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本編
俺はブラックキング!
しおりを挟む日曜日の昼過ぎに、俺は数馬と茜と三人で漫画喫茶で個室の席の壁を開けて、並んでパソコンをいじっていた。
そう、俺は見事に茜をスカウトする事に成功したから、マイク越しだと煩わしいので直接会ってプレイする事にしたんだ。
「そうそう。それで登録完了。次はキャラクター作りな」
「ヒーラーってやつを選べばいいんだろ?」
「それは職業な。まずは男キャラでやるか女キャラでやるかだ」
「そんなの男でやるに決まってるだろ」
「ちぇ、一人ぐらい女いた方が面白いと思ったのによ」
「だから貴哉がやれば良かったんだって」
「やだよ!男の方がかっこいいじゃんっ」
「あー、待て名前を決めろってさ。お前ら何にしたの?」
「俺はブラックキング!昔好きだったアニメのキャラクターの名前だ♪」
「あ、それ知ってるー。てかブラックキングって悪役じゃん。貴哉らしー。広瀬は?」
「…………」
「おい数馬、茜は怖い奴じゃねぇから大丈夫だって」
茜からの質問に数馬はそっぽ向いて答えなかった。二人はこれが初対面で、俺からお互いを紹介したんだけど、どうやら数馬は初めてで、それも年上ってので茜と上手く話せないらしい。もちろん茜にも数馬の病気の事は話してある。
まぁ仕方ねぇか。対人恐怖症の数馬がここまで来てくれただけでもすげーって思わなきゃだしな。
「いいよ秋山。俺そういう扱いには慣れてるから平気だ」
「ああ、茜って友達いないもんな」
「お前それ毎回言うつもりか?」
「嘘だって~!俺がいるじゃん茜さんよ~♪」
「……カズマです」
「え?何て?」
「あー、数馬のゲームでの名前はカズマだよ」
「何だ、そのまんまだな。それじゃ俺は自分の上の名前にしよう」
「待て。お前の上の名前長くて何か呼びずれーから俺が決めてやる」
「は?四文字で秋山と変わらねーだろ」
「何か呼びづらい。あ♪いいの思い付いた♪ちょっとキーボード貸せ」
「何にするんだ?」
茜のキーボードを奪って人差し指でゆっくり打ち込む。数馬は両手で画面見ながら打ってるけど、俺にはそれは出来ないんだ。だから文章でやり取りするチャットとかも苦手だ。
「えっとー、Mはーっと……」
「ミ?」
「N、A……T……O!よし決定!」
「ミ、ナト!?ダメだそれは!」
俺は「ミナト」って打って勝手に決定を押して次の画面に切り替える。ちなみにこのゲームではアカウント名はある程度のレベルまで行かないと変更出来ないようになっていて、俺もまだ変更出来ないレベルだった。
「おい秋山っどうやって戻ればいいんだ?もう性別を選べと言われているぞ!」
「あー、もう名前変えられねーわ。変えたかったら頑張ってレベル上げようぜー♪」
「なんだとっ!くそー!恥ずかしいじゃないか彼氏の名前なんてっ」
「あの、貴哉、あまり大きな声で話してると怒られちゃうよ?」
「だってよ先輩~?頼むぜ~?」
茜に睨まれたけどスルーして俺は自分のキャラクターのレベル上げをしていた。もちろん数馬の力を借りて。茜も早く一緒に行けたらいいのに。
チラッと茜の画面を見ると、既にキャラクターのデザインを決める所まで来ていてヒーラーらしく、羽を生やした男のキャラクターが映っていた。この際桃山っぽく作ったら面白いのに。
「なぁ前髪垂らして右目隠したら?あ、アクセサリーでマスクって無かったっけ?」
「アクセサリーならショップで買えるよ」
「黙れ。ここは俺が自分で選ぶからなっ」
俺からキーボードを遠ざけて一生懸命キャラクターを作ってる茜。まぁ名前だけでも面白いからいっか~。
とうとう完成した茜のキャラクター。黒髪で黒い瞳、服装は初期のやつだから仕方ないけど、なんとまぁ地味なヒーラーの誕生だった。
「よし、茜、あとはチュートリアル見て、はじめの森をクリアしたら俺達とダンジョンに行けるからな。あ、分かんない事あったら数馬が教えてくれっからチュートリアルは飛ばしていいからな」
「あ、ああ。とりあえずやってみるよ」
意外とこういうのは苦手なのか、頭にハテナを浮かべながらキーボードを操作していく茜。
「なぁ貴哉、今来てるダンジョンって隠しダンジョンが出来たらしいんだけど、探してみないか?良いアイテム落ちたら嬉しいんだけど」
「マジで?それ探そうぜ。茜…いや、ミナトにも何かあげたいし、稼ごうぜ」
「ゲーム名で呼ぶなっ」
ゲームに必死になってるかと思ったらしっかり聞いていたみたいで、茜に怒られた。
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