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一章
頼れる仲間達
しおりを挟む美月side
白崎の提案した席替えで窓際の一番後ろという素晴らしい席を確保出来たのにも関わらず、落ち込んでいるのはきっと白崎のせいだ。
今だってほら新しいご近所さん達と楽しそうに話してるし。俺にはあんな風に話してくれない。いつも怒ってばかりだ。
白崎壱矢。顔良し、頭良し、運動神経良しの何でもやっちゃう凄い男。性格はキツくて、何かと怒ってくるんだ。
そんな彼の事を俺はうるさい変な人ってぐらいにしか思っていなかったんだけど、今は違う。席が離れちゃってとても寂しい。
多分俺は白崎の事が好きだ。
「く、黒田……」
「ん?」
小さな声で呼ばれて反応をすると、クラスメイトはビクッとして怯えているように見えた。
俺に良い噂が無いのは分かってる。だからみんな俺を避けてるし、俺もこいつらと関わる気なんて無いから気にしてない。
「何?」
「あそこ、二年生が呼んでる……」
彼が指を指して言う場所、後ろのドアを見ると柄の悪そうな二人がこっちを見ていた。
めんどくせぇなぁ。白崎と離れちゃってブルーになってるってのに。
俺は立ち上がりそいつらの所に行くといきなり胸ぐらを掴まれた。
「てめぇが黒田だな?おいちょっと面貸せや」
「離してよ。何でアンタらに付いて行かなきゃいけない訳?」
「この前山田をやったのてめぇだろ?あ?」
「山田?ああ、あの弱っちいの?」
「クソ!こいつ!」
「おい、ここで手は出すな。さっさと佐倉くんとこ連れてこうぜ」
「ちっ」
そのまま胸ぐらを掴まれたまま引っ張られて廊下に引き摺り出されてしまった。くそ、力強ぇなぁ。
そこへ、教室からひょこっと誰かが出て来て俺達に向かって怒鳴った。
「黒田ぁ!予鈴鳴っただろう!喧嘩なんかしてないでさっさと席に着け!」
「え、白崎?」
つかつかと歩いて来て俺の胸ぐらを掴む二年の手をパシッと叩いて退けてくれた。
ちょ、白崎、この人達が怖くないのか?
「こらクソ野郎!今何したコラ!」
手を叩かれた男は怒って白崎の腕を強く握った。
あ、コイツ白崎に触った……
「おいお前……」
「先輩方、もう授業が始まりますよ。教室に戻るべきではないでしょうか?」
俺が手を出し掛けた時、白崎が笑顔で男に言って手を振り解いていた。白崎のその行動に男の怒りは更に増したようで、とうとう白崎に殴り掛かろうとしていた。
「白崎!」
白崎の盾になろうと俺が動き出すより先に、白崎の方が速く動いて自分に向かって来た男の拳を手の平で軽く受け流し、反対の手で男の腕を軽く支えてそのまま後ろに流すと、男は廊下に豪快に転んだ。
一瞬の出来事で、俺はもちろん、男達も固まっていた。
「口程にもない。そちらの先輩も来ますか?」
「ううん。辞めとくー。おーい出直すぞー」
もう一人の男は廊下に転がる男を無理矢理起こしてそのまま連れて行った。
そして残された俺は何が起きたのか分からずボーッとしていると白崎にほっぺをつねられた。
「ほら席に戻れ。授業だ」
「……あい」
もしかして白崎って喧嘩出来んの?
ちょー意外なんだけど。
にしてもカッコよかったな今の白崎。全然俺の助けとか要らなかったし。
クラスメイト達もさっきのやり取りを見ていて、ヒソヒソと話していた。
あー……俺、白崎が好きだな。
授業が終わって昼休みになると、俺は屋上へ向かった。そこには既に三人の男がいて、俺に気付くと手を振って来た。
「来た来たやっほーみーくん♪」
「やっほー。相変わらずみんな早いな」
「鳴る前に出て来てっからね。陽平なんかは前の授業から居るよな!キャハ!」
「おう!ずっとここで寝てた」
いつものメンバーの顔が見れてホッとする俺。やっぱり落ち着くなぁ。
「てっきりみーくんも来るかと思ってたのに、来なかったのな!」
ずっとここで寝ていたと言う一番尖ってそうな金髪の派手な見た目のこの男は、長谷川陽平。俺と同じぐらいサボり癖があり、ここに来るとかなりの確率で会える。誰よりも喧嘩っ早い気質で、別の名を特攻隊長と言う。
「陽平一人ぼっちで寝てやんのー♪あはは!」
陽平を指差してケラケラ笑っているカラフルな見た目の男は間宮利人。いつも笑っていて、楽しい事と祭り事が大好き。肩まである長い髪をいつもいろんな縛り方をしていて色も頻繁に変えてるお洒落好きな男。綺麗な顔をしていて、良く声を掛けられてるみたいだけど、軽くかわして相手にしてないみたい。
今日は前髪を垂らしたお団子頭にしていた。
「美月、昼飯は?」
俺が屋上に来てからやっと第一声を発したこの大きい男は栗原翔太郎。他の二人とは違って無口で比較的真面目。いつも冷静でここぞという時に俺達を助けてくれる頼りになる奴。
ちなみに三人は同じクラス。
翔太郎と俺は中学から一緒で、二人とは翔太郎を通して仲良くなったんだ。
「まだ食べてない。何かある?」
「そう言うと思って買っておいたぜー。カツサンドとBLTサンドどっちがいい?」
焼きそばパンを頬張りながら二つのサンドイッチを見せてくる陽平。俺はBLTサンドを選んだ。
「ありがとう。いただきます」
「ジュースは俺が買ったよー♪はいイチゴオレ♡」
「ありがとう利人」
大体いつもこのメンバーで屋上で過ごしている。クラスで浮いている俺にとっての唯一の居場所だ。
有難い事に三人は俺に良くしてくれて、特に翔太郎には中学の時から世話になりっぱなしだった。
そんな三人に俺は白崎の事を相談してもいいかなと思うんだ。
「ところでなんだけど」
「なになにみーくん!面白い話ー?」
「いや、面白いかはわからない。聞いてくれるかな?
「もちろん!みーくんの為なら俺ら何でもするぜ!な?利人!」
「キャハ♪するするー!」
「ありがとう。実は俺、恋してるっぽいんだよね。男に」
「…………」
「…………」
「恋だと?」
あれ?話したらまずかったかな?
いつもうるさい二人は目を見開いて俺を見てる。あの翔太郎でさえ眉毛を引き攣らせてた。
「あ、やっぱ聞かなかった事に……」
「って出来る訳ねーだろ!詳しく聞かせろ!」
「やばー♡みーくんの恋バナとか楽しすぎ♡」
「…………」
二人がグイッと俺に近付いて来た。
話しても大丈夫……なんだよな?
「相手は誰ぇ?みーくんを惚れさせるなんてかなりのイケメンなんだろー?」
「昨日そこで俺がカツアゲされてると思って入って来た人覚えてる?同じクラスなんだけど」
「覚えてる覚えてる!ヤベー奴だったな!」
「確かに面白い人だったよなー!みーくんってああいうのがタイプなの?」
「そうみたい。でも俺恋とかってした事なくて、どうしたらいいのかな?」
聞きたい事を尋ねると、二人はフルフル震え始めて、利人に抱き付かれた。またまずい事言ったか俺。
「みーくん可愛すぎる!俺達全力で協力するから安心してー♡」
「俺も恋とかは良く分かんねーけど、みーくんが困ってんなら協力するぜ!」
「…………」
「あー、翔ちゃんはビミョい感じ?」
「翔太郎……」
一番理解して欲しかった人、翔太郎はずっと眉をひそめて黙っていた。もしかして俺が男を好きだって分かったから軽蔑してるのかな。
でも好きになってしまったものは仕方ない。
翔太郎はため息を吐いて言った。
「いや、俺も応援する」
「本当?嬉しい♪」
「翔ちゃん、おっとなー!」
「なぁみーくん、あの男はみーくんの事どう思ってんだ?脈あんの?」
「うーん、少しはあるのかなと思ったんだけど、どうやら違うみたい。今日席替えして席離れちゃったんだ」
「それならいっぱい声かけよう!彼の好きな話をするとか気を引いたらいいよ♪」
「白崎の好きな事……勉強?」
「うわ!好きそー!」
「うんうん、真面目そうだもんね~」
「でも強いよ白崎って。陽平とどっちが強いかな」
「何ぃ!?喧嘩出来んのかアイツ!」
「動きが素人じゃなかったよ。あ、二年に絡まれたんだけど、白崎が追い払ってくれたんだ」
「ちょ、二年に絡まれたって大丈夫なの!?もしかしてこの前の仕返し?」
そう、この前俺と陽平はいちゃもん付けて来た二年をボコボコにしてやった。初めは俺の目付きが気に入らないと言われて、隣にいた陽平が出て来て殴られた。そして俺も加わって見事追い払う事が出来たんだけど、どうやら仲間にチクったみたいでちょっと厄介な事になったんだ。
その時利人と翔太郎は居なかったから後で話したら心配してくれたんだけど、居なくて良かったかもな。顔見られてたらそっちに行ってたかもしれないし。
「アイツ、仲間に頼るとか卑怯だな」
「大丈夫だよ!今度来たら俺達も加勢するから!な?翔ちゃん!」
「ああ」
「はは、ありがとう。頼もしいよ」
俺達四人は良く喧嘩していた。それぞれ目立つ見た目だからそういう輩に絡まれる事が多いんだよね。特に陽平が。でもみんな強いから怪我はするけど、負ける事は少ないんだ。
俺も人を殴るのは嫌いじゃない。スカッとするからな。
俺は多分、普通じゃない。周りから疎まれるのも分かるぐらい変わってる。それでも白崎は俺を相手してくれた。怒ってばかりだけど。
あー、白崎に会いたいなー。
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