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本編
二人だけの秘密な♡
しおりを挟む戸塚との長風呂で見事にのぼせた俺は一人で布団に寝転がっていた。今は風呂には空が行ったらしい。
「たーかや♪」
「伊織か。何の用だ?」
「冷えピタ貰って来たぜ」
「サンキュー」
そう言って俺のオデコにペタッと貼って、そのまま隣にゴロンと寝転がった。腕を立てて手で頭を支えてこちらを覗き込んで来る感じ。
「戸塚との風呂楽しかったぁ?」
「ああ」
「スッキリした顔してるけど、そんなに良かったのか?戸塚って」
「な!」
内緒話をするように小声で聞かれてビックリしてしまった。まさかバレたのか!?
「え、マジなの?冗談だったのに」
「冗談かよ!脅かすなよ」
「貴哉って嘘つけねーよな」
「てか何もなかったし!戸塚とは話が盛り上がっただけだ」
「ふーん。まぁいいや♪今は俺が貴哉を独り占めだもんね~♡」
「みんなまだ起きてんの?俺そろそろ寝るぞ」
「いいよ寝て。子守唄歌ってやろーか?」
「やめろ」
「あはは。ほっぺ赤い貴哉とか可愛いすぎるんだけど」
「なぁ」
「んー?」
「……いや、なんでもねーや」
「何だよー?気になるじゃん」
「うーん、何で髪色赤なんだ?」
「今絶対言う事変えただろ?」
「もー忘れたよ言いたかった事なんて。てか今ボーッとしててダルいから相手出来ねぇよ」
「いいよ寝ても♪」
「俺が寝たら変な事する気だろ?」
「しねぇよ。早川いるしな」
「いなかったら?」
「するー♡」
「ばーか」
俺は目を閉じて眠ろうとする……が、伊織からの視線で寝付けずにいた。目をパチっと開けて横を見ると、俺の事をニヤニヤ見てる。
「んな見てたら寝れねーだろ」
「可愛いーなぁって♡」
「あっそ」
俺は顔を見せないように伊織とは逆の方を向いてみる。だが逆効果だったらしく伊織は布団の中に入って後ろからぎゅーってして来やがった!
「あ!お前何してんだ!まだ風呂入ってねぇだろ!」
「早川が出て来たら辞めるから♪ちょっとだけ」
「……はぁ」
「なぁ、さっき何言いたかったんだ?」
「んー、俺の部屋で着替えてる時に今度ちゃんと話聞くって言っただろ?何か伊織の様子変だったし、何だったんだ?」
「ああ、あれか」
「今度こそ守るとか言ってたじゃん。何あれ?」
「…………」
「言いたくねぇならいいけど」
「貴哉が俺の事を好きになってくれたら教えてあげる」
「なんだそれ。まぁいいや、そしたら気長に待つわ」
「貴哉」
「ん」
話す気がないらしいので無理に聞くのは辞めて再び目を閉じる。伊織に抱き締められてるのが気持ち良くてウトウトしてきたんだ。
耳元で名前を呼ばれてくすぐったくて小さく声を出すと、もっとぎゅーと抱き締められた。
「ちょ、苦しいって。今気持ち良くて眠れそうだったのに
「ごめん。貴哉がいなくなりそうで怖かった」
「変な事言うんじゃねぇよ」
「ずっと一緒に居てくれるか?」
「それって俺達の間で言うセリフなの?まぁいいけど」
「貴哉ぁ」
「居てやるよ。お前は俺のパシリだからな」
「嬉しい♡なぁちゅーしていい?」
「ダメに決まってんだろ」
「だって、みんな貴哉としてんだろ?俺にもさせてよー」
「やだよ。直登とは一応付き合ってたからしたんだし」
「芽依ちゃんにもしたんだろ?」
「!!」
何でその事を伊織が知ってるんだ!?俺は驚いて振り向くと伊織も目を丸くして驚いてた。
「誰に聞いたんだ!?」
「芽依ちゃんにだよ。さっき貴哉が戸塚と風呂に入ってる時に聞いたんだ」
「あいつ何言いふらしてんだ!他には誰が聞いてた?」
「俺だけだと思うけど……なになに、訳有りなのか?」
この様子だと芽依とキスをしたとだけしか知らないみたいだな。とにかく空に知られてなくてホッとしたぜ。
「あれは仕方なくしたんだ。あいつのストーカーを撃退する為にな」
「ストーカーの話は聞いたけど、貴哉が私を熱く抱き締めて愛を囁きながら誓いのキスをして来たって」
「大分修正されてんな!愛なんか囁いてねぇし、何も誓ってねぇよ。むしろヤケクソな感じだったし」
「まぁ、そんな事だろうとは思ってたけど。そんな事するから気に入られちゃうんじゃん貴哉はさ」
「ああするしか思いつかなかったんだ。てか仲間にやれって言われたんだ」
「今度からは俺が何とかするからすぐに呼んでよ。パシリだし」
「おーそうする。そろそろ空が出て来るだろ。離れろよ」
「キスは?」
「しねぇってば」
伊織を見ると、いつもの笑顔でそこにいた。
伊織の笑顔を見ると胸がくすぐったくなるのは前からだ。このくすぐったさが何なのかはまだ分からない。
でも嫌じゃないんだろうな。伊織に抱き締められても抵抗しないんだから。
俺は伊織をじっと見たまま、伊織の胸の辺りの服を掴んでクイックイッと引っ張る。
「貴哉?」
「俺からはしねぇ。バレたらお前のせいにするからな」
伊織が近付いて来たから目を閉じると、唇に伊織の唇が触れた。一瞬触れただけで、すぐに離れて行った。
目を開けるとすぐ近くに伊織の顔があってドキッとした。やば、俺伊織とキスしちゃった。
ここで歯磨きをしに行ってた戸塚が戻って来て、俺たちを見て不思議そうにしてた。
「二人だけの秘密な♡」
「早く出てけ!」
「おやすみ貴哉」
急に恥ずかしくなって布団を頭まで被って伊織を追い出す。伊織は大人しく部屋から出て行った。
それにしてもこの胸のドキドキはなんだ?伊織とキスして顔を見ただけなのに!まるで空と初めてした時のような……
俺には空がいるのに、こんなんじゃダメだ!
頭を振って伊織とのキスを忘れようと頑張る。
けど、忘れられねぇ。あんな一瞬だけだったのに。その後の伊織の顔も……
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