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好きな子ほどいじめたくなるアレ
しおりを挟む早川に言われた通りほっぺにキスしてやると、意外な反応してやがった。
顔を赤くして驚いた顔してたから何か優越感。
「なんつー顔してんだよ早川。お前がやれって言ったんだろ」
「ホントにやってくれると思わなかったから」
「とにかく言う事聞いたからなー」
「なぁ、貴哉は俺の事嫌いなんじゃないのか?」
「はぁ?嫌いな奴と酒なんか飲めるか?別に普通だよ普通」
「だっていつも突っかかってくるじゃん」
「それはそっちがだろ」
「俺のはアレだよ。好きな子ほどいじめたくなるアレ」
「あ、俺いじめられてたんだ?」
「貴哉は必ず返してくれるからな」
「やられたらやり返す。当たり前だろーが」
「貴哉らしいな」
クスッと笑って少し距離を縮めてくる早川。そしてそのままくっ付いてきた。俺の隣で肩に頭を置く感じ。酔っ払ってんのか?
「おい大丈夫か?酒弱いのか?」
「んーん。何かこうしたかった」
「甘えてんじゃねぇ!調子狂うだろ」
「たまにはいいじゃん。貴哉、キスしてくれてありがとう」
「言う事聞かねーとずっとうるさそうだからな」
「お礼しなきゃだな」
「礼?そんなのいらねっ……な!」
頭を上げた早川はそのまま俺にキスしてきやがった。なんと唇に!慌てて後ろに下がるけど、ぐいっと近付いてくる。
「な、にしてんだテメェ!」
「キスだよキス。貴哉はちゃんとしたキスを知らないみたいだから教えてやろーと思って」
「はぁ?訳わかんねー!酔っ払いが!」
「もう一回して教えてやるよ」
「いらねぇ!離れろ!」
こいつはアレか?酔うと誰にでもキスしたくなる奴いるけど、それだ!くそ!中西とか居たら押し付けられるのに今は一対一。逃げるしかねぇ!
「貴哉逃げるなよ」
「うるせぇ!帰る!」
「もう帰るのか?」
「お前には付き合ってらんねぇからな」
「やっぱ嫌いなんじゃん」
「何でそうなるんだよ」
「中西の事はどう思ってるんだ?」
「中西ぃ?何で中西が出てくんだよ」
「はぁ、やっぱいい!送ってくよ。行こ」
早川は、まるで馬鹿を相手するみたいに呆れるように溜息を吐いて立ち上がった。
なんっかムカつく!勝手に酔って勝手に好きとか嫌いとか言いやがって!挙げ句の果てに中西とか訳わかんねー事まで言ってっし!
「いい!一人で帰る!」
「ちょ、貴哉」
「付いてくんな!」
玄関までは付いて来たけど、俺が出て行くと追って来なかった。
もう早川と飲むのはやめよう。面倒くさいからな。
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