【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ3rd season

pino

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本編

土産って……メロンじゃねぇか!!

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 桐原とタクシーに揺られていた。スマホも財布もねぇから帰りは徒歩で帰る事になると思ってたから正直助かった。
 でもさ、何か空気重いんだよな。てか何で桐原怒ってんの?店出てからムスッとしてて、いつもみたいにうるさくねぇんだ。何考えてるか分かんねー。


「おい桐原」

「んー?」

「俺を送るんで店出たの嫌だったのか?なら今から戻っていいぜ?俺は歩いて帰るからよ」

「違う。元々俺も早く帰るつもりだったし、気にすんなよ」

「そうなのか?なら何で機嫌悪いんだ?」

「別に悪くねぇけど……あ、やっぱり悪いかもな」

「何で?」

「貴哉が俺の事だけ名前で呼んでくれねーからかな」

「そんな事で!?」

「それと、お前モテ過ぎ。しかも女とかちょー意外」

「モテてねぇよ。あれはお礼だって言っただろ」

「今回のはさすがの俺でも焦ったわ」

「知らねーけど、余裕のない桐原とか面白いな」

「だろ?ほんと俺、どうしちまったんだろ」

「…………」


 そんなのは俺が聞きたい。いつもと違うから少し心配したが、桐原だしまたすぐに元に戻るだろ。


「なぁ、俺が貴哉の事好きなのって迷惑か?」

「迷惑だ!……って言いてぇけど、正直嫌じゃねぇよ。お前良い奴だからな。ただ、空が嫌がる事するのは迷惑だな」

「してねぇよ。俺、貴哉のパシリだもん」

「みたいだな。だからか知らねーけど、今空の機嫌すげぇ良いんだ」

「…………」


 もしかして桐原ってば俺の事諦めようとしてるとか?それならあまり期待させるような事言わない方がいいのか?俺は頭良く無いからそういうの考えられねぇけど、桐原が元気ないのは何か調子狂うな。


「伊織」

「!」

「これで元気出るのか?お前の事は嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。あ、兄貴みたいな好きだぞ?」

「もう一回言って!」

「伊織!」

「あは!貴哉に名前で呼ばれるのがこんなに嬉しいなんてな♪」


 やっといつもの笑顔になったな。
 そんなに名前で呼んで欲しかったのか?まぁ理由は何にせよ、伊織の笑った顔を見れてホッとした。
 あれ、伊織の笑顔見たら胸が……何か前にもあったなこの感覚。


「やっぱりお前は笑顔の方が合ってるよ。しかめっ面してるとこえーよ?」

「そ?じゃあ貴哉の前では常に笑顔でいるな♡」

「おう、そうしてくれ。あ、もうすぐ着くな。送ってくれてありがとうな!」

「せっかくだからお母さんに挨拶したいな。あの面白いお母さんに」

「人の母ちゃんを面白いだと?てか予定あんだろ?」

「ねぇよ。貴哉と居たかっただけ」

「お前な……何なら肉食ってくか?今日うちでバーベキューやんだよ。さっき全然食えなかっただろ?」

「マジで?食べるー♡めっちゃ楽しみー♡」


 送ってくれたお礼として伊織を参加させる事にした。
 家に着くと、既に始まってるのか炭の匂いと肉の良い匂いがして来た。そしてそのままガヤガヤと賑わってる庭に向かう。
 ん?ガヤガヤ?空と母ちゃんしかいないのに何で複数人の声がすんだ?
 俺は疑問に思い庭に顔を出すと、まさかの光景にしばらく固まってしまった。


「あ!やっと帰って来たな不良息子!ってイケメン先輩も一緒なのかい?今日はイケメンパラダイスだなぁ」


 俺を見た母ちゃんが元気良く声を掛けて来た。そしてすぐ側に不貞腐れたような空がいて、更にさっき会ったばかりの芽依と戸塚、更に更に直登までそこにいた。
 何でメンバー増えてんの!?しかも芽依と戸塚って母ちゃんと会った事ねぇよな!?何でここにいるんだ!?


「貴哉ぁ!芽依ちゃんに聞いたぞ!どういう事だよぉ!しかも桐原さんまで一緒とか訳分かんねぇ!電話もいっぱいしたのに、スマホ置いてくとか有り得ねぇ!」


 取り乱した空に泣きつかれながらも俺の部屋にあったであろうスマホを手渡された。すげぇメッセージと電話来てんじゃん!


「そ、空!落ち着け!伊織はここまで送ってくれたからお礼に肉食ってってもらおうとしただけで……芽依には何言われたんだ!?」

「貴哉の彼女だって言ってるぞ!戸塚もずっと黙ったままで否定しねぇし!どう言う事だよぉ!」

「まぁまぁ、空ぁ、楽しい席じゃないか。追加の肉も今来るし、今日はみんなで楽しくやろって♪」

「そうだよ空くん♪貴哉も来た事だし、みんな仲良く楽しもうよ~♪」

「中西!お前もまだ油断ならねぇんだ!何で来たんだよ!」

「何でって凛子さんに誘われたからだよ」

「直登も貴哉の事起こしに来てくれた事があっただろ?イケメンだったからそん時に私が連絡先聞いたんだ」

「母ちゃん、俺の知らない間に友達になんつー事してんだ」

「まぁ、私もお義母様の連絡先知りたいですわ。凛子さん、聞いてもよろしいですか?」

「ああ勿論さ♪芽依は私の娘になるんだからね」

「娘ぇ!?ちょっと凛子さん!それはさすがに冗談キツいです!」

「そうだぞ母ちゃん!てか芽依!何でここにいるんだよ!」

「さっきお義母様に挨拶すると言ったでしょう?」


 よく見ると、さっきまで白のワンピース着てたのに、今は青いワンピースになってる。今度はヒラヒラしてない、膝下まである長いやつだ。
 芽依はニッコリ笑っていた。


「芽依は良い子じゃないか。それにお土産も貰ったんだよ。ほら♡」

「土産って……メロンじゃねぇか!!」

「お母様の趣味を聞いていませんでしたもので、私の好物を選ばさせていただきました。そちらのメロン、最高級の物ですから甘くてとろけますわよ♪」

「貴哉もメロンが大好きなんだよなぁ♪後で切ってみんなで食べよう!空ー、冷蔵庫入れて来てー」


 母ちゃんは木の箱に入ったメロンを出して空に渡す。空は両手で受け取って窓から部屋の中へ入って行った。


「って、空をこき使うな!あーもぉなんだよこの茶番は!」

「はは、相変わらず面白いなぁ貴哉の母さんは」

「凛子さんでいいよ。あんたは名前なんてーの?貴哉の先輩なんだろ?」

「桐原伊織です!俺も息子になれますか?」

「気に入った!伊織お前も私の息子だよ!」

「やったー♪貴哉、兄貴欲しいって言ってたもんな♪今日から兄貴になったぞー」

「おーそうかよー。ってか着替えてくるわ。おい芽依!そう言えば俺の寝巻きどうした?」

「あれなら今クリーニングに出してるわよ」

「まるで夫婦の会話だな」


 ずっと黙ってた戸塚の言葉に俺は我に帰り、騒がしい庭から逃げるように家の中に入った。
 
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