完璧君と怠け者君

pino

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一章

席替え

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 次の日、俺は朝のホームルームの時間に担任に昨日計画を立てた席替えの件を申し出た。担任はもちろん、クラスメイト達もザワザワと騒ぎ始めた。


「席替えだと?何でまた突然」

「今のままの席では授業に集中出来ないからです」

「うーん、気持ちは分かるが」

「ならば今この時間でやりましょう!」


 俺と担任のやり取りを聞いていたクラスメイト達が一斉に盛り上がった。みんなも席替えを望んでいるみたいだな。心強いな。

 黒田はと言うと、黙って頬杖を付きながら机に座っていた。

 クラスのムードに負けた担任は、頭を掻きながら渋々と言う感じで頷いてくれた。


「あー、分かった分かった。とにかく静かにしろ。他の教室に迷惑だから。くじでいいか?」

「はい!実は既に作ってあります!」

「おーそれなら白崎に任せるから前に出て話を進めろ」

「お任せ下さい!」


 指名された俺は昨日の夜、昨日の夜に作っておいた自作の数字が書かれた二つ折りの紙が入った箱を持って教卓に立つ。勿論細工など卑怯な事はしていない。
 そして黒板に机の数分の表を書いた。

 完璧に運任せになる。
 だから俺と黒田が離れるという確証はない。
 もし失敗して離れなかったとしたらその時は諦めようと思う。諦めて次の機会を狙うまでだ。
 そうだな、来月辺りにもう一度席替えの提案をすればいい。

 俺は準備が整ってからもう一度教卓に立った。


「初めにこちらの表に1から順番に好きな場所に数字を書いてくれ。そしてくじを一枚引く。引いたくじは一斉に見るので絶対に先に見たりしないように。黒板に書かれた数字とくじの数字が一致する場所が新しい席になる。説明は以上だ。では順番に並んでくれ」

 
 そう言うと、指定された生徒達が立ち上がりくじを引いていく。
 俺が決めたルールに従いみんなが規則正しく動いていく!何て気持ちが良いんだ!もちろん言い出した俺は一番最後に引く。

 そして黒田の番になり、教卓の前にいる俺の前に立って真っ直ぐ見てきた。


「なぁ白崎」

「さっさと数字を書いてくじを引け。輪を乱すな」

「……ん」


 俺が軽く叱ると、しゅんとして大人しく言う事を聞いた。
 さて全員が引き終わったので席替えの始まりだ。

 みんなの移動が始まり、俺も新しい席に荷物を移す。
 場所は何と教卓の真ん前。ベストポジションだ!勉強するにはもってこいの場所。完璧だ!
 心の中でガッツポーズをして荷物を机の中に仕舞う。

 問題の黒田はと言うと、窓側の一番後ろの席に不貞腐れたように座っていた。
 

「白崎は満足したか?それと、後で新しい席の表を作ってここに置いておいてくれ。他の先生が分かりやすいようにな。さぁ、授業の準備しろー」

「はい!分かりました」


 後でパソコン室へ行って今日中に仕上げよう。
 すっかり気分が軽くなった俺はルンルン気分で次の授業の教科書を机から取り出す。

 すると、隣の席になった男に声を掛けられた。


「白崎ー、隣よろしくなー」

「ああ、よろしく」

「いきなり何で席替えしようって言い出したんだ?黒田と喧嘩でもしたのか?」

「何でそうなる?俺と黒田は喧嘩をする間柄じゃない。ただのクラスメイトだ。席替えの理由は授業に集中したいからだ」


 そんな話をしていると、更に違う男が入って来た。


「なんかさ、白崎と黒田って仲良いじゃん?見てて面白いし」

「そうそう。コントやってるみたいで笑えるよな」

「それは残念だったな。もう二度と見れないだろう」

「ぶっちゃけ、白崎と黒田ってデキてんの?」

「は?今何て?」

「いや、二人見てると何かあるのかなーって。なぁ?」

「ああ、二人共タイプは違うけど、息ぴったりだしな」

「くだらない事言ってないで授業の準備をしたらどうだ?」

「えー、教えてくれよー……」


 ふん、勝手に言っていろ。俺は会話から抜けて次の授業の復習を始める。

 どうやら俺と黒田は周りからはそういう風に思われているらしいな。
 不愉快極まりないが、俺が黒田に拘り過ぎていたのも原因の一つだろう。
 まぁそんな話も時間が経てば薄れていく。それまでの辛抱だ。


「そう言えばさ、あの噂聞いた?黒田のやつ、二年と喧嘩したって」

「聞いた聞いた。その二年が三年にチクって黒田ヤバいらしいぜ?」

「頼むから俺達を巻き込むのだけは勘弁して欲しいよな」


 二人から聞こえてくる会話につい聞き耳を立ててしまった。
 黒田の評判は良くないらしいな。それも仕方ないだろう。授業もまともに受けないし、クラスでも浮いていていつも一人だし。誰も黒田と関わろうとしないんだ。
 まぁ一人と言う点は俺も当てはまるから強くは言えないが。
 
 もう少しで授業が始まると言う時に何やら後ろの方が騒がしくなり、振り向いて見るとみんなが後ろのドアの方を見ていた。そこには黒田と、おそらく二年生か三年生が二人、三人は何やら揉めていた。
 その内の一人は今にも黒田に殴りかかりそうな雰囲気だった。

 また黒田か……
 まったく、もう授業が始まると言うのに。
 席替えの効果も虚しく、今日も俺の怒りゲージが増えた。



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