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本編

あと、意外と遊んでないところ

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 お互いシャワーを浴びて服を着てしばらくベッドに座っていた。ぐしゃぐしゃになった浴衣は床に落ちたままだ。


「23時か。なぁ早川から連絡来てねぇの?」

「来てるよ。メッセージと着信がいっぱい。一応茜と花火大会に行くって言ってあるから平気だと思うけど。そろそろ返さないと疑われそう」

「今返せば?」


 スマホを開くとこの前空と撮った写真が待ち受けに写った。今これを見るのは辛い……


「うわ、仲いいなー!待ち受けにしてんだ」

「あ、そうだ。伊織の写メ撮らせてくんね?」

「いいけど、早川に見られたらまずくね?」

「確かに!でも数馬に送ったらすぐ消すから大丈夫だろ」


 数馬が作ってる部員募集のチラシに載せる伊織の写メを撮る為にカメラを伊織に向ける。
 くそう、イケメンだなぁ。


「ねぇねぇ、何で広瀬に送るんだ?」

「チラシに載せるんだよ」

「何のチラシだよ!」

「部員募集のやつ。あ、動くな」


 説明してると、スマホを持ってる腕をガシッと掴まれて写メ撮るのを止められた。まさか嫌だと言わねぇよな?


「それならみんなで撮ろうぜ♪わいわい楽しいよ~みたいな感じの!」

「……それいいな」


 数馬も写真撮りたがってたし、悪くねぇな。
 それに晴れた昼間とかの方が綺麗に撮れそうだよな。


「へー、広瀬も頑張ってんだな」

「本当、あいつは頑張ってるぜ。まだ知らない奴とは話せないみたいだけど、俺がいればその場にいられるようにはなったしな」

「二之宮もだけど、貴哉ってほんと人気者だよな」

「それはお前だろー。今では人気な理由分かるけどな」

「例えばー?」

「とにかく顔が良い。優しくて頼り甲斐がある。あと、意外と遊んでないところ」

「貴哉ー♡」


 素直に言うとギューってされた。
 こいつ本当に俺と友達に戻れるのか?
 これ以上一緒にいたら俺も戻れるのか不安だからそろそろ友達に戻ろうと思った。


「伊織、いろいろありがとうな。俺帰るよ」

「おう。俺の方こそありがとう。タクシー呼ぶから待ってて」

「お前はまたそんなものっ」

「気にすんな。貴哉にだけ特別だ」


 まさか伊織もボンボンなのか?家を見た感じ、金持ちそうではあるけど、戸塚んち程じゃねぇよな。まぁ城みたいな戸塚んちと比べるのは間違ってるけどな。
 伊織がタクシーに電話をしてる後ろ姿を見てふと思う。
 背が高くて適度についた筋肉のある体。長い手足はモデルみたいで、本当にカッコよく見えた。


「10分ぐらいで来るってさ」

「あ、ありがとう」

「んじゃ準備して下行くかー」

「…………」

「どうした?元気なくね?あ、早川の事か?」

「違う。伊織と離れるの寂しいなって」

「可愛いすぎー!何なら泊まってく?そうすりゃ朝まで一緒だぜ♡」

「タクシー呼んじゃったし帰るけど」

「もー呼ぶ前に言えよー!今ならキャンセルできっかも!」

「いいよ。本当に帰るよ」

「ちぇ」


 これで最後だって言うのに、いつもと変わらない伊織に少し寂しさを感じた。離れたくないのは俺だけなのか。あまり言っても迷惑だろうし、もう辞めよう。


「伊織、部屋を出たら友達に戻るぞ?いいな?」

「え……おう!」


 俺は気持ちを切り替える為に声に出して言ってからドアノブに手を掛ける。
 捻って開けようとしたところで、伊織に後ろから抱き締められた。

 何となく来る気がした。だって伊織だもん。
 予想が当たって俺は嬉しくてドアノブから手を離した。


「あ、ごめん……何かこのまま早川に返したくねぇって思っちゃった」

「はは、来なかったら嫌いになってたぜ伊織!」


 俺は振り向いて伊織に抱き付いた。
 そしてキス。やっぱり伊織が好きだ。
 離れたくねぇんだもん。仕方ねぇ。
 最後だって決めたのは自分だけど、どうしても伊織が好きだ。


「貴哉……前に言っただろ?俺は追うのが好きなんだって。だから貴哉がどんなに離れようが、誰かの所に行こうが追い続けるからな。逃げられれば逃げられるほど燃えるしな」

「変態め。追い掛けて来いよ。俺ってこんな奴だから難しいと思うけど、伊織がすぐ後ろまで追って来てるっ信じてっから。そうすりゃ安心して逃げられるからな」

「いつか追い付くからな♡」

「頑張れよ♡」


 最後にキスをして、手を繋ぎながら部屋を出た。

 伊織とは一応終わりにはしとこうと思う。これ以上中途半端な事はしたくねぇし、空も伊織もどっちも傷付けちゃうからな。

 今はどっちを選ぶなんて出来ねぇけど、いつかは選べると思うんだ。てか俺の悪行が祟ってどっちにも振られたりしてな。

 そしたらそしたで自業自得だなって一人で泣こう。あ、数馬とゲームでもして忘れるか。
 てかゲームで思い出した!茜をヒーラーに誘うの忘れてた!
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