【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ3rd season

pino

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本編

素直でよろしい

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 俺と二之宮は場所を移して少し話す事にした。人がいる所だと話づらいから中庭の隅の方までやって来た。今の時間ならここは誰も使ってないから俺と二之宮の二人切りになった。
 俺と二之宮はコソコソとしゃがんで何となく声も潜めて話した。


「見たところあんたは詩音の事を一人の男として好きだ。そして愛してる。そんな時に現れた俺が詩音に気に入られてるもんだから邪魔で仕方ない。ここまでは合ってるな?」

「少し大袈裟な表現が含まれてるけど、大方間違ってはないな」

「素直でよろしい」

「上から言うな一年!」

「大きな声出すんじゃねぇ」

「そもそも何でお前とこんな所でコソコソ話さなきゃなんねーんだっ」

「あんたが詩音をモノにする為だ。ライバルが多そうだからな。俺もお前とこんな近くで話したくねぇけど、お互い我慢だ」

「馬鹿らしいけど、お前が薗田さんに気に入られてるのは認める。あの人は人を茶化したりふざけたりしないからな」

「だろ?俺は詩音にとって神らしいからな。だからその神が詩音にまたお告げを下してやるんだ。神ってよりキューピットだな」

「お前がそんな役出来んのか?」

「任せろ!俺は彼氏いるんだぞ。そこは俺が先輩だ」

「ムカつくが確かにな。くそ。言っとくけど、そのまま伝えたりするんじゃねぇぞ。あくまでも自然にだぞ」

「分かってるって。だからあんたはもう俺を睨むんじゃねぇ。そして口の悪さにも目を瞑れ。これが俺だ。いきなり俺が変わったら詩音が悲しむかも知れねぇからな」

「……何か納得出来ねぇとこもあるが仕方ねぇか。でも演劇部としての指導はキッチリやらせてもらうぞ。任されたからにはお前を堂々と舞台に立てるようにするからな。俺は薗田さん達と違って厳しいんだ。覚悟しておけ」

「へーへー。あんたも俺を舐めんなよ。一年一年うるせぇけど、すぐにあんたを追い抜いてビックリさせてやらぁ」

「…………」


 最後のは冗談混じりの脅しだ。やっぱりこいつの上から物を言う所がムカつくからな。
 でもひたすら言い合ってるのも疲れるしこれで少しは大人しくなってくれるだろ。
 何かあったら詩音に泣きつけばこいつの人生も終わりだしな。

 話に一区切り付いて、二之宮はパッと立ち上がって言った。


「それじゃ行くぞ」

「どこに?」

「決まってるだろ。他の部員達に挨拶回りだ」

「それなら昨日したじゃん。またやるのか?」

「秋山はまだ食堂でしか挨拶してないだろ?今日は全部回る。その後は演技の指導をする」

「分かりましたよっと」


 今の俺の上司は二之宮みたいだから従う事にした。それから俺は二之宮の後をついて校舎を移動しまくる事になった。
 まずは、昨日も行った食堂からだった。


「主な活動は食堂を借りてやってる。体育館は運動部が使ってるからな。広くて明るいここは最適なんだ。言うまでもないが整理整頓は常に心掛けろよ」


 食堂に入ると昨日みたいに数人が立って本を読みながら演技してた。そしてそれを囲って何十人もの生徒が座って見守っていた。


「ここは主に役者達が集まる場所だ。俺達もここが活動場所になる。今日はお前に個人的に指導する予定だから違う場所でやるけどな。挨拶は昨日したから次行くぞ」

「なぁ役者達って、こんなにいるのか?」

「そうだ。主役から脇役までいるからな。午前はこうして全体で集まってやるけど、午後になるとシーン毎に分かれたりして練習するんだ」

「ふーん」


 確かに台本読んでたら、街の人Aとか通りすがりの旅人とかちょこっとしたのが出て来てたな。
 
 それから食堂を出て今度は外に出た。何で外?って思ったけど、大人しくついて行く事にした。
 二之宮が立ち止まったのはグラウンドの横。そしてそこには知り合いらしき男が立っていて、二之宮に気付いて挨拶して来た。


「あ、二之宮さんお疲れ様です!」

「お疲れ。ちょっとみんな集められるか?話があるんだ」

「了解です!」


 敬語って事はこいつは俺と同じ一年か。男は大きな声で二之宮が言うみんなを呼び出した。
 すると来るわ来るわ、グラウンドの周りを走っていた体操着姿の奴らがうじゃうじゃ集まって来た。二十人は超えていた。走ってたのって運動部の奴らじゃなかったのか!


「二之宮さん、全員揃いましたよー!」

「よし、みんなに紹介する。昨日から演劇部に仮入部した秋山だ。みんなと同じ一年だから秋山が困ってたらよろしく頼む」


 二之宮がそう言うと、みんな声を揃えて「はい!」と答えた。ちらほら見た事ある顔がいた。同じクラスの奴らにも演劇部がいたのか。


「よし、次へ行くぞ」


 一年達に俺を紹介した後、二之宮はくるっと方向を変えて歩き出した。


「えっまだ挨拶するとこあんのかよ!」

「基本的に一年の内はこうしてトレーニングをして過ごすんだ。体力作りは演劇の基本だからな。後半になるとそれぞれ役割を与えられてチームに入るんだ。秋山は文化祭までは俺に付いていればいい」

「チーム?」

「これだけの大所帯を部長と副部長だけで束ねるのは大変だからな。主に脚本、役者、裏方の三つの役割がある。その中でも役者と裏方はそこで更にリーダーを数人作ってそれぞれのチームが出来るんだ。今は物語が変わったばかりだからバタバタしているが、これからはチーム毎に動くようになる」

「なるほどな。二之宮のチームはねぇの?」

「……ない」

「副部長なのに?」

「うるさいな。黙って付いて来い」


 相変わらずの上からだったけど、訳があるんだろう、面倒な事になりそうだったから深く聞かない事にした。
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