だよな?」

「ああ、大丈夫だけど」

「ちょっと桃山に話があるから行って来る!すぐ戻るから」


 二人は目を丸くして俺を見ていた。
 そして俺はいなくなった桃山を追いかけて部室を後にした。

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