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本編
一年のくせに俺を脅すのか
しおりを挟む次の日も普通に起きて部活へ向かう。また数馬とゲームやってたら寝るの遅くなっちまったよ。まぁ明日の金曜日は休みだし、勢いで頑張ろう。
てか部室に寄るのめんどくせーな。ボラ部って裏校舎の三階にあるんだけど、演劇部の部室は食堂があるエリアにあって一階にある。今玄関にいるけど、このまま向かった方が早くね?
「なぁ俺このまま演劇部行くわ。風間に言っといて」
「おう、頑張ってなー」
空に言うと数馬と歩いて行った。
俺って頭いいな~。時間は有効に使わないとな!桐原の奴、今頃部室で俺を待ってるんだろうなぁ。
上機嫌で演劇部の部室に入ると、中では詩音と数人が机に座り何かをしていた。って桐原もいるじゃねぇか!
「あ、貴哉くんおはよう♪」
「貴哉おはー」
「桐原っ何でお前ここにいるんだよ!」
「は?何でって、仕事だからだろ」
「部室には?」
「ここに直接来た方が早いだろ……さては貴哉、部室に俺が居なくて寂しかったぁ?」
「ちげーよ!俺も直で来たんだ!」
「二人共仲良いね~。一緒に来る約束でもしてたのかな?」
俺と桐原のやり取りを見て詩音がのんびり言ってるけど、確かに約束もしてねぇのに、俺が桐原にこんなに言うのはおかしいな。
「してないしてない。だって俺が貴哉を待ってたら貴哉の彼氏に嫌な思いさせちゃうからな」
「!」
「いーくんに気を遣わせるなんて、やっぱり貴哉くんは凄いなぁ♪」
「何だよ貴哉、待ってて欲しかったのか?」
「黙れ!俺はてっきりボラ部で待ってると思って、俺が先にここに来たらビックリするだろうなって思っただけだ!」
「…………」
「ぷ、貴哉可愛いすぎだろ♡」
「どうでもいいけど、早く座れよ一年!今ミーティング中なんだよ!」
二之宮に怒られて俺は渋々空いてる椅子、桐原の隣に座った。
桐原はすかさず俺をニヤニヤ見て言った。
「貴哉が言うなら来週からは待っててやるぜ♪」
「待ってなくていい!」
「はーい、そこイチャつかない。じゃあ卯月くん改めて今後の予定を言ってくれるかな?」
「はい。ボラ部のお二人が昨日から入ってくれる事になったので、予定通りそのまま進めて行こうと思っています。夏休みの前半は、一年生はトレーニング。二年生はトレーニング後、それぞれの役割の準備など。文化祭まではこのような予定でいきます。薗田部長も夏休みまではいてくれるとの事なので、ご指導よろしくお願いします」
「出来れば文化祭までいたかったんだけど、一応受験生だからね」
「ありがとうございます。それと、秋山くんには特別にマンツーマンで指導してくれる人を付けます」
「そうか。誰だ?」
「俺だよ」
俺は素人だから当然か。詩音辺りかと思ってたら、ずっと俺を睨んでた二之宮が名乗り出た。
「……詩音、俺この人やだ」
「貴哉くん、二之宮くんはとても教えるのが上手なんだ。役も師匠と弟子って言う立場だし、一番適任だと思って僕が頼んだんだ」
「何っ!?」
「俺だってお前なんかを指導するなんてクソ喰らえだ。でも薗田さんが頭を下げてまでお願いしてくれたんだ……だからやってやる」
「二之宮くんありがとう。貴哉くん、どうだろう?二之宮くんとやってくれないか?」
「貴哉、頑張ろうぜ?」
みんなから説得されて、これ以上俺が何を言っても我儘になるだけだ。
「……分かった」
「良かった♪あ、そうそう、二人の歓迎会も兼ねて親睦会を開こうと思っているんだ。二人は明日の夜とか空いてたりするかい?」
「俺は空いてますよ。参加でお願いします」
「いーくんが来てくれたらみんな喜ぶなぁ。貴哉くんも大丈夫かな?」
明日は空と約束があったな。今回はパスだな。
「悪いけど、予定あるんだ」
「そうか。それは残念だな。でもこうして学校で会えるしね」
「薗田さん!早速ですが、秋山に指導したいのでそろそろ抜けてもいいですか?」
「え、もちろんいいけど、貴哉くんの事よろしく頼んだよ」
二之宮は俺の腕を引いて荒々しく部室から出た。いきなりなんだよこいつは!ほんっと嫌な奴だな!
廊下に出たところで俺も二之宮の腕を振り払って反抗する。すると二之宮はキッと睨んで来た。
「いてぇよ!腕離せよ!」
「お前いい加減にしろよ!空気読めないのか?先輩が誘ってるのに断るなんてあり得ないだろ!」
「はぁ?親睦会の事か?本当に予定あるんだって。断って何が悪いんだよ」
「どうせ遊ぶ予定だろ。どっちを優先するかも分からない程馬鹿なのか?」
「てめぇ喧嘩売ってんのか?」
「とにかく親睦会には参加しろ。これは先輩命令だ」
「やだね。お前の言う事なんか誰が聞くか!」
「さっきの話聞いてたか?俺はお前を指導するんだよ」
「だから何だよ」
「親睦会参加も指導の内だ!引っ張ってでも連れて行くからな!」
「何なんだよお前!俺の事嫌いなんだろ!だったら最低限の事してりゃいいじゃねぇか!」
「ああ大嫌いだ。でも薗田さんの事は好きだ。だから薗田さんの為にやるんだよ」
「……その好きって先輩後輩としてか?」
「お前には関係ないだろ」
「へー、あんた詩音の事が好きなのか」
俺がニヤリと笑うと眉毛をしかめてフイっとした。それなら詩音を使って脅せばいい。こいつは詩音には逆らえねぇからな。
そしたらこいつは俺に逆らえなくなるし、睨んだりもしなくなるだろ。
「なぁ、あんたが俺を嫌いなのって俺が詩音に気に入られてるからだろ?」
「否定はしない」
「ならさ、俺に良くしておいた方がいいんじゃね?俺があんたの事すげぇ良い奴だったって報告したらあんたの株上がるんじゃね?」
「一年のくせに俺を脅すのか。お前にそんな事されなくても薗田さんからは良くしてもらってるし、それなりの評価もされてる。だから無駄だ」
「俺が協力してやるって言っても無駄か?」
「だからお前の協力なんか……ちなみに何の協力だ?」
お、やっと食い付いたな。
もうひと押しでいけそうだな。
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