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一章
巻き込み注意
しおりを挟む今日は雨が今にも降りそうなどんよりとした空だった。そんな日でも俺達は昼休みになると屋上に集まる。
パンを食べながら昨日の出来事を話して居たら、隣にいた陽平が同じくパンを頬張りながら怒っていた。
「何なんだよアイツら!てか俺のとこには来ねぇとか失礼過ぎるだろ!」
「よーくん怒るところ間違ってるし!キャハハ♪」
「でも佐倉が出て来るのは、ちとマズイかもな。アイツとは関わりたくねぇ」
今日の髪型は襟足残しのハーフアップお団子。前髪でわざと片目を隠すと言うマニアックな髪型の利人はいつものように笑って居たが、陽平はいつになく落ち着いて少し焦っていた。
「確かにー、めちゃくちゃ強いらしいからね!」
「極力逃げるつもりだけど、いつまで保つかって感じ。白崎の事も巻き込んじゃったし」
本当それは後悔してる。元々は俺と陽平が起こした事なのに、関係の無い白崎まで顔覚えられちゃって。白崎なら強いし頭良いから何とかするだろうけど、もしもの事があったら嫌だ。
「なぁ白崎は本当に強いのか?」
「うん。昨日もあんなに走ったのに息一つ切らしてなかった」
「勉強も出来て喧嘩も出来るなんてかっこいいね~♡」
「でも真面目だから学校では手を出さないと思うんだ。そんな事したら成績に関わるしね」
「ならみーくんが守ってあげればいいんじゃない?」
「そうしたいけど、俺嫌われてるよ白崎に。だからあまり近付けないんだよ」
「みーくんを嫌う?白崎はとんだ馬鹿野郎だな」
「……陽平、白崎を馬鹿野郎って言わないでよ」
「じょ、冗談だよ。睨むなよみーくん」
「へー、みーくんって好きな子の事を悪く言われるの嫌なタイプなんだぁ♡」
「そうみたい。だから利人も抱き付いたりしないでよ?」
「かしこまりー♪」
俺達がそんな話をしていると、屋上のドアが勢い良く開いて誰かが入って来た。そして大声で叫んでた。
「黒田ぁぁぁ!貴様ぁぁぁ!」
「あ、白崎……」
噂をすればってやつ?
既に怒った様子の白崎が俺を見付けると真っ直ぐに歩いて来た。
てか今日の俺まだ悪い事してないよな?授業もちゃんと出たし。白崎は何で怒ってるんだ?
他の三人も突然の出来事にキョトンとしていた。
「あ、白崎……じゃなーい!お前がそこまで落ちぶれていたとは見損なったぞ!」
「ちょっと落ち着いて?全然話が分からないから」
「さっき三年が来てお前が仲間になったと聞いた!何故あのような奴らと連む!確かに好きで関わっているのならとは言ったが、俺まで巻き込むのは解せん!」
「え、三年?待って、何言われたの?」
白崎の言う三年てまさか佐倉の事?それだったらまずいな。直接白崎の所に行くなんて……
「何言われただと?俺を仲間にしたいと言われたが断ったんだ。そしたら黒田は仲間になったと!それで俺も仲間にならないのなら黒田に責任取らせると言われたんだ!」
「何だよそれ」
そんな話は初耳だ。俺は佐倉達の仲間になるなんて一言も言ってない。それに佐倉と話すらした事ないのに。
でもそれなら白崎が怒るのも無理ないか。
「アイツくだらねー嘘言ってんな!許せねぇ!」
「キャハ!やっちゃう?ねぇやっちゃう?」
「二人共落ち着いて。白崎、巻き込んだ事謝るよ。まさかこんな事になるなんて、本当にごめん。ちゃんと話すから聞いてくれる?
「勿論話してもらう!」
完全に怒ってる白崎はどかっと座って俺達の輪に入った。このメンバーに白崎が居るって不思議な感じだけど、今はそんな事どうでもいい。
まずはちゃんと説明しなきゃ。
「えっと、昨日の二年生と白崎の所に来た三年生は多分同じグループなんだと思う。俺がアイツらに付き纏われてるのは、アイツらの仲間をボコボコにしちゃったからなんだ。初めは仕返しに来たんだろうけど、白崎に会って気に入っちゃったんだと思う。それと、俺がアイツらの仲間になったって言うのは嘘だ。あれから接触して来ないし、三年とは会った事もないんだ」
「…………」
無言で俺の話を聞きながらジーッと見てくる白崎。真面目な話をしてるんだけど、白崎にそんなに見られたら俺ドキドキしちゃうよ。
だって白崎はかっこいいから。それを隠す為に話を続ける事にした。
「白崎は俺の言う事信じられる訳ないと思うけど、本当だよ。だからこれ以上白崎に迷惑かけないように、アイツらと話合うよ」
「みーくん!本気か?それなら俺も行く!」
「心強いよ。でも一人で行ってくる。白崎は周りを巻き込むのを凄く嫌うからな」
チラッと白崎を見てみると、目を閉じていた。
まさか寝たって事はないと思うけど、何を考えているのかな。分からなくて少し怖い。
「白崎?それじゃダメか?」
「話は分かった。黒田を信じよう」
「白崎……」
「だが一人では行かせない。俺も行こう」
「え!白崎が!?」
まさかの答えに驚いていると、白崎は立ち上がって俺に手を差し出して来た。
「俺もアイツらとは白黒させたいしな。何より黒田が一人で片付けようと思い立った事に感動している。俺は応援するぞ」
「嘘、やばいっ」
白崎らしい言葉だった。いつも俺に言うような攻撃的なセリフじゃなくて前向きな。
そんな白崎はよりかっこよくて、俺は泣きそうになった。白崎、大好きだ。
俺は差し出された手を取り、立ち上がった。
陽平と利人はおーっと拍手をしていた。
翔太郎はずっと黙って聞いているだけだった。
「さて善は急げだ。行くぞ黒田。俺の至福のひとときティータイムを削られたんだ、完璧な結果を出そう!」
「?……うん!」
たまに訳の訳のわからない事を言うけど、今ではそんな白崎も好きだった。
もっと一緒にいたい。
そしてもっと仲良くなりたい。
白崎にとって俺と言う存在が一番になって欲しい。
そう思うだけで俺は頑張れた。
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