【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ3rd season

pino

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本編

ほら貴哉、服脱いで♡

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 ボラ部からの助っ人として演劇部に臨時入部となった俺は午後も台本を読んでいた。
 詩音が作った高校生活最後の作品「ドラゴンとプリンセスの旅」はファンタジーと恋愛を組み合わせた物で、詩音自身初の試みらしい。
 ストーリーは一国の姫と、魔女に姿を人間に変えられたドラゴンが禁断の恋に堕ちるって言うラブストーリー。
 盗賊に襲われてる姫を人間の姿のドラゴンが助ける所から二人の旅は始まる。ちなみにドラゴンは姿を元に戻す旅の途中だった。そこに姫が合流していろんな危機を乗り切って行く話だった。

 読み進めるとなかなか面白くて夢中になってしまった。まさか俺が文字だけの本を読むなんてな。読み慣れないから遅いけどな。
 台本を読んでそんな事を考えてると、詩音がやって来た。


「貴哉くん、ちょっと体のサイズ測ってもいいかな?」

「え?何で?」

「デシーノとドラゴンの衣装を作るからだよ。他のはもう準備を進めてるんだ」

「ああ、そう言う事か。分かった」

「良かった。こちらデザイン部の方々だよ。今回の衣装は全部彼らにお願いしたんだ」


 詩音の後ろから二人の男が現れてペコリと頭を下げてた。一人はクリーム色のマッシュルームみたいな頭してて、もう一人は襟足長めの黒髪で両サイドはツーブロック、前髪は斜めになってて右目なんかは隠れて見えてなかった。それとマスクしてて暑そうだなと思った。
 デザイン部ねぇ~、いろんな部活があるんだな。
 俺は立ち上がってどうぞと体を差し出した。


「それじゃあ僕は食堂の方を見てくるから。後は頼んだよ」

「お任せ下さい!」


 マッシュルームが詩音に敬礼して、その後俺に向き直りニヤリと笑った。またやべーの出て来たか?そしてメジャーを出してそれを俺に当てた。


「秋山くんの噂は聞いているよ!あ、俺は二年の草間です!こちらは同じく二年の桃山くんだよ!」

「ども」

「俺の噂って何?」

「あの桐原くんの男なんだってね?いやー聞いた時は驚いた!さっきお昼ご飯食べてたらみんなその話で持ち切りさ!良く桐原くんを落とせたね~」

「んな訳ねぇだろ!桐原は俺のパシリだ」

「パシリ!?それはそれで凄くないかい!?」

「おい草間、早く仕事しねーとまた怒られるぞ」

「は!そうだったね!それじゃちょっと失礼するよ~」


 マッシュルームが俺の体のサイズを測り始めた。隣にいる前髪斜め男はジーッと俺を見ていた。桐原のせいでやたら変なのに絡まれるなぁ。


「おい何ジロジロ見てんだよ」

「いや、お前伊織の何?」

「あ、秋山くん、桃は桐原くんの事が大好きなんだよ。きっとライバルだと思ってるんだね~」

「なるほどな、つまりシカトしていいって訳か」

「あ?テメェ舐めてんのか?」

「ちょっと!桃!仕事でしょ!」


 ほんと、桐原と関わるとろくな事が起きねぇな。イライラするのにも疲れて来たぜ。
 そこへ険悪な空気を察したのか桐原がやって来た。


「デザインの方々、貴哉をいじめちゃダメだぞー」

「いじめてねぇし。なぁ伊織、何でこんな奴に良くすんだよ?」

「そりゃ好きだからでしょ。ねぇ?貴哉♡」


 前髪斜めに聞かれて、俺の肩に腕を回しながら桐原が答えた。パシッと払うとあははと笑った。


「くっ付くんじゃねぇよ。桐原お前いい加減に変な事言いふらすなよ。迷惑なんだよ!」

「なら付き合おうって。そしたら本当の事になるだろ?」

「ほんっとに話通じねぇなぁ!」

「あのー、秋山くん、動かないで欲しいんだけど」

「あ、わりぃ」


 マッシュルームに言われて姿勢を正す。すると桐原がマッシュルームからメジャーを奪い取った。


「むむ!何をするんだ桐原くん!」

「草間が貴哉に触るのやだから俺がやる♡」

「何だとぉ!?」

「あーもぉ何でも良いけど早く終わらせてくれ!台本読んでる途中なんだ!」

「ほら貴哉、服脱いで♡」

「あ?マッシュルームは服の上から測ってたぞ?」

「ちゃんと全裸になって測らないと正確なサイズが分からないだろ♡」

「お前ふざけてんだろ」

「桐原くん!俺の仕事道具で遊ばないでくれ!桃!桐原くんを連れてどこか行っててくれないか?」

「ラジャー。伊織デート行くぞー」

「デート言うな。んじゃ貴哉終わったらまた来るからな~」


 桐原と前髪斜めは教室から出て行った。
 はぁ、やっと静かになったぜ。
 マッシュルームは慣れた手付きで採寸を進めていた。


「桐原くんは本当にジェントルマンだね」

「は?」

「秋山くんと桃がやり合う前に現れて二人をさり気なく遠ざけるなんて、本当に愛されてるみたいだね」

「……愛とか言ってんじゃねぇよ」

「秋山くんが他の人と付き合ってるのは知ってるよ。それも話に出てたから。だから桐原くんの求愛に困ってるんだろ?」

「へー、分かってんじゃん。なぁあいつ何とかならねー?何やったら俺の事嫌いになるんだ?」

「嫌われたいの?桐原くんは周りからは好かれるけど、自分からは好きだとか言ったりしないよ。だからあんな桐原くんは初めて見たよ」

「弱点とかねぇの?」

「ないでしょ。彼、何でも出来ちゃうし。にしても秋山くんは変わってるね~。普通の人なら桐原くんにアタックされたら彼氏いても乗り換えちゃうんじゃない?」

「普通は乗り換えねぇだろ」

「分かった~。秋山くんの彼氏って桐原くん並みに良い男なんだー?」

「良い男だよ。でも桐原と似てるかもな。一緒にいて楽なとことか」

「ふふ、一途なんだね。俺は秋山くんを応援するよ。だからここだけの話を教えてあげる。桐原くんは過去に恋人がいたらしいんだけど、酷い振られ方をしたんだって。それから桐原くんは誰とも付き合わなくなったし、好きにならなくなったんだって。弱点にはならないかもしれないけど」

「ふーん。あんな性格じゃ振られても当然だな」

「君は本当に面白いな!桐原くんは結構性格良いと思うよー?」


 どうやらマッシュルームは良い人らしい。
 器用に手を動かしながらちゃんと話もしてくれた。
 桐原の情報は本当かは分からないが、もし本当だったとしたらどんな振られ方をしたんだ?俺がこんなに振ってるのに全然平気なのを見ると、そいつは相当のやり手だな。
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