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第一章

はじめまして

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「う、うん……?」
 
 さすがクロだ。
 
 確かに、これは竜人族だけが使える魔法の儀式で、一生に一度だけだと言われたし、将来つがいと思える相手ができた時に困ることになるかもしれないとは言われた。
 
「眷属になって、一生守るとか、寄り添うとか、共にいろとか言ったよな。……その意味、わかってるのか?」
「え? そのままの意味でしょ?」
 
 それの何が問題なのだろうか。
 わたしが首を傾げると、クロがため息を吐く気配がした。
 
 ……どうしたの?
 
「本当にバカ。オレなんかのために、あんな魔法を使うなんて。恐らくこれは、古代魔法の一種だぞ。さっきの誓約は、きっとキアラが生きている限り永遠に効力を発揮するもので……」
「えへへ」
「……何笑ってるんだよ?」
 
 だって、嬉しいのだ。
 彼が消えずに済んで、こうして人の姿で話せていることが。

「クロとずっと一緒にいられるってことでしょ? ちゃんとわかってるよ!」
「……やっぱりバカだ」
 
 さっきから何度もバカだと言われているのに、わたしは嬉しくて嬉しくて、にこにこしてしまう。クロが助かったから、こんな憎まれ口も叩けるのだ。そう思うと、今は全く気にならない。
 
 そんなわたしを見て、クロはその綺麗な顔をくしゃりと歪めた。まるで泣くのを我慢しているような顔だった。
 
「……もう取り消しはできないぞ。それもわかってるんだよな?」
「うん!」
「なら、誓約通り、オレは何があっても一生キアラと一緒にいる。絶対に離れてなんかやらないから、覚悟しとけよ」
「あははっ。うん!」
 
 何の覚悟が必要なのかはわからないが、何の異論もないので、わたしは頷いた。
 
「…………助けて、くれて……ありがとう。キアラ」
「うん!」
 
 最後のお礼の言葉はとても小さな声だったけれど、わたしは力いっぱい返事をした。
 
「はじめまして、ノアルード。これからもよろしくね!」
 
 やっと、人の姿をした彼に向かって、名前を呼ぶことができた。初めてなのでちゃんと全部呼んでみたけれど、やっぱり長いので、次からはあの夜約束したように、ノアと呼ぼうと思う。

 笑顔を向けると、彼もやっと、フッと表情をゆるめてこう言った。
 
「末永くよろしく。キアラ」
 
 初めて見たノアの笑顔と、なんだかやけに甘く響いたその声に、わたしの胸はなぜか、大きくドキンと音をたてたのだった。








◇◇◇◇◇◇


 いつもお読みくださり、ありがとうございます。
 エールをくださっている方、感想をくださった皆様、本当にありがとうございます。大変励みになっております!

 ついにクロが人の姿に戻りました。
 次回からはノアルードの回想に入る予定です。
 もう少しお付き合いいただけると嬉しいです。

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