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本編
これは先輩命令だ!
しおりを挟むお泊まり会が終わった次の日。みんなが帰った後、部屋でパソコンをいじっていた。
俺は持ってないから父ちゃんのパソコン借りてんだけど、数馬とゲームをやる為だ。マイクを使って喋りながらできるから楽だ。
「あ、俺死にそう。数馬助けて」
『そっち行っちゃダメだって。あ、ほらー』
「おわっ!またやられた!」
『貴哉ってば勝手に進むから。俺も戻るから待ってて』
数馬はゲームが上手い。だから一緒にダンジョンに行ってレベル上げしてるんだけど、パソコンでの操作がなかなか難しいんだ。
「はー、ちょっと休憩ー」
『やっぱり俺ヒーラーやろうか?』
「いや、それじゃ戦力落ちるだろ。やっぱもう一人誘うかー」
『空はやってくれないんだろ?』
「誘ったけど、返事無し。戸塚は興味ないだろうし、直登はヒーラーはやだとか言いそうだしなぁ」
『まぁ俺達二人で地道にレベル上げしよ』
「そうだなー。ん?あ、電話だ」
ここで誰かから着信があった。って、茜からじゃん。演劇部の事かと思ってすぐに出てやった。
「もしもーし?茜ー?どしたー?」
『休みの日に悪いな。今平気か?』
「へーき。友達とゲームしてた」
『そうか。ちょっと今から会えないか?あ、ゲームの後でも構わないから』
「遊びの誘い?ちょっと待ってて~。なぁ数馬ー、俺ちょっと出掛けて来るから帰って来たら続きやろうぜー」
数馬に許可を取ってからゲームをやめた。
ゲームならいつでも出来るしな。てか茜をヒーラーに誘おうと思ってんだ♪見た目的にパソコン得意そうだし?
「おう茜~、どこ行けばいい?」
『来てくれるのか!あ、場所はメッセージで送るよ。分からなかったら電話してくれ』
「はーい」
茜との電話を切って着替えて家を出た。
メッセージで届いた場所なら歩いて行ける距離だ。駅前のコンビニ。
まさか茜が俺に会いたがってるなんてな~♪すっかり俺の事好きだな茜のやつ。
少しワクワクしながらコンビニまで行くと、茜が外に立っていた。
「おーい、茜~」
「あ、来てくれたのか!」
「近かったからな。でどこ行くんだ?」
茜は白のTシャツに青いカーディガンを羽織っていた。下は普通のGパンにスニーカー。うん。イメージ通りの私服姿だな。
「えっとー、今日って隣街で花火大会あるの知ってるか?」
「知らねー。まさか花火見に行くのか?」
「そうなんだけど、実は湊と行く予定なんだ」
「湊?誰だそれ?」
「……桃山だよ」
「桃山?あー!前髪斜めか!」
一瞬誰の事かと思ったぜ!確かに茜に告ってた時そんな名前言ってた気がするな!
てか茜達ってもうそんな関係になってたのか?
「何だ、上手く行ってんだな。下の名前で呼んでるし」
「湊が呼べって言うからだっ」
「あーはいはい。ごちそーさま。花火大会は二人で行くのな。で、俺は何で呼ばれたんだ?」
「秋山にも一緒に来て欲しいんだ」
「はいぃ!?」
「頼むよ!ほら、俺って秋山しか友達がいないだろ?」
「いやいや二人きりで行けよ。俺邪魔じゃん。桃山に殴られそうだし」
「邪魔なんかじゃない!実は、今日俺から告白しようと思ってるんだっ」
「へ?付き合ってねぇのか?ちょ、桃山と会うまで時間あるか?どっかでちゃんと話聞きてーわ」
「ああ、秋山に相談したかったから早めに家出て来たんだ」
俺と茜は場所をカフェに移して詳しい話を聞く事にした。
「で、お前らの今の関係はあれから変わってないんだな。でも話してく内に茜も桃山を好きになったと」
「そうなんだ。秋山が一緒に帰れって言ってくれただろ?そこでたくさん話をしたんだ。それと昨日とかもたくさん電話をしたんだ」
とても嬉しそうに話してくれる茜はまるで恋する乙女のような顔をしてた。あの部活の時の鬼のような茜はすっかり抜けていた。
「だから正式に付き合いたいと思うんだけど、まだ早いか?」
「いや、いいんじゃね?頑張れよ」
「頑張る!秋山がいてくれたら頑張れる気がするんだ!」
「さっきも言ったけど、二人の間に俺いたら邪魔だって。絶対二人きりの方がいい」
「無理だ!俺一人じゃ告白なんてそんなのっだから、上手くそういう雰囲気に持ってってくれないか?」
「それ、俺に頼むかぁ?」
「恋愛に関しては秋山の方が先輩なんだろ?」
「そ、そうだけどよ。こういうのはもっと気の使える大人な奴……あ、伊織がいんじゃん」
「桐原か?」
「そうだよ。あいつならお前らと同じ二年だし、そういうの上手いだろ。よし、伊織に頼め」
「桐原と俺は話した事がない。それに、桐原は湊が好きだった相手だ……」
「あ」
元気を失くす茜。やべー、確かにそりゃまずいよな。もし桃山がまた伊織の事好きになっちまったら茜がショックでどうにかなっちまうかもしれねぇ。んー、他にいねぇかなぁ?
「いや、逆に有りだな」
「ん?何が?」
「桐原の前で湊に告白をする。そうすれば湊はどちらかを選ばなくてはならない。今は俺を好きだと言ってくれているけど、いつまた桐原の追っかけに戻るか分からないからな。良い機会だからそれも解決しよう!」
「おー、伊織には俺から言っといてやるよ。あいつ今俺のパシリだから断れねーだろ」
「ありがとう!あ、秋山も来てくれるんだよな?」
「いやいや、俺は帰るよ。後は伊織に任せ……」
「ダメだ!これは先輩命令だ!」
「なっ!職権乱用だ!俺は行かねー!」
冗談じゃねぇ。茜と桃山だけならまだしも伊織が来るかも知れねぇのに行ける訳ねぇだろ。空にバレたら面倒なのもあるけど、昨日伊織とは気まずくなるような事したばっかだっつの!
そんなの茜に言える訳ねぇから、とにかく断るしか無かった。
「秋山頼む!好きな屋台何でも奢るから!」
「何でも?」
「ああ!何でもいいぞ!何個でも好きなだけな!」
「なら行ってもいいか?」
「ありがとう秋山ぁ!」
「その代わり、今日の事は誰にも言うなよ!桃山にも口止めする事!いいな!?」
その後も何度も茜に口外するなと釘を刺しておいた。
伊織と会うのは気まずいが、好きな屋台奢ってくれるのは魅力的だ。何を食おうか今から考えておこう。
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