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本編

何だよこの飢えたライオンみたいな奴らは!

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 頭の中の記憶を頼りに親睦会の会場の店の名前を芽依の運転手に伝えてとある焼肉屋に到着した。
 多分ここだと思う。集合時間には少し遅れたが、顔を出すだけだし問題ないだろ。

 芽依に軽くお礼を言って走り出すのを見送ってから店の中に入る。外で待たれたら大変だからな。


「秋山!来てくれたのか!」

「よう茜~♪悪いな、スマホと財布忘れて来ちまった」

「どんなけ忘れ物してんだよ」


 入ってすぐに茜が寄って来てホッとした。やっぱりここだったみたいだな。
 聞いてみると、俺からの連絡が無くて心配した茜はこうやってちょくちょく入り口まで見に来てくれてたらしい。良い先輩だな。
 会場になってる奥の広い席まで行くと、十数人が座ってもう始めているようだった。桐原もいるな。


「貴哉くん!よく来てくれたね♪さぁ俺の横に座って♪」

「あ、薗田さん秋山の席はここなんで」

「いやいや、俺の横空けるからこっち来いよ♪」


 詩音、茜、桐原の順に言われたけど、俺は空いてた茜の横に座った。
 あとは元副部長と、今の部長の卯月。あとは知らない奴ばっかだなー。少人数でやるって言ってたけど、結構来てるみたいだな。


「貴哉くんはすっかり二之宮くんと仲良くなったみたいだね」

「茜ってめちゃくちゃ良い奴だからな♪」


 詩音に言われて俺がそう答えると、他の知らない奴らが一斉に驚いた顔で見て来た。
 俺変な事言ったか?


「あ、茜は友達いないんだっけ」

「お前もだろ」

「はは!お前らそんな事言えるまで仲良くなったのかよ!面白すぎ。貴哉何飲むー?」


 桐原に聞かれたけど、そんな長居する気はねぇから断る事にした。


「あ、俺すぐ帰るからいい。財布忘れたし」

「飲み物ぐらい飲んで行けよ。貴哉の分は俺が払うし」

「いーくん、今日は二人の歓迎会も兼ねてるんだ。君達は気にせず楽しんでよ♪貴哉くんはコーラかな?お茶かな?お肉は適当に頼んだから好きなの食べてよ。あ、ライス頼もうか」

「えー、じゃあお言葉に甘えて♪って事だ。貴哉好きなの食おうぜー♪」

「いや、マジでこの後用があっから」

「おい秋山、この箱は何だ?プレゼントか?」


 俺が持ってた唯一の私物の芽依からもらった箱に気付いた茜が不思議そうに見ていた。
 あ、一応空っぽの財布だけは持ってたな。


「それ貰ったんだ」

「て、貴哉このブランド好きなのか?めちゃくちゃ高いとこだぞ」

「そーなの?俺は知らねーけど」


 桐原が箱を取ってパカっと開けて中身を見てた。
 すると更に驚いてた。


「お前これ限定のやつじゃん!数十万はするぞ?誰に貰ったんだ?」

「はぁ!?そんなすんのかよ!」

「貴哉くんの誕生日か何かなの?」

「ううん。ただちょっと頼まれた事を手伝っただけ。ちょっと頭おかしい女なんだ」

「女ぁ!?」


 何だ?俺が女って言っただけで、桐原だけじゃなく、他の知らない奴らまで食い付いて来やがった。


「お前女いるのか!?紹介しろ!」

「合コンセッティングしてくれ!」

「どこの女だ!」

「うるせぇなぁ!一気にしゃべんな!」


 わらわらと群がって来た。何だよこの飢えたライオンみたいな奴らは!


「貴哉くんは本当にモテるね~♪男子校だと出会いが無いからみんな必死なんだよ」

「お前ら秋山に近付くな!散れ散れ!」

「たーかや?詳しく聞かせてくれよ♪その女の事♪」


 俺の隣に無理矢理座り込んで桐原がニコニコ笑顔で言う。何だこの笑顔なのに怒ってるようなオーラは……
 てかそろそろ帰らねぇと、空が来るからって言うんで母ちゃん張り切って庭でバーベキューやるって言ってたんだ。準備手伝ってねぇし、遅くなると怒られちまう。


「俺そろそろ帰るわ!スマホ置いて来ちまったし、母ちゃんに怒られるから!」

「そうか、家族との約束なら仕方ないね。貴哉くん、またゆっくり出来る時に食事をしよう」

「秋山、気をつけて帰れよ」


 詩音と茜に言われて俺は立ち上がり席を後にする。すると桐原が付いて来た。


「貴哉、忘れてるぞ」

「あ?ああサンキュー。失くすと芽依がうるさくなるからな」


 芽依に貰った財布だった。桐原から受け取ってそのまま帰ろうとするとまだ付いて来た。


「何だよ。お前は戻れよ」

「送ってくよ。俺タクシーで帰るつもりだったからついで」

「タクシーだと?高校生の癖に贅沢だな」

「それを言うなら貴哉だろ。芽依ちゃんって子に貰ったんだ?その財布」

「……そうだよ」


 桐原と店を出て桐原が呼んだタクシーを待つ。もう暗くなってるし、これ以上遅くなったら母ちゃんだけじゃなく、空まで機嫌悪くなりそうだから、桐原に送ってもらう事にした。

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