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一章
人探し
しおりを挟む俺と白崎は三年の校舎にいた。勿論佐倉に会う為に。一年の俺達は目立っていて、通りすがる人達がみんな見て来た。
少し居心地が悪かったけど、白崎が居るから耐えられた。
「佐倉はこの学校のボスみたいな存在なんだ。実際喧嘩をしている所は見た事はないけど、とにかく誰も敵わないぐらい強いらしい。他校の人達とも喧嘩してて、ここら辺じゃ佐倉を知らない人は居ないぐらいね」
「なるほどな。喧嘩が強いとかはどうでもいいが、関係のない者を巻き込む行為は許せん」
「白崎、怖くない?」
「怖い?何がだ」
「相手は三年生だし、ボスだよ?」
「はは、相手が誰だろうと怖い事などあるか!自分は間違っていないのだからな!何だ?黒田怖いのか?」
「怖いよ。白崎を傷付けるかもしれないからね」
「それなら心配無用だ。俺は護身術なら一通りマスターしている。黒田一人ぐらいなら守る事も出来るぞ」
「すげぇな」
「殴る事も出来るが校内では暴力行為はしたくない。出来るだけ話し合いで解決させるつもりだがな」
俺は殴ったり殴られたりとかは全然平気だけど、白崎みたいな考えが普通だよな。
でも佐倉と関わって暴力行為を避けられるとは到底思えない。
三年の校舎の奥に進んで、佐倉の居る教室を目指す。教室に居るとは限らないけど、さっき白崎の所に行ったのならまだ校舎内にはいるだろう。
「ここの教室に居るはずだ」
「さっさと呼んで済ませよう」
白崎は何も気にする様子もなく、空いていたドアの所に立ち、中に向かって大きな声で言った。
「突然失礼します!この中に佐倉さんと言う方はいらっしゃいますか?」
すると一斉に中に居た奴らが白崎を見た。佐倉と言う名前を聞いたからかザワザワし始めた。
しばらくして一人の背の高い男が立ち上がり、こちらに向かって歩いて来た。
その瞬間俺の体が強張った。
間違いない。こいつが佐倉だ。
佐倉が歩く道を開けるようにみんな避けていく。そんなけ佐倉の圧迫感は凄かった。明るい茶髪にチラリと見える数個のピアス。ドクロのネックレスを付けてて、指輪もそんなにいるかってぐらい付けてた。
佐倉が俺達の前に辿り着くと、フワッと香水の良い匂いがした。爽やかな香り。
そして白崎に向かってニッコリ笑って聞いて来た。
「俺が佐倉だよん。君たち何の用ー?」
「…………」
意外な喋り方に、呆気に取られてた。何て言うか、もっとオラオラ系かと思ってたのに、意外と普通って言うか、むしろフレンドリーな感じ?
「おーい?何だよ呼び出しておいて」
「違うぞ黒田」
「え、何が?」
「俺の所に来たのはこの人じゃない」
「えー!」
白崎のまさかの発言に、思わず大きな声が出ちゃった。
確かに、白崎は佐倉とは言ってなかった。三年生ってだけ。俺達が勝手に佐倉だと勘違いしてたって事か?
こりゃまずいな……
「ん?黒田?」
「ちっ」
「て事はもしかしてこっちは白崎?へー、そっちから来てくれるなんて嬉しいじゃん」
「何故俺達の名前を知っているのですか?」
「知ってるよー♪だって面白いじゃん君達ー!友達になろうよ俺とー」
「あ、あの、人違いだったみたいなんで俺達行きますっ」
「待て黒田。もしかしたら俺の所に来た三年と繋がっているかも知らないだろ?佐倉さん、人違いしてしまって失礼しました。折行ってお話があるのですが、お時間いただけますか?」
「そんなかしこまらないでよー。俺と誰を間違えたの?」
「実は先程、俺の貴重なランチタイムに三年生の方が仲間になれと脅しに来ました。佐倉さんはその方に心当たりは?」
「それは不躾だね!心当たりはいっぱいあるけどー、んー、分かった!俺が探してしばいとく♡見付けたら直接詫び入れさせるけど、今の所は俺に免じて許してくれないかな?」
「そうですか。俺はそうしてくれると助かります。黒田はどうだ?不満なら話すと良い」
「え、白崎が良いなら大丈夫だけど」
「そうか。なら佐倉さんに任せよう。お手数ですがよろしくお願いします」
白崎は佐倉さんに丁寧にお辞儀をしていた。
それはビビってるとかじゃなくて、いつもの白崎だった。目上の人に対しての口の聞き方とかを良く指摘されてたから分かる。
白崎はみんなが恐る佐倉さんにごく普通に接していたんだ。
「任せてよ♪あ、見付けたら連絡して予定合わせて行くから連絡先教えて?」
「丁寧にありがとうございます。先に連絡いただけるのは大変助かりますね」
え!佐倉の奴、何自然と白崎の連絡先聞き出してんだよ!?俺だってまだ知らないのに!
ちょっと展開が予想外過ぎて着いて行けねぇよ!
白崎も白崎だ!初対面の相手に教える義理などないとか言って断れよ!
俺が心の中で突っ込みを入れていると、二人のやり取りは終わっていて、佐倉は座っていた席に戻っていた。
「黒田、教室へ行くぞ。授業が始まる」
「白崎!連絡先なんか交換して良かったのかよ!」
「わざわざこちらに来るのを教えてくれるんだぞ?いきなり予告もなく来られるより良い。俺は予定が狂うのが嫌いなんだ」
「白崎らしいっちゃらしいけどっ」
「黒田はこの結果では満足出来ないのか?確かにまだ片付いてはいないが」
「いや、そんな事ねぇけど……」
「なら良いではないか。もし不満ならいつでも言え。さっきも言ったが俺が協力する」
白崎は自信満々に笑って言った。
本当に何でもやっちゃう白崎はとにかくかっこよくて、俺は着いて行くしか出来なかった。
「白崎、俺にも連絡先教えて!」
「どうした急に。理由は?」
「佐倉にはすんなり教えたじゃん!」
「佐倉さんはキチンと理由も言ってくれたからな。黒田の理由は何だ?」
「理由が無いとダメなのか?」
何だか佐倉に負けた気がして悔しくなった。
白崎の連絡先……俺が先に聞きたかった!
「……分かった。教えてやる」
「え!」
「その代わりに無駄に連絡してくるんじゃないぞ。俺の予定を狂わすようなら即ブロックしてやるからな」
「しないしない!やった♪ありがとう!」
やれやれとスマホを出してる白崎。抱き付きたかったけど本気で殴られそうだったから辞めておいた。
コレって凄い進歩だよな?ちょっと仲良くなったよな?
俺は嬉しくて午後の授業はノートを取る事に決めた。
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