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第一章

ノアルード④

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「キャアアアアッ!」
「なんだこれは!?」
「危険だ、王子から離れろ!!」
 
 オレは、二度目の魔力暴走を起こした。
 
 今回は、特に何かきっかけがあったわけではなかった。
 魔力の扱いは得意だったし、意図せず溢れて暴れ出す魔力が勝手に魔法になり周囲を傷つけるなんて、意味がわからなくてオレは混乱した。
 
 意識がハッキリしていたからか、前回のように死人を出す前に何とか収めることはできたが、その時にはすでに何人もケガ人を出してしまっていた。
 
 
 それからは、動きが制限されるようになった。
 一人で部屋を出ることができなくなり、常に見張りの騎士がつけられた。
 また、体が丈夫な竜人族以外はオレに近づかないよう厳命されたらしく、周囲から極端に人が減った。
 
 竜人族は、つまり帝国の貴族である。
 なぜオレのような危険なやつの世話をしなければならないのかと、嫌々という態度を隠さない者も多かった。
 
 オレは、必死で魔力暴走について調べた。
 
 本来なら、こんなふうに魔力暴走を起こすのは、癇癪を起こしやすい赤ん坊くらいのものであるはずだ。
 魔力は成長とともに増えるものだから、わずかな魔力しか持たない赤ん坊の魔力が暴走したところで、大した問題ではない。
 子供が泣きわめいて、物を投げたり壊したりするのと、同じようなものだからだ。
 
 でも、オレはもう十歳を過ぎている。
 しかも精霊族の母親譲りなのか大量の魔力持ちだったので、魔力暴走を起こしたら、周囲に多大な危険が及ぶのだ。なんとか暴走しないようにしなければならないが、オレのような特殊な状態は前例がほとんどなかったため、参考になる資料など皆無だった。
 
 帝国の魔法使いたちでも、解決法はわからないらしく、オレの管理を厳しくすることでなんとか対応しているという状況だった。
 
 ……何か、根本的な解決方法はないのか?

 このままでは、きっとまた魔力暴走を起こしてしまう。竜人族ならそれでも死なないかもしれないが、人質の分際で、そんな迷惑をかけ続ける存在でいていいはずがない。

 あんなことが続けば、またあの牢獄のような場所へ閉じ込められることになるかもしれない。
 閉塞感と無力感に苛まれ、何の楽しみも希望もないあんな日々へ戻るのは、もう嫌だった。

 それに、魔力暴走を起こしたあとはいつも疲れ果てたように倒れてしまう。あれほどの魔力を扱うのだから当然かもしれないが、自分の体が自分の思う通りに動かない気持ち悪さからか、ザワザワとした不安が心に巣食うようになっていた。

 いつか、あの黒い魔力にオレ自身が飲み込まれるのではないかと思えて、恐ろしくなったのだ。
 
 調べても調べても、有用な情報は出てこない。
 わかったのは、オレが精霊族と人間族のハーフであるため、膨大な魔力があるにもかかわらず、器の強度が足りなくて魔力が制御できなくなっているらしいということだけだった。
 
 でも、それがわかったところで、オレの出自は変えられない。魔力を減らす方法なんてないし、器を強化する方法もまた然りだ。魔力を増やす研究はしても、減らす研究なんて誰もやらないだろうから、帝国の魔法使いたちもお手上げのようだった。
 
 ーーそして、恐れていたその時は、無情にも訪れてしまった。
 
 
 
 
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