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本編
俺より人気者だよ貴哉は
しおりを挟む夢を見た。俺はとても頭が良くて空や直登、更には戸塚にも勉強を教えている夢。聞かれた事に対してスラスラ答えると、表情を輝かせて俺を崇める三人に、優越感ってやつか気持ちが良くなっていた。
「へへへ、そうだよ、俺は凄いんだ……」
「ぷっ」
「……ん?」
ここで笑いが漏れる声が聞こえて目を開けて見ると、何と、伊織が隣のベッドに座って口を押さえて笑えるのを堪えていた。
そうだ!俺は頭が悪い……じゃなくて寝不足で頭が痛くて保健室で寝てたんだった!
目を覚ました俺に気付いた伊織は声を出して笑い出した。俺は寝転がったまま体勢を伊織に向けてそれを見ていた。
「あはは!お前何の夢見てたんだよ!寝言ウケるんだけど!」
「あれはただの夢じゃねぇ予知夢だ」
「へー、まぁ貴哉が凄いってのは認めるよ。あー笑った」
「てかお前何でここにいんの?俺に何もしてねぇだろうな?」
「するかよ。二之宮に聞いて心配で見に来たのー。あいつすげぇ心配してたぞ」
「茜め。よりによって伊織なんかに」
「食堂から俺だけを呼び出してこっそり教えてくれたんだ。何だよ貴哉?俺が七海と仲良くしてんの嫌なのかぁ?」
茜のやつ何言いやがったんだ?伊織は嬉しそうに笑ってるけど、俺は嬉しくない。だって伊織とはちょっと気まずかったからだ。
「茜が何を話したのかは知らねーが、伊織とチワワの関係なんか気にしてねぇよ。チワワはムカつくがな!」
「そっか……まぁ元気そうで安心したよ」
伊織がフワッと笑った。うっ、まだときめいちまうって俺やべーじゃん。なるべく伊織を見ないようにしてたら、伊織が立ち上がるのが分かった。
「そんじゃ俺は行くな。無理しないでヤバかったら帰って休めよ」
「……おう」
伊織が立ち去ろうとした時、俺はとんでもない行動を取っていた。無意識に起き上がり、伊織の腕を掴んで行くのを止めたんだ。いや、きっと心のどこかで行って欲しくないって思ってたのかもしれない。
これには伊織も驚いて俺を見て来た。
「貴哉?」
「本当は気にしてる……俺の次はチワワなのか?」
聞きたかった事を聞くと、伊織は今度は俺がいるベッドの端に座って答えた。
「んな訳ねぇだろ。七海はただの友達。あいつみんなにああなんだよ。こう見えて俺って一途よ?」
「そうか」
少し安心してホッとしてると、伊織の手が俺の顔に伸びて来てほっぺを触られた。
伊織の匂いがしてドキッとした。
「もう手は出さないけど、貴哉の事は好きなままだよ。早川に隙があったら遠慮なく奪うけどな」
「伊織……」
「貴哉は好きにしたらいい。今まで通り、誰に媚びへつらうでもなく、自由に振る舞え。俺は貴哉のそんなところが大好きだ♪」
「……俺も。モテるくせに俺なんかを好きになっちゃう人気者なお前が大好きだ」
お互い笑い合った。好き同士だけど、恋人じゃないおかしな関係。これは俺と伊織だから成立している関係なんだ。
俺はその後、昼飯をボラ部に取りに行くので保健室を出て伊織と廊下を歩いていた。
伊織は今日は怜ちんと食うらしく、機嫌良さそうにしていた。
「そう言えば怜ちん達とは古い付き合いなんだよな?」
「そ!あと那智な。俺達三人はガキの頃から一緒。兄弟みたいなもんだな」
「揃って高校も一緒とかすげぇじゃん」
「合わせたのもあるしな。いや~あの二人に勉強教えるの大変だったぜ!特に那智がなぁ。多分学力は貴哉と同じぐらいじゃね?」
「マジで!?何か嬉しいじゃん」
「本当はさ、那智はスポーツで幾つかの高校からスカウト来てたんだけど、俺と同じ高校がいいって言い張ってさぁ。馬鹿だよなぁ」
「そうか?本人がいいって言うなら馬鹿じゃないだろ」
「確かにな」
「でもさ、そういう奴がいてくれて良かったじゃん」
ふと楓の事を思い出した。俺は同じ高校を目指していた親友から逃げた経験があるんだ。結果的には今は仲直りして普通に話せる仲にはなれたけどな。
もし楓と同じ高校に行く事になっていたら俺は、空や直登や戸塚、あと数馬と茜もだ。それに伊織とも出会う事はなかったんだろうな。
それはそれで寂しく感じた。
「貴哉の周りも付いて来る奴いっぱいいるじゃん。俺なんかよりいっぱいな」
「おう!あいつらは付いて来るなって言っても付いて来るからな」
「はは、俺より人気者だよ貴哉は」
「同じにすんな。お前みたいに変なファンとかはいねぇよ」
伊織の人気はそれこそ全ての人を対象だ。
俺はごく一部の人だけ。むしろ俺って嫌われる方だと思うし。でもそれでいい。俺が自分でこいつならって思える奴にさえ好かれてれば十分だと思った。
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