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本編
お前らって本当面白いわ
しおりを挟む漫画喫茶で俺と数馬と茜は思う存分ゲームして楽しんで過ごした後、腹が減ったので近くにあったファーストフード店に寄る事になった。
てかゲームをやってると時間があっという間に過ぎるんだ。昼過ぎからやってて、もう18時とか驚いたぜ。はぁ、明日からまた部活行かなきゃかぁ。
カウンターで注文しようとメニューを見てると、数馬がまだ店の外にいる事に気付く。
あ、あいつ人多いとこダメだもんな。
「数馬~、何食う?俺が頼んでやるから選べよ」
「……無理だっ中に入れない!」
「こりゃ重症だな」
これには茜も驚いていた。俺はもう慣れたけど、これでも数馬は成長した方だと思う。俺と会う前の数馬なんて街とか歩けなかったんじゃないか?
俺は数馬のとこまで歩いて行き、手を握ってやる。
「俺がついてるから大丈夫だって。ほら一緒に行こうぜ」
「……ひぃぃ!」
俺らのやり取りを不思議そうに見ている女の店員と目が合ったのか怯えた声を出して俺の後ろに隠れた。見た目で言えばピアスだらけの数馬のが悲鳴でるぐらい怖ぇけどな。
「よし、そのまま進め数馬。俺の後ろに隠れてろ」
「わ、分かった!」
「……お前達、それ真面目にやってるんだよな?」
数馬は俺の背中で顔を埋めたまま歩いてやっと店内に入る事が出来た。後は注文済ませて席に着くだけだ。もう数馬のは俺と一緒でいいや。
「食べる物選んだら先に席に行ってるか?俺が持って行くから」
「サンキュー。んじゃそうするわ」
見かねた茜がそう提案してくれたから空いてる席を探して中をうろつく。お、奥のボックス席空いてんじゃん♪数馬はそのままの状態で付いて来た。
そして数馬を他の客が見えないように壁に向く感じで座らせて俺もその隣に座る。なんとかパニック状態にはならなかったみたいだな。
てか数馬は大分人前に慣れたと思う。初めて教室に行った時みたいなパニック症状はあれから見ないし、初対面の奴と一緒にいたり話したりするのはまだ無理っぽいけど、それでもすげー進歩だと思う。
そんな数馬を見てたら俺は嬉しくなって自然と笑顔になれた。
「数馬、お前って頑張ってるよな♪」
「そうかな……貴哉に迷惑ばかりかけてる気がするけど」
「だから迷惑なんかじゃねぇって。俺が数馬と飯食いたかったから、無理矢理店の中に入れたんだ」
「はは、ほんと貴哉って優しいな」
「一緒に食べたい奴で俺の名前が出て来なかったぞ?」
数馬と話してたら人数分のバーガーとかが乗ったトレイを持った茜が不機嫌そうに俺達を見下ろしてた。
あー、ある意味こいつも周りから浮いた奴なんだっけ?
「何だよやきもちかよ茜~♪ほらお前も俺の背中にくっ付いていいから」
「やきもちとかじゃないっ俺もいる事を忘れるな!」
「大声出すなって。数馬がビクってするから」
「ああ、それはすまなかった」
「……は、はい」
「それよりも早く食おうぜー♪腹減った~」
三人でゲームとかの話しながらバーガーを食べていた。なんかこいつらといると楽でいいよな。気が合うのか楽しいし。あ、空とか伊織とかみたいにうるさくないもんな二人共。
ここで茜のスマホが鳴った。茜は画面をジッと見たまま出ないでいた。
「…………」
「どうしたんだよ?出ろよ。切れちゃうぞ」
「いや、そんな事はしない。秋山達といるのに失礼だろ」
「んなっ!お前真面目過ぎ!どうせ桃山だろ?俺が出てやるよ」
「あっお前!人のスマホを勝手に……」
茜からスマホを奪って電話に出るとすぐに桃山の声が聞こえて来た。何か後ろがうるさいな。
『茜ー?今どこー?会いたいんだけどー!』
「残念だったな!茜は今俺とデート中だ!」
『あ、秋山か。秋山達とゲームして来るとか言ってたけど、まだ一緒にいるのかよ。チッ』
「てかお前こそどこにいるんだ?後ろうるさいんだけど」
『ライブハウスだよ。今から帰るから茜返して』
「無理。今飯食ってっから」
『何食ってんの?俺も行っていい?』
「おう来いよ。漫画喫茶の近くのファーストフード店にいるから」
『オーケー』
俺が桃山との電話を終わらせると二人共焦ったような顔で見ていた。ん?俺変な事言ったか?
「おい秋山っ何で湊にここを教えたんだ!あいつ来ちゃうだろっ!せっかく秋山と過ごせてたのに」
「知らない人増える……薬飲んでおこうかな……」
「お前らって本当面白いわ」
茜はクソ真面目で空回りするところあるけど、実は優しくて後輩想いな良い奴。
数馬は対人恐怖症で自分から周りを寄せ付けないように怖い見た目にしてるけど、本当はゲーマーで友達が欲しい寂しがり屋。
二人共変わってる奴らだけど、俺はこの二人といるのは楽しくて好きだ。
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