【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ3rd season

pino

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本編

※もしかして俺荷物持ち?

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 ※空side

 貴哉んちに泊まって朝帰った後、今日は一日数馬とゲームするんだとか言ってたからほっとこうとしたのも束の間。昼過ぎに貴哉からメッセージ来たと思ったら「茜に誘われたから花火大会行ってくるー」って!
 誰だよ茜って!男なのか!?女なのか!?どちらにせよ、花火大会って羨まし過ぎるだろ!

 まぁ少し時間が経ってから茜の正体を教えてくれたけどな。
 演劇部の副部長で、助っ人に行った貴哉の世話係だそうだ。今度紹介するって言ってたし、悪い奴ではなさそうだ。

 でも貴哉っていろんな奴を惹き寄せる謎の力があるからなぁ。
 とにかく今の強敵は桐原さんだ。

 少し憂鬱になりながら自分の部屋でゴロゴロしてると、ドアをノックする音が聞こえた。兄貴しかいねぇけど。
 俺が返事をするのを待たずにドアを開けて顔をひょこっと見せた。


「空ー?今日は出掛けないのか?」

「予定ないから不貞寝でもする」

「不貞寝?嫌な事でもあったのか?」

「貴哉に色んな変な虫が付いて困ってるんだよ」

「貴哉?ああ、写メの子か。なぁ気分転換に一緒に出掛けないか?飯奢ってやるよ」

「……行くー」


 兄貴は俺の四歳年上で今年二十歳だ。中学卒業と共に働いていて、兄貴は小さい頃から世話になってる先輩と一緒にバーを経営している。元々このマンションはその人が借りてくれた物で、兄貴には良くしてくれるみたい。たまに会う俺にも飯奢ってくれたり、見た目は厳ついけど、いい人だ。初めはもう一人いたって聞いたけど、俺は会った事がないし、名前すら知らない。今の俺の部屋もその人が使ってたらしいけどな。

 兄貴と家を出て街を歩く。兄貴は車を持っていないから、いつも先輩に送り迎えしてもらってるらしい。


「なぁ今日は店休みなの?」

「あるよ。今日は買い出しを頼まれてるんだ。買い物済ませたらそのまま店に行く予定」

「もしかして俺荷物持ち?」

「良く分かったねー♪さすが空~」


 だろうと思った。物で釣るぐらいだから何かあるなとは思った。まぁ世話になってるし、それぐらいはやるけどさ。
 兄貴が入ったのは小洒落た雑貨屋。お洒落な食器類を見ていた。


「こないだ酔った客が食器を割っちゃってさー。うん、これとかいいかな」

「…………」


 白い丸い皿を手に取ってる兄貴。俺も隣で綺麗に並んでる食器類を見ていた。
 俺は高校卒業したら貴哉と同棲するつもりだ。そしたらこういうの一緒に選んだりするのかなとか考えてた。貴哉の事だから何でも良いお前が選べとか言いそうで笑えた。


「あれ、空ってば楽しそうじゃん。気分転換になって良かったなぁ」

「まぁな!」

「さて、これ買ったら次行くぞー」

「え!まだ何か買うのか!?」


 食器類って重いんだよなぁ。たまに荷物持ちやらされるけど、兄貴の買い物って重い物が多くて結構大変なんだ。
 兄貴が次に行ったのは古めの珈琲屋。中に入ると色んな種類の豆が置いてあって、珈琲の良い匂いがした。
 兄貴は珈琲豆を見てた。俺は良く分かんねぇからお菓子を見てた。
 貴哉に買ってやったら喜ぶかなー?このクッキー買って行くか♪
 俺はクッキーが入った袋を持ってレジへ行く。兄貴もやって来た。


「また女の子にあげるのかぁ?」

「ちげーよ。貴哉にだよ」

「へー、そんなに仲良いんだ。なぁ会ってみたいんだけど」

「その内な」


 兄貴が珍しがるのも俺が今まで男友達の話をした事がないからだ。ましてや男と付き合うなんて、想像も出来ないんだろう。
 俺が財布を出して支払いをしようとしていると、兄貴は持ってた珈琲豆が入った袋を何袋か置いた。


「一緒に払うよ。これも一緒にお願いします」

「は、はい♡」


 兄貴のスマイルに、若い女性店員は目をハートにしてた。
 弟の俺が言うのもなんだけど、兄貴はかっこいい。歳を重ねる毎に増してってる気もするぐらいだ。こうやって無意識に色気を振りまいて女達を虜にしている姿を何度も見て来た。

 買い物を終えて、そのまま兄貴の店に向かう。駅の近くの、少し入った路地にある小さなバー。入り口には準備中の札が掛けてあった。
 中に入ると、ここのマスターがカウンターでタバコを吸いながら新聞を読んでいた。


「雪、遅かったじゃねぇか。っておー!空か?久しぶりだなぁ!」

「お久しぶりです。光児さん」


 室内なのにサングラスを掛けている見た目怖そうな人がバーの最高責任者であり、兄貴の友達である。ワイルドな顎髭が特徴的だ。
 ちなみに雪とは兄貴の名前で、光児はマスターの名前だ。


「光ちゃん、新しい食器買って来たよ。あと、空にも手伝ってもらったから何か作ってあげてよ」

「お、空ぁ♪ありがとな!んじゃ空の好きなパスタでも作ってやるか」

「光児さんの手作りならナポリタンがいい!」

「了解。雪、買って来た食器出して洗っといてくれ」

「はーい」


 光児さんは料理がめちゃくちゃ上手いんだ。特に俺は光児さんの作るナポリタンが大好きだ。
 タバコを消してキッチンに立つ光児さんはとてもかっこよかった。
 あー、貴哉も連れて来てーなぁ。ここで一緒に酒飲めたら楽しそうだよなぁ。でも光児さんってそういうの厳しいから俺達には酒出してくれねぇけどな。
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