【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ3rd season

pino

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本編

貴哉ー!起きろーい!

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 最近の俺は朝になると薄っすら起きちまう。空が来る少し前にだ。だけど、もっと寝たいから二度寝するんだが……


「貴哉ー!起きろーい!」


 この空の布団引っぺがし作戦で無理矢理起こされるんだ。もう遅刻が出来ない俺は毎朝空に起こしてもらってる。
 早川空。同じクラスのチャラ男。俺より確実に早く起きてる筈なのに髪型やファッションを毎回バッチリキメてくる暇人。そして俺の彼氏だ。何かと言い合いになる事が多いが、最近は大きな喧嘩もなく仲良くやってると思う。ついでに言うといつもクールぶってる空は俺の前では泣き虫だ。と思う。
 てか寒っ!もう夏だってのに何でこんなに寒いんだ?


「寒ぃよ!布団返せ!」

「冷房付けたまま寝るからだろ!タイマーセットしとけよー!風邪引くぞ」


 そう言いながらエアコンのリモコンを操作する音が聞こえて来た。どおりで寒ぃ訳だ。


「って貴哉!早く起きろって!部活始まるぞ!」

「部活めんどい!」

「ちょ、ワガママ言うなよ!もー、まったく」

「空……俺何で夏休みまで学校行かなきゃなんねーの?」

「そりゃテストで悪い点取ったからだろ」

「あ、空が勉強教えられなかったからか」

「それは悪かった!」

「はぁ、行くよ部活。空もいるしな」


 ゴネてても仕方ねぇ。さっさと終わらせてさっさと帰ればいいや。
 
 俺達の学校は、数日前から夏休みに突入した。
 ほとんどの生徒は休みだけど、部活とか一部の生徒はいつもみたいに学校に行く。俺と空はボランティア部に入っているから夏休みの前半は学校へ行かなくちゃなんねーんだ。

 俺は起きて着替えて顔を洗ったりして空と家を出た。生徒会長に二人乗りを禁止されてるからチャラ男号は家に置いて、歩いて学校へ向かう。
 せめて二人乗りで行けたら楽なのになー。


「ダル……」

「貴哉、また夜中にゲームやってたんだろ?」

「やった。あれが面白くてよ!数馬と二人でチーム組んでやってんだけど、もう一人欲しいなーって話しててさ!空もやれよ」

「彼氏ほっといて他の男とゲーム内でイチャイチャしてんじゃねー!もー!ゲームもいいけど、部活に支障が出ない程度にしておけよー」

「分かってるって。それよりも部活入ってくれてありがとな♪空いなかったら俺部活行けてなかったわ」

「そうだな。貴哉絶対起きられないもんな」


 空は元々夏休みはバイトの予定だったけど、そのバイトが無くなったとかでボラ部に入る事になったんだが、俺からしたらラッキー過ぎるんだ。
 朝はいつもみたいに起こしに来てくれるし、部活で困った事があったら空に任せればいいし、何より好きな彼氏と一緒にいられるしな。
 朝から起きなくちゃいけないのは嫌だけど、こうして空と夏休みなのに部活に向かうのは本気で嫌じゃなかったりする。


「なー、空髪伸びたなー?切らねーの?」


 ふと薄い茶色に染めてる空の襟足が肩に付いてるのに気付く。見てるだけで暑そうだ。前髪も分けてるけど、邪魔そうだ。


「んー、伸ばそうかなって思ってたんだよ。貴哉は短い方が好き?」

「いや、暑くねーのかなって」

「暑いけど、お洒落してーからさ」

「空がいいならいいんじゃん。似合ってるし」

「そうか?邪魔な時は縛るからさ」


 そんな話をしながら学校に到着。既に運動部は活動していて、数名が走ってるのが見えた。
 あれに比べたらボラ部はマシだな。

 下駄箱で靴を履き替えてると、ひょこっと数馬が現れた。相変わらず顔と耳に凄い量のピアスだな。と、ここで数馬のもう一つのトレードマーク、サイドの一部だけ金髪だったのが、青に変わっているのに気付いた。


「おっ色変えたのか?」

「ほんとだー、綺麗に入ってるな」

「おう。イメチェンしてみた」

「いいじゃん。てか数馬も襟足長ぇな!」

「えっ……き、切った方がいいか!?」

「いや、好きにしたらいい。はー、あちぃから早く部室行こー」


 軽い気持ちで言ったのを気にしてるのか数馬は襟足を触っていた。
 数馬の対人恐怖症ってのは相変わらずだけど、俺を通して空とは普通に話せるようになった。あと、ここにはいないけど、直登も大丈夫だ。

 ボラ部の部室は裏の校舎の三階にある美術室の隣にあって、ここから行くのは少し遠くて面倒くさい。
 静かな校舎内を三人で歩く。もちろん売店も食堂も閉まってる。腹減ったら学校出てコンビニ行かなきゃならねぇって訳。


「そうそう、数馬~。空もゲームやってくれるってさ」

「本当か?」

「言ってねぇだろ!」

「えっやらねぇのか!?ヒーラーやってくれるって言ってなかったか?」

「言ってねぇよ!しかもヒーラーかよっ!」

「俺は剣士で数馬は魔法使いなんだ。だからあとヒーラーが欲しいんだ」

「せめて俺が魔導士になるまでサポートして欲しいかな」

「…………」


 俺と数馬で説明するけど、空は訳が分からないと言ったような顔をしていた。
 数馬に教えてもらったオンラインゲームなんだけど、パソコン通して会話しながら出来るし、これが面白くて最近ハマっててつい夜更かししちゃうんだ。
 空もやってくれたらもっと話も出来るし楽しいんだけどな~。
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