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本当にすみませんでした

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 ……い、今のは少し驚いただけよ。それにきっと、彼の顔が整いすぎているのが悪いんだわ。

 彼の外見が良いことは元々知っているけれど、ここ数年は仏頂面しか見ていなかったせいか、柔らかい笑顔が少し衝撃的だっただけだ。
 
 なんだかいたたまれなくなった私は、フイッと視線を横に逸らした。
 
「ぐぅ……ッ、推しの照れ顔尊い……」
「え?」
 
 今、よくわからない言葉が聞こえた。一体どういう意味だろう。先ほど伯爵が言った、たまにおかしなことを口走るというのはこのことだろうか。
 
「あ、なんでもないです。ルナリア嬢は、今日も本当に可愛らしいですね。自分が貴女の婚約者であるという幸福に目眩がするほどです」
 
 嬉しそうな、幸せそうな笑顔でそんなことを言われるが、今までの態度と違いすぎて困惑してしまう。それに、私は可愛らしくなんてない。美しい、とはたまに言われることがあるけれど、可愛らしいなんて、子供の時にさえあまり言われなかった言葉なのだ。ベルダ様は、やはり頭にどこか異常が出てしまったのではないだろうか。
 
 じっとベルダ様を見つめると、なぜか彼の頬がほんのりと染まってきた。
 
「あー、えっと。そうだ。プロポーズより先に謝らないといけませんでしたね」
 
 彼はそう言って、申し訳なさそうに眉を下げた。
 
「今まで、貴女にずいぶんとひどい行動と言動を重ねてきたと思います。本当にすみませんでした。過去の自分をぶん殴ってやりたい気持ちでいっぱいですが、代わりに父が殴ってくれたことは本当に幸いでした。おかげで、自分がどれほど幸運な立場にいるのか思い出すことができたのですから」
 
 そう言ってにこりと微笑む彼は、本当に以前とは別人のようだ。
 
「あぁ、いつまでも立たせてしまって申し訳ありません。ルナリア嬢、よろしければ、あちらで二人で話をする時間をいただけませんか?」
 
 そう言って、彼は私をエスコートするように手を差し出した。
 
 本当にどうしたのだろう。
 こんなに丁寧に話しかけてもらったことなんて今までになかったし、夜会の時でさえエスコートはおざなりな人だったというのに。
 
 私を尊重しようという気持ちが伝わってきて嬉しくもあるが、違和感がひどい。特に話し方は、それほど気を遣ってほしくはないと思ってしまう。
 
「あの、今までのように楽に話されてください。その……呼び方も、ルナリアで結構ですわ」
 
 そう言うと、彼はパッと顔を輝かせた。
 
「本当に? 嬉しいな。ありがとう、ルナリア」
 
 その笑顔は、彼が本当にそう思っているのだと感じられる、心からの笑顔だった。
 
 ……実は、本当に以前と別人になってしまったんじゃないかしら?
 
 私は大いに混乱しながらも、ベルダ様の手を取った。
 
 
 
 
 
 
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