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可愛いとか言うな!
しおりを挟む体育の時間、二人一組になってストレッチ。
「いてててて!早川!いてぇよコラ!」
「お前体硬過ぎ。まだちょっとしか押してねぇよ?」
「ちょ、無理!一回離せっ」
体の硬い俺には苦痛な時間。後ろから背中を押されるけど、まるで前に倒れない。
しかも俺の相方はチャラ男の早川だから遠慮がない。
「あーくそ、交代だ交代!」
「はいはい。あ、強くやっていいよー」
今度は俺が早川の後ろに周り前屈のサポートをする。わざと始めから勢いよく倒してやると、スーッと綺麗に倒れていった。
え、身体柔らか過ぎない?
「んー、気持ちぃ♡もっと押してー♡」
「変な声出すんじゃねぇよ、キモい」
「誰だって気持ちよかったら声ぐらい出すだろ」
「体育でそんな声出すのはお前ぐらいだっつの」
「それよりも見てみ?戸塚のあの顔、中西に触れるからデレてるぜ」
「付き合ってんだから普通だろ」
「ちげーよ、あの鉄仮面の戸塚だぜ?何があっても微動だにしないあの男をあんな顔に出来るのは中西だけだ」
「…………」
確かに言われてみれば戸塚のあんな顔、俺らがいくら努力しても見る事は出来ないだろう。
中西ってルックスいいし、早川と違ってチャラくないから男からも人気がある。
鉄仮面を虜にさせるのも分かるかもな。
「あ、お前女に振られたんだろ?だから中西に妬いてんだ?」
「はは、貴哉よりは女に困ってないから」
「あ?」
「すぐムキになる。まぁそんなとこも可愛いけっ……いて!」
すぐに上から目線で物を言う早川に今度は全体重をかけてやると、さすがにキツかったのかギブギブと騒いでいた。
女にモテるモテないはともかく、興味がない。かと言って男かと言ったら違う。そもそも人を好きになるの感情が分からなかった。
「早川はいつもいろんな女を取っ替え引っ替えだよな」
「その言い方やめてくれるー?あ、もしかしてヤキモチー?ほんとに可愛いんだっぐ!!」
「二度と可愛いとか言うな!」
今度は頭突きしてやると頭を押さえてやっと大人しくなった。
誰がヤキモチなんか妬くか!
ただ早川みたいに誰でも構わず手を出して付き合えたりするのが理解出来ないだけだ。
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