【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ2nd season

pino

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俺が居たらまずい話か?

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 早川とのんびり歩いて帰っていると、前から歩いて来た男と目が合った。光陽高校の制服を着てるただの不良かと思ったが、どこか見覚えのある顔……
 いや、気のせいか?背が高くて赤い髪のサイド刈り上げてるこんな厳つい奴に知り合いなんて……あ!


「貴哉?」


 相手の不良も俺の事が分かったみたいで、お互い立ち止まってしまった。見た目はすっかり変わっていたが、俺を呼ぶ声を聞いて確信した。中学の時に俺に告って来た野崎楓だった。


「楓……か?」


 俺が名前を呼ぶとホッとしたように笑った。俺と楓は中三の大晦日以来、あれから一言も話していなかった。と言うか俺が避けてたんだ。
 正直今でも気まずいけど、俺は楓に謝らなきゃいけないんだ。


「久しぶり。城山の制服似合ってるな」

「あ……あのさ、楓……」

「貴哉ー、この人誰ー?」


 俺が楓に言おうと思ってたら早川が割って入って来た。俺の前に立って楓との間に壁を作るように。


「早川、こいつ楓って言って中学ん時のダチだ」

「野崎です。こんにちは」


 楓は威嚇する早川に向かってニッコリ笑った。その笑顔があの時のままで何か懐かしくなった。見た目こそ変わってたけど、あの時の楓のままな気がして嬉しかった。
 俺と楓はいつも一緒に居た。親友だった。いきなり告られて裏切られた気持ちになった俺は楓から逃げた。返事もせずに……


「こっちは早川。あのさ、早川ちょっと楓と話があるから……」

「俺が居たらまずい話か?」


 あ、やべーな。早川ってば楓の事勘違いしてる。めんどくせぇけど、早川にも話しとかなきゃか。


「いや、早川も聞いてくれ」

「おう」

「じゃあ場所移そうか」


 楓の提案で道端から少し歩いたとこにある小さい橋の下で話す事になった。
 緊張するなぁ。楓は笑顔だけど、めちゃくちゃ怒ってたらどうしよう。でも早川に教えてもらったんだ。告白する方も勇気がいる。それなのに俺は逃げたままとか楓に失礼だもんな。
 俺から話そうと言葉を選んでると、楓がクスクス笑って話し始めた。


「貴哉は変わらないな。困ると眉間に皺が寄る」

「えっ」


 慌てて眉毛を隠すが、そんな呑気な事を言う楓に俺の心は少し落ち着いた。


「えっとー、あの時は逃げたりしてごめん!ちゃんと返事をするべきだった!」


 俺の謝罪に、楓は驚いた顔をしていた。早川はいきなり俺が謝ったからか不思議そうに見ていた。


「ずっと友達だと思ってた楓に裏切られたと思って、勝手に怒ったりして悪かった」

「ううん。俺の方こそお互い大事な時なのにあんな事言ってごめん。ずっと後悔してたんだ」

「楓も?」

「伝えるタイミングを間違えたって、酔った勢いってのもあったけど、告白するならもっと違う時だったんだよ。例えば、今とかかな」


 楓はチラッと早川を見て言った。
 ま、まさか楓ってばまだ俺の事を!?
 このままじゃ早川が暴れちゃうぞ!


「告白!?」

「か、楓!」

「あはは、冗談だよ。仮の話ね。貴哉さ、そいつの事が好きなんだろ?」

「へ?何で知ってるんだ?」

「やっぱり。伊達に貴哉の親友やってねぇからな。貴哉が誰かを側に置いて、更に大事な話に参加させるなんてあり得ないだろ」


 確かに、楓の言う通りだった。てかやっぱり楓だな。俺の事を誰よりも分かってるすげぇ奴。


「それと、さっき遠くから二人を見てて良い雰囲気出てたから。近くまで来て貴哉だって分かったけど、遠くから見たら普通のカップルに見えたぞ」

「マジかよ!」

「早川って言ったな?」

「…………」

「貴哉の事よろしくな」


 楓は爽やかに笑って早川に言った。
 ちゃんと謝って良かった。まさかこんな結果になるなんて。てかやっぱり楓は最高だ!


「楓!お前カッコよすぎだ!」

「当たり前だろ。あ、俺も彼氏出来たんだよ。今度紹介するからダブルデートしようぜ」

「本当か!?おう!会わせろー!」

「貴哉、もう行こう!」

「え、早川どした?」


 別に楓は嫌な事を言ってねぇのに、何だか早川は不機嫌そうだった。まぁ話も終わったしいいけど。
 その後楓とまた会う約束をして再び早川と二人で歩き出した。

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