【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ3rd season

pino

文字の大きさ
上 下
45 / 116
本編

※もしかして俺荷物持ち?

しおりを挟む


 ※空side

 貴哉んちに泊まって朝帰った後、今日は一日数馬とゲームするんだとか言ってたからほっとこうとしたのも束の間。昼過ぎに貴哉からメッセージ来たと思ったら「茜に誘われたから花火大会行ってくるー」って!
 誰だよ茜って!男なのか!?女なのか!?どちらにせよ、花火大会って羨まし過ぎるだろ!

 まぁ少し時間が経ってから茜の正体を教えてくれたけどな。
 演劇部の副部長で、助っ人に行った貴哉の世話係だそうだ。今度紹介するって言ってたし、悪い奴ではなさそうだ。

 でも貴哉っていろんな奴を惹き寄せる謎の力があるからなぁ。
 とにかく今の強敵は桐原さんだ。

 少し憂鬱になりながら自分の部屋でゴロゴロしてると、ドアをノックする音が聞こえた。兄貴しかいねぇけど。
 俺が返事をするのを待たずにドアを開けて顔をひょこっと見せた。


「空ー?今日は出掛けないのか?」

「予定ないから不貞寝でもする」

「不貞寝?嫌な事でもあったのか?」

「貴哉に色んな変な虫が付いて困ってるんだよ」

「貴哉?ああ、写メの子か。なぁ気分転換に一緒に出掛けないか?飯奢ってやるよ」

「……行くー」


 兄貴は俺の四歳年上で今年二十歳だ。中学卒業と共に働いていて、兄貴は小さい頃から世話になってる先輩と一緒にバーを経営している。元々このマンションはその人が借りてくれた物で、兄貴には良くしてくれるみたい。たまに会う俺にも飯奢ってくれたり、見た目は厳ついけど、いい人だ。初めはもう一人いたって聞いたけど、俺は会った事がないし、名前すら知らない。今の俺の部屋もその人が使ってたらしいけどな。

 兄貴と家を出て街を歩く。兄貴は車を持っていないから、いつも先輩に送り迎えしてもらってるらしい。


「なぁ今日は店休みなの?」

「あるよ。今日は買い出しを頼まれてるんだ。買い物済ませたらそのまま店に行く予定」

「もしかして俺荷物持ち?」

「良く分かったねー♪さすが空~」


 だろうと思った。物で釣るぐらいだから何かあるなとは思った。まぁ世話になってるし、それぐらいはやるけどさ。
 兄貴が入ったのは小洒落た雑貨屋。お洒落な食器類を見ていた。


「こないだ酔った客が食器を割っちゃってさー。うん、これとかいいかな」

「…………」


 白い丸い皿を手に取ってる兄貴。俺も隣で綺麗に並んでる食器類を見ていた。
 俺は高校卒業したら貴哉と同棲するつもりだ。そしたらこういうの一緒に選んだりするのかなとか考えてた。貴哉の事だから何でも良いお前が選べとか言いそうで笑えた。


「あれ、空ってば楽しそうじゃん。気分転換になって良かったなぁ」

「まぁな!」

「さて、これ買ったら次行くぞー」

「え!まだ何か買うのか!?」


 食器類って重いんだよなぁ。たまに荷物持ちやらされるけど、兄貴の買い物って重い物が多くて結構大変なんだ。
 兄貴が次に行ったのは古めの珈琲屋。中に入ると色んな種類の豆が置いてあって、珈琲の良い匂いがした。
 兄貴は珈琲豆を見てた。俺は良く分かんねぇからお菓子を見てた。
 貴哉に買ってやったら喜ぶかなー?このクッキー買って行くか♪
 俺はクッキーが入った袋を持ってレジへ行く。兄貴もやって来た。


「また女の子にあげるのかぁ?」

「ちげーよ。貴哉にだよ」

「へー、そんなに仲良いんだ。なぁ会ってみたいんだけど」

「その内な」


 兄貴が珍しがるのも俺が今まで男友達の話をした事がないからだ。ましてや男と付き合うなんて、想像も出来ないんだろう。
 俺が財布を出して支払いをしようとしていると、兄貴は持ってた珈琲豆が入った袋を何袋か置いた。


「一緒に払うよ。これも一緒にお願いします」

「は、はい♡」


 兄貴のスマイルに、若い女性店員は目をハートにしてた。
 弟の俺が言うのもなんだけど、兄貴はかっこいい。歳を重ねる毎に増してってる気もするぐらいだ。こうやって無意識に色気を振りまいて女達を虜にしている姿を何度も見て来た。

 買い物を終えて、そのまま兄貴の店に向かう。駅の近くの、少し入った路地にある小さなバー。入り口には準備中の札が掛けてあった。
 中に入ると、ここのマスターがカウンターでタバコを吸いながら新聞を読んでいた。


「雪、遅かったじゃねぇか。っておー!空か?久しぶりだなぁ!」

「お久しぶりです。光児さん」


 室内なのにサングラスを掛けている見た目怖そうな人がバーの最高責任者であり、兄貴の友達である。ワイルドな顎髭が特徴的だ。
 ちなみに雪とは兄貴の名前で、光児はマスターの名前だ。


「光ちゃん、新しい食器買って来たよ。あと、空にも手伝ってもらったから何か作ってあげてよ」

「お、空ぁ♪ありがとな!んじゃ空の好きなパスタでも作ってやるか」

「光児さんの手作りならナポリタンがいい!」

「了解。雪、買って来た食器出して洗っといてくれ」

「はーい」


 光児さんは料理がめちゃくちゃ上手いんだ。特に俺は光児さんの作るナポリタンが大好きだ。
 タバコを消してキッチンに立つ光児さんはとてもかっこよかった。
 あー、貴哉も連れて来てーなぁ。ここで一緒に酒飲めたら楽しそうだよなぁ。でも光児さんってそういうの厳しいから俺達には酒出してくれねぇけどな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ 5thのその後

pino
BL
どいつもこいつもかかって来やがれ5th seasonのその後の話です。 秋山貴哉は口悪し頭悪しのヤンキーだ。無事文化祭をやり遂げたけど、実はまだやり残した事があった。 二年でフェミニンな男、小平七海との約束を果たす為に遊ぶ約束をするが、やはりここでも貴哉は遅刻をする事に。寝坊しながらも約束通りに七海と会うが、途中で貴哉の親友で真面目な性格の二之宮茜と、貴哉の元彼であり元チャラ男の早川空も合流する事になって異色のメンバーが揃う。 他にも貴哉の彼氏?桐原伊織の話や元チャラ男の早川空の話もあります。 5thの新キャラ、石原類、浅野双葉も登場! BLです。 今回の表紙は褐色肌キャラの浅野双葉くんです。 こちらは5th seasonのその後となっております。 前作の続きとなっておりますので、より楽しみたい方は、完結している『どいつもこいつもかかって来やがれ』から『どいつもこいつもかかって来やがれ5th season』までを先にお読み下さい。 貴哉視点の話です。 ※印がついている話は貴哉以外の視点での話になってます。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

処理中です...