【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ2nd season

pino

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いいぜ。一緒に居てやる

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 放課後、一人で教室に残って追試を受けていた。
 はー、さっぱりわかんねーや。でも手を抜くと生徒会長に怒られるしなぁ。

 とりあえず名前は書いておこう。

 数馬の事は部室まで送ってやった。後はいつも通り一人で帰るだろ。

 今日はこの後、戸塚達と待ち合わせてんだよな。そっちの事も考えねぇと。まぁ楓が居るし大丈夫かなとか思ってる部分もあるんだわ。
 休み時間に電話で楓に大体の出来事を話したんだけど、荻野拓って奴は確かに光陽にいるらしい。だが楓は話した事はないみたいで、どんな奴かは分からないそうだ。
 見た感じは普通って話だ。

 正直見た目じゃ分かんねー事多いけどな。
 数馬だって見た目はあんなんだけど、中身は可愛い子猫だし、直登だって見た目に似合わない馬鹿力持ってるし。

 とにかく無事に終わればいいなー。


「そこまで。秋山、随分難しい顔してたがやっと真面目にやる気になってくれたか」

「あ?ん、そうね。難しい問題ばかりだからな」


 適当に返事をしておいた。
 担任にテスト用紙を渡して帰ろうと廊下を出る。
 すぐ横で人の気配がして見てみると、なんと、早川が居たんだ。


「は、早川!?お前何してんだ?」

「……貴哉待ってた」

「……そっか。待たせたな」


 こりゃ驚いた。今日一日、目すら合って無かったのに、突然待ってるんだもんな。

 早川と静かな廊下を歩く。
 まさか仲直りしたいって言ってくれんのかな?
 それなら俺が楽なんだけどなー。


「追試お疲れ様。手応えはあった?」

「全然!名前は書いたけどな。あ、直登に言われたから記号問題は埋めといたぜ」

「合ってるといいな」

「おう!そしたら少しは点数稼げるもんな」

「貴哉、今日戸塚とは何時に待ち合わせしてんの?」

「俺が終わったらすぐだ。このまま向かうつもりだ」

「……少しだけ話す時間くれないか?」

「いいぜ」


 学校を出て二人で歩く。
 普通に会話は出来てる気がする。だけど、早川の元気が無いような?
 

「貴哉はさ、今たくさんの問題抱えてっけど、大丈夫か?」

「正直キツいかなー。ま、全部やるけどな」

「…………」

「早川?」

「俺さ、今余裕ないんだわ。なんつーか、今すぐどっかに消えちゃいたい気持ち。全部何もかも捨てて」

「はぁ?」

「だから貴哉はすげぇと思う。嫌な勉強とか部活とか他にもいっぱい抱えて、ちゃんと向き合ってるから」

「おい、何かあったのか?」

「…………」

「早川!話せ!」

「これ以上貴哉に負担かけたくねぇよ」

「そんな事考えんな!」

「でも貴哉に会いたくて、触れたくて、一緒に居たいんだ」

「おい!」


 勝手に話を進めて行く早川はどう見ても様子が変だった。
 俺は足を止めて早川の腕を掴んで顔を合わせた。
 そしたら早川の奴涙目になってやがった。

 あー、俺がさせたんかな?
 朝喧嘩なんかしたから、今早川がこうなってんのかな?

 俺は早川に手を伸ばして頬を触った。


「早川、朝はごめんな。俺も早川に会いたかったし、触りたかったぞ」

「貴哉っ」


 今すっごくキスしてぇけど、ここでは我慢だ。
 元気の無い早川は今にも泣きそうだったから、とりあえず場所を移そう。
 
 すぐ近くにあった小さな神社を見つけて中にあったベンチに座った。
 そこは驚くぐらい静かで、生い茂った木の葉っぱが風で揺れて擦れる音だけが響いていた。


「ここ穴場じゃね?」

「…………」

「おーい早川?まだ元気でねぇの?まだ怒ってんのかよ?」

「怒ってない。俺も悪かったよ」

「じゃあ元気出せって!」

「元気、出ない」

「じゃあいいよ。早川が元気出るまでそのままで!」

「……時間大丈夫なのか?」

「あ?そんなのいいよ。戸塚達待ってっけど、今は早川だ」

「…………」


 戸塚怒ってるかなー。
 いや、戸塚よりも芽依が怒ってそうだ。
 でもそれよりも本当に早川が心配だった。
 さっき言ってた事もあるけど、こんな早川はほっとけねぇ。


「今日一日早川と離れてたけどよ、やっぱり早川の事好きなんだわ俺。何かと早川の事考えちゃって、そんで会いてーってなって」

「……嘘だ」

「嘘じゃねぇよ!早川の事考えるとこう胸が苦しくなって、早く仲直りしてぇなって。それって好きって事だろ?」

「うん」

「なぁ早川、キスしようぜ」

「!」

「さっきからずっとしたかったんだよ。ここなら誰も見てねーからさ」

「な、貴哉ってそんなだったっけ?」

「俺は変わらねーぜ?」

「んっ」


 俺は少し強引に早川の顔を掴んでキスをした。
 一日離れてただけなのに、すげぇ久しぶりに会う気がする。そんですげぇ久しぶりにキスするみたいで、何だか心地良かった。

 しばらくして離れてから早川をぎゅーってしてやった。


「早川ー、好きー」

「変!貴哉絶対変だ!」

「何でだよ?変なのは早川だろー?」

「貴哉は俺の事そんなに好き好き言わないし、キスもハグもして来ないだろ!」

「そりゃいつもはお前から言って来たり、キスして来たりするからだろ。何でか知らねーけど、今は元気無いみたいだから俺からしただけだ。俺だってしたいとはいつも思ってるよ」

「じゃ、じゃあこの後朝まで一緒に居てくれって言ったら!?」

「いいぜ。一緒に居てやる」

「戸塚は?約束してるじゃんか!」

「してるけど、楓に任せりゃいっかなって。あのよ、さっきも言ったけど今は早川なんだよ。早川が元気出るまで一緒に居てやる」

「……はは、やっぱり貴哉は」

「お?」

「貴哉はすげぇや」

「俺もそう思う。良くやってんなって褒めてやりたいぜ」


 やっと見れた早川の笑顔に俺はホッとしていた。
 本当は何があって元気が無かったのか気になったけど、今は無理に聞かないでいようと思った。


「貴哉、ありがとうな」

「おう!いいって事よ」

「戸塚のとこ行って来いよ。さっさと片付けて来ちゃえ」

「いや、早川と居るよ」

「ううん。俺はもう大丈夫だ。明日の朝いつも通り迎え行くから」

「……本当に大丈夫なのか?」

「あ、最後にもっかいキスしたい♡そしたら完全復活する♡」

「ん、俺もしたいと思ってた」


 目を閉じて今度は早川からキスをされる。
 舌が入って来て、少し興奮するキスだった。
 やべ、これ以上はマジで離れられなくなる。


「早川ストップ。続きはちゃんとしたとこでしよ?もっとイチャイチャしてぇから」

「約束だぞ?」

「おう!んじゃ行ってくるかな!」

「行ってらっしゃい。何かあったらすぐ連絡しろよ」


 本当はずっと早川と居たかった。
 せっかく仲直り出来たし、もっと他の場所でイチャイチャしたかった。

 けど、戸塚との約束も守りたい気持ちもあった。

 まだ早川の事は心配だったけど、とりあえずは大丈夫そうだから俺は一人で神社を出て戸塚に電話を掛けて今向かうと伝えた。

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