【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ2nd season

pino

文字の大きさ
上 下
25 / 43

さよなら先輩

しおりを挟む

 朝、早川と歩きながら学校へ向かう。何か早川とは毎日会ってるのに久しぶりに会う気がするな。


「貴哉大丈夫か?部活もだけど、戸塚の事もさ」

「ああ、寝る前に楓と話したんだ。そしたら協力してくれる事になったんだ。楓が居りゃ何とかなるかもな」

「楓ってこないだ会ったやつだろ?また貴哉を好きになったりしねぇよな?」

「ねぇだろ。楓も付き合ってる奴いるって言ってたし」

「可能性無くはないだろ?俺も行きたい!」

「やっぱり言うと思った。早川が来たらまたややこしい事になるだろ。今回は大人しくしててくれ」

「だって……芽依ちゃんの彼氏の振りするってのもちょっと嫌なのに、告られた奴と俺の居ない所で会うなんて……」


 早川の言いたい事は分かる。だけど今は俺を信じて欲しい。どうしたらもっと信じてもらえるんだ?うーん……


「空」

「え」

「俺は空だけだ。空以外になんて興味ねぇよ。とりあえず落ち着いたら二人でのんびりデートでもしようぜ」

「貴哉ぁ♡大好きー♡」


 早川は両手に自転車のハンドル持ってるから、目一杯体を寄せてアピールして来た。自転車無かったら抱き付かれてたなコレ。
 早川の為にもさっさと終わらせないとなー。


「そうだ、朝行くとこあるんだ」

「どこ?」

「第二会議室」

「何でそんなとこに?」

「クラスメイト迎えに行くんだよ」

「昨日言ってた広瀬ってやつか」


 もう一つの問題の広瀬だ。あいつを引っ張ってでも教室に連れて行くつもりだ。桐原の情報だと広瀬は人気の少ない朝一で学校に来てるらしいからな。
 広瀬の方は早川も連れてって大丈夫だろう。早川に広瀬の事はメッセージで簡単にしか言ってないからここで詳しく話しておいた。もう一人のクラスメイトだって事と、対人恐怖症だって事。そして俺がクリアしなければいけない事も。


「広瀬の問題なら俺も協力出来そうだな」

「頼りにしてるぜ彼氏ー」

「でも同じクラスにそんな奴がいたなんてな。どんな奴だろー」

「見た目はヤベーよ。ピアスがすげぇ」

「悪い見た目なのか!」

「良くはねぇな。目付きもこんなんでキッて睨んでくるぜ」

「あはは、貴哉よりヤベーのなんているんだな」


 俺なりに広瀬の真似をして指で目を細めて見せてやると早川は笑って頬を触って来た。そして早川は何かを思い出したような顔をした。


「あ」

「ん?」

「貴哉とチューしたい」

「なっ!いきなりだな!」

「ねー、しちゃおうよ♡一瞬だけなら大丈夫だよ♡」

「馬鹿かお前!こんなとこで出来る訳ねぇだろ!」

「貴哉となら出来る!」


 このままじゃマジでされそうだから早川から少し距離を置いて歩いていると、学校の門の所に人集りが出来てるのに気付いた。
 もしかして持ち物検査でもやってんのか?たまにやるんだよなこの学校。俺の鞄には何も入ってねぇからいいけど。
 近付いて行くと、人集りの中心にいた人物がこちらに気付いて手を振って来た。


「貴哉ー!おはよー♪」

「……!」


 まさかの桐原だった。アイツ!昨日あんなけ早川の前では他人の振りしろって言ったのに、それもこんな大勢の人前で堂々と声掛けてきやがって!
 もちろんシカトした。


「って貴哉ぁ?待てよー」

「おはようございます先輩。さよなら先輩」


 目一杯のあっち行けスマイルで言ってさっさと早川の自転車置き場まで向かう。
 もちろんこんなので早川を誤魔化せる訳でもなく……早川は不機嫌そうだった。


「貴哉、今の人って二年の桐原さんだよな?」

「さぁ?そう言えば部活にいた気がするなー?」

「桐原さん、貴哉の事名前で呼んでたぞ」

「昨日もみんなの事名前で呼んでたぞ?」

「うわーん!俺の貴哉なのにー!」

「早川落ち着け!ちゃんと話すから!」


 こうなるんだったら昨日話しておけば良かったぜ……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

処理中です...