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一章
どっちも初心者
しおりを挟む美月side
自分の部屋で机に座りパソコンの画面をボーッと眺めてた。
今日は一歩も外へ出ていない。
こうやって一日中パソコンを眺めてた。
一日中、他人の恋の話や体験談などを調べて読んでた。
どうして人は人を好きになるんだろう。
今までこんな感情味わった事がないから変な感じだ。
そんな事を考えていると、下が騒がしくなり葉月が帰って来たのかと我に返る。
もうそんな時間か。
「美月ー!お客さんだよー!」
「……客?」
葉月の声がして、客というまた俺には有り得ない事を言われて顔をしかめる。
翔太郎かとも思ったけど、翔太郎とはあれから話してないし、連絡も取ってない。
「じゃじゃーん!まさかのイケメンさん登場ー♪」
「俺の名はイケメンさんじゃない白崎だ。失礼するぞ黒田」
「なっ……」
いつもみたいにおちゃらけて葉月が入って来た後になんと、白崎が入って来た。
何で?と頭の中が軽くパニックになった。
「ほう、ここが黒田の部屋か。想像より綺麗で感心したぞ」
「白ちゃんがね、美月が心配だから家を教えてくれって。それじゃごゆっくりー♪」
葉月が居なくなって部屋の中が静かになる。
突然過ぎて何を話したらいいのか分からない上に、俺の部屋に白崎がいるなんて……
「賑やかな弟だな。本当に良く似ている」
「似てないよ。俺と葉月は」
「そうか?パッと見分からないぞ」
「葉月はあんなだから昔から周りから好かれてたけど、俺はこんなだから……」
「ならお前も努力すれば良い。周りに好かれたいのなら」
「別に好かれたくなんかない。他人なんて面倒なだけだ」
「まぁ黒田がそれでいいならいいんじゃないのか。それよりも学校へは来ないのか?ずっと引き篭っているつもりか?」
「行かない」
「なら辞めるのか?」
「…………」
「本当にお前は中途半端が好きだな」
はぁと溜息を吐く白崎。
また説教が始まると思ってふいっと顔を背けると、白崎は俺のベッドに座った。
「前まではお前のその中途半端な所が大嫌いだった」
「…………」
「だが不思議なもので、今ではそれも悪くないと思い始めているんだ」
「……え」
意外な言葉に振り向くと、笑顔の白崎がいた。
今俺の部屋のベッドに座ってこちらを笑顔で見ているこの男は、本当にあの白崎か?
だって、白崎にとって俺は害なだけで、痒くなる存在の筈だ。
それが今、俺を認めるような言葉を……
「今日、本当は引き篭もりについて説教をしに来たつもりだったんだ。だがお前の顔を見たらそんな気は無くなった」
「どうして?」
「俺にも分からない。こんな事初めてだからな。いや、分かっているんだ本当は。ただ、それを受け入れてしまったら俺が俺で無くなる気がして怖かったんだ」
「ねぇ教えてよ。どうしてなんだ?」
こんなに優しく喋る白崎は初めてで期待しちゃうよ。
俺はそっと白崎に近寄って隣に座って白崎の手を握る。嫌がられなかった。
席替えをするぐらい俺と離れたかった筈の白崎が俺を拒む事をしない。
中途半端が嫌いな白崎だ、きっと決心して来てくれたんだ。
「どうやら俺は黒田の事が好きらしいな」
「白崎ぃ!」
嬉しくて白崎に飛び付いた。
思い切りぎゅーてしても振り解かれなくて、泣きそうになった。
それにしても白崎が自分に対して「らしい」なんて中途半端な言葉を使うなんてね。
もう今は何でも良いや。
絶対ダメだと思っていた白崎からの告白に俺は幸せ過ぎて死にそうだった。
「俺も好き!なぁ付き合ってくれるのか?」
「ああ、好き合っているならばそうするのがベストだろう。俺も恋と言うものに挑戦するのは初めてだからな、楽しみだぞ」
「俺と白崎ならめちゃくちゃ楽しいよ♡なぁ、今度から名前で呼んでいい?壱矢って♡」
「構わないが……俺の下の名前知らないんじゃなかったのか?」
「そんなのとっくに知ってたよ。壱矢も俺を名前で呼んで」
「美月」
「やばーい♡嬉しいー♡」
「な、なぁ、さっきからくっ付いてくるが、これは当たり前なのか?これじゃ落ち着いて話が出来ないではないか」
「恋人同士なら当たり前だろ。あ、他の人とはしちゃダメだからな!」
「そんな事はしない!それぐらいの知識はある!」
何か慌ててる壱矢って新鮮で面白かった。
そうか、俺もだけど、壱矢にとって恋愛は初めてなのか。
ん?待てよ?確か翔太郎の事好きじゃなかったか?
「そうだ!壱矢は翔太郎の事諦めたのか!?」
「翔太郎?ああ、あの事か。諦めるも何も俺は翔太郎の事を恋愛対象として見ていないぞ。俺にとって恋愛対象として見たのはくろ……美月が初めてだ」
「だって、好きだって言ってたじゃん!」
「昨日のやつの事か……お前は頭が良いのに肝心な所が抜けているな。翔太郎の事は好きだ。だがそれは恋愛対象としてではない。あんな子供の頃の好きも本気などでは無かった。もちろん翔太郎もだろう。俺は翔太郎の事尊敬しているんだ。そう、俺は優秀な人間が好きなんだ」
「そっかぁ、ならいいけど」
「なんだ、そんな事を気にしていたのか?」
「そうだよ!もう俺なんて壱矢に相手にもされないんだってモヤモヤして、そしたら学校行きたくないなって……」
「まさか、引き篭もりの原因は俺なのか?」
「うん」
「それは分からなかった。なら、明日から出てくるんだな?」
「勿論♡壱矢がいるからね」
「そうか、ならば安心した。早速明日からテニスの特訓をしよう!」
「ちょ、今はその話良くないか?せっかくいいムードなんだからもっとイチャイチャしようぜー♡」
「イチャイチャとやらはまた今度にしよう。今日俺は塾を休んだ。週に二回も休んだのは初めてだ。だから帰って勉強をするんだ」
「え、もう帰っちゃうの?」
塾を休んで来てくれたのは嬉しいけど、もっと一緒に居たかったから寂しい。
でもあまり壱矢を困らせて怒らせたくないしな。
「そんな顔をするな。帰りにくくなるだろう?」
「うん、ごめん」
「仕方ないな」
壱矢は困ったように笑ってから俺に近付いて、そしてなんと、キスをした。
すぐに離れていったけど、突然の出来事に俺は固まってしまった。
「では失礼する。また明日会おう美月」
「…………」
パタンと部屋のドアが閉められて、一人になって悶々としていた。
くそー、恋愛に関しては俺の方が上だと思っていたのに迂闊だったな。あんな自然にキスしてくるなんて。
まぁ俺も恋愛初心者だけど。
それにしてもかっこよかったなー壱矢!
慌てた時の壱矢もいいけど、告白してくれた時の壱矢なんて最高だろ!
早く学校行きてぇなぁ。
あ、また席替えしないかな?
今度はズルして何とか壱矢の隣確保してー。
ってそんなの壱矢が許してくれる筈ないか。
とにかく俺と白崎こと壱矢は晴れて恋人同士になる事が出来た。
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