50 / 55
ドキドキ、俺もするぞ
しおりを挟むさっきまでの自信満々な態度はどこへやら、自転車を押しながら隣を歩く早川の顔は焦ったような困ったような顔をしていた。
「何もないならもう聞かねーぞ」
「あるよ……でもさ」
「ん?」
「貴哉は、俺の事これっぽっちも好きじゃねぇのかなって……」
「…………」
「キスしてくれてるから少しは脈あるんじゃねぇかって思ってたんだけど、中西とするとか言い出すから……俺の勘違いだったんかなって」
「それが分かんねーんだよ」
「え?」
「俺も早川とキスが出来る理由。何でかなって」
「す、好きだからじゃねぇの?」
「分からん!」
「えー!」
「でも嫌じゃないんだ。初めは男にされるのとか有りえねぇと思ってたから嫌だったけど、何回かされてる内に慣れて来て、こないだのとかは気持ち良くなって……はっ!」
俺がキスに対して感じた事を説明していると、途中でミスを犯した事に気が付いた。
何自分で早川の機嫌を取るような事言ってんだ!これじゃ早川が調子に乗ってまた面倒な事になる!
恐る恐る早川を見てみると、さっきまでの不安な態度は嘘のように満面の笑みでそこにいた。
「貴哉ぁ♡俺とのキス気持ちよかったの?」
「い、いや、今のは聞かなかった事に」
「もう聞いちゃったもーん♡ねぇキスしたいキスしたいキスしたーい!」
「大声でんな事言ってんじゃねぇ!変態が!」
「貴哉んち寄ってっていい?」
「ダメだ!」
「お願いだよー!少しキスしたらすぐに帰るから」
「そのキスがダメなんだ!もう早川とはしない!」
「なんで!なんでしないの!」
「自分が変になるからだ!」
「変って気持ちいい事が?全然変な事じゃないだろそれ。むしろキスして気持ち良くなるのは普通だろ」
「そ、そうなのか?」
「好きな奴となら尚更な。だからするんじゃんキスは」
「お前にとってキスは挨拶程度かと思ってたぜ」
「否定はしないけど」
「……やっぱりお前とはしねぇ」
「違う違う!前はそう思ってたの!でも俺も貴哉としてから他とは違うなーって!ドキドキするんだよ。貴哉とキスしてると、こんなの今までなかったんだ」
「本当か?ドキドキ、俺もするぞ」
「なぁ、この後貴哉ん家行ってさ、試してみようぜ。お互い何なのか気になるだろ?」
「うーん、確かにな。あ、でも少しだけだからな」
それが何なのか確かめるぐらいならいいだろう。
俺はそんな軽い気持ちで早川を部屋に招いた。
20
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺
高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
同室者の怖い彼と、僕は恋人同士になりました
すいかちゃん
BL
高校に入学した有村浩也は、強面の猪熊健吾と寮の同室になる。見た目の怖さにビクビクしていた浩也だが、健吾の意外な一面を知る。
だが、いきなり健吾にキスをされ・・・?
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!
汀
BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる