【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ3rd season

pino

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本編

また息子作ったんですか!

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 自分の部屋のベッドに座ってしばらくぼーっとしてた。
 なんてゆーか、すげー疲れた。
 朝ってか昼に起きてすぐ拉致られてからここに帰って来るまで長かったなー。
 俺はずっと着てた服を脱ぎ捨ててパンツ一枚で替えの寝巻きを探す。芽依のやつ勝手にクリーニングなんかに出しやがって、ちゃんと返してくれんだろうな?


「貴哉ってばなんつー格好してんだ」

「あ?って伊織、勝手に入ってくんじゃねぇよ」


 クローゼットの中を漁ってると後ろから声がしたから顔だけ振り向くと伊織がニヤニヤしながら立っていた。


「早川が凛子さんに捕まってるからチャンスだと思ってさ♪そしたらラッキー♡貴哉のセクシーな姿見れるなんて」

「ふん、そんな事より早く肉食わねーと無くなるぞ」

「肉よりも貴哉を食べたいな♡」


 いつの間にかすぐ後ろまで来ていた伊織が、俺の耳元でそんな事を言うもんだから俺は驚いて振り向こうとして後ろに下がってしまった。するとすっぽり伊織に抱き抱えられた。


「おわっ何だよお前!」

「貴哉が来たんだろぉ♪ほんとにほせーなぁ」

「触るな!」


 何か喜んでる伊織は俺の事を後ろから抱き締めながら腰の辺りを触って来た。くすぐったくて逃げようとするけど、離してくれなかった。


「やめろ!くすぐったいだろ!」

「貴哉、少しだけでいい。これ以上は何もしないから、抱き締めさせて?」

「って、もうやってんじゃん!」

「…………」


 それから伊織は大人しくなった。腰をくすぐる事もなくただ俺を抱き締めてた。
 いつまでこうしてればいいんだ?早く戻らねぇとまた誰か来るかもだし。
 顔だけ伊織の方を向けて様子を見ようとしたら、意外と近くにあってまたビックリした。
 てか、こいつ良い匂いするな。


「もう行こうぜ?誰か来るかも知れねぇだろ」

「ん」

「伊織?」

「ごめん。俺さ、貴哉の事やっぱり本気みたいなんだ。自分でも驚いてる」

「お、おい。とにかく離してくれよ。着替えるから」

「誰にも渡したくないんだ。今度こそ絶対守るから」

「今度こそ?」


 伊織が何を言ってるのか分からなくてどうしたらいいのか迷ってると、バタバタと階段を駆け上がって来る足音が聞こえて来た。
 あちゃー、また誰か来ちゃったよ。空か?直登か?芽依か?空なんかにこんなとこ見られたら絶対機嫌悪くなるじゃんよ!


「伊織、今度ちゃんと話聞くから今は離せ。頼むよ」

「……貴哉」


 伊織の体が静かに離れていく。あれ、変だな。離れてくれてホッとする筈なのに、俺、ちょっと寂しいとか思ってる?
 ここで足音の主が部屋に入って来た。


「桐原さん!貴哉に変な事しないで下さっ……は、裸!?」

「お前タイミング悪いって、俺と伊織は何もしてねーからな?ただ着替えてただけだ」


 やっぱり空だったようで、部屋の中の俺達を見て怒ったような泣いてるような顔をしていた。
 伊織は黙ったままで、少し心配だったけど、俺は寝巻きに着替えて部屋を出ようとした。


「ほらお前ら戻るぞー!このままじゃ全員来ちまうからな」

「ちょ、本当に何もされてないのか!?」

「俺がされてないって言ってんの!信じろよ彼氏!」


 空を押して部屋を出ようとする。伊織は相変わらず黙ったまま下を向いていた。
 仕方ねぇなぁ。


「伊織!しけた面してっと母ちゃんに怒られるぞ!笑えって!俺の前では常に笑顔でいるって約束しただろ?」

「……!」


 俺が背中を叩くと、伊織は気がついたかのような顔をしてフワッと笑った。良かった。とりあえずいつもの伊織の笑顔だ。


「悪かったな貴哉。戻って肉食おう」

「おう!冷えたらメロンもな~♪」


 俺と伊織のやり取りを見ていた空の顔は悲しそうだったけど、何も言わなかった。
 

 三人で庭に戻ると、もう一人増えていて驚いた。なんと、父ちゃんがいたんだ。しかも私服姿で、普通に馴染んでいた。


「父ちゃん!何でいるんだ!?」

「何でって、俺の家だからに決まってるだろ」

「いやいや、そうじゃなくて、今日仕事じゃねぇのか?」

「凛子さんに言われて残業早く切り上げて帰って来たんだよ。そしたらいろんなイケメン来るわ、追加の肉買いに行かされるわ、何なんだよ貴哉の知り合いはよぉ!」


 父ちゃんは泣きながら肉をひっくり返していた。それを見ていた周りの奴らは笑っていた。


「貴哉パパお肉焼くの凄く上手ですよねー♪」

「だろー?竜太郎は私より料理上手いんだ♪」

「凛子さんが喜んでくれるなら何だってやりますからね!」


 直登が隣で褒めると、寄って来た母ちゃんが父ちゃんの肩に腕を回した。それによって上機嫌になった父ちゃんは張り切って肉や野菜を焼いていた。
 俺の父ちゃんは俺との血の繋がりは無い。顔も性格も全然似てない。俺は母ちゃん似だ。父ちゃんはどちらかと言うと直登みたいな王子っぽい感じ。仕事もいつも遅くまであるから、俺が会うのは日曜日ぐらいだ。母ちゃんにベタ惚れで息子の俺にまでやきもちやく始末だ。
 ここで父ちゃんは俺の後ろにいた伊織に気付いてビクッとしていた。


「ってもう一人イケメン増えてるし!もぉ、勘弁してくれよぉ」

「初めまして、桐原伊織です。二人はとても仲が良いんですね♪理想の夫婦だ」

「……だ、だろぉ!?君、分かってるね!」

「竜太郎、伊織も私の息子だ。て事はお前の息子でもあるからな。よろしくな」

「また息子作ったんですか!貴哉ってばどんなけモテるんだよっ」


 と、言いつつ俺をキッと睨む。面倒くせーから逃げよーっと。
 俺はずっと黙って椅子に座ってる戸塚の所へ行った。


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