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第一章
中にいたのは
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「クロ?」
クロの声かけでスピードをゆるめると、ちょうど階段が終わるところだった。
しかし、ついにたどり着いたその場所には、頑丈そうな扉があった。その上にはすごく大きな太い鎖がかけられていて、わたしたちの侵入を阻んでいる。
鎖にはうっすらと光るおかしな模様が入っているので、きっと魔法の鎖なのだろう。
「……!」
中に、何か危険なものがいる、ということだけはすぐにわかった。頑丈に封鎖された扉に近づいただけで、肌がビリビリして、ぞわぞわと背筋が寒くなってくるのだ。
それでも、わたしに引き返すという選択肢はない。
危険でも、クロがこの中へ入りたいというのなら、力になりたい。それにクロは、本当にわたしが危険だったら、ここへ連れてこないと思うから。
「クロ。これ、開けられるの?」
《キアラが力を貸してくれたら、開けられると思う。この扉を開けるには、魔法の解除と同時に、物理的なパワーを加えることが必要なんだ》
……なーんだ。それなら、わたしの出番ね!
「どうすればいいの?」
《オレがキアラの拳に解除魔法の術式を付与するから、キアラはそれで扉に力を加えてほしい》
「扉を押せばいいの?」
《それでもいいかもしれないけど、もっと強く……壊すくらいのつもりでやったほうがいいと思う》
……つまり、わたしは力いっぱい扉を殴ればいいってことね!
「わかったわ。まっかせて!」
《……頼もしい限りだよ》
どこかおかしそうにそう言うと、クロは魔法を使い始めた。不思議な光る模様が現れて、わたしの手に絡まっていく。
……わぁ、すごく綺麗。それに、なんだかまるで、わたしが強くなったみたい!
《いいよ、キアラ。頼んだ!》
「よーし。行くわよ~!」
わたしは思い切り息を吸い込みながら、大きく腕を振りかぶった。
「よっせぇーーーーーい!!」
ドゴーーーン! バキバキバキッ!
クロが魔法をかけたわたしの一撃は、とても破れなさそうな頑丈な扉を、一発で砕いた。
わたしは安堵して、ふぅ、と息を吐く。
「やったわね、クロ! って、きゃっ!?」
突然何かが目の前をかすめて、わたしは驚いて後ずさった。
何が起こったのだろうと崩れた扉の奥の光景を見て、わたしは息を呑んだ。
そこには、人の原型をかろうじて残した、黒髪の男の子がいた。
目を閉じた顔の半分から右腕の部分以外が……つまり、体のほとんどの部分が、暴れ狂う黒い台風と一体化してしまっている。というよりも、体が黒い暴風へと変化してしまっているのかもしれない。
黒い風は、地面に描かれている不思議な模様のおかげか、その空間までしか出てこられないようだった。
「グオオオオォォォオッ!」
その声は、まるでこの人の断末魔にも、暴れまわる黒い風の音にも聞こえた。部屋中に反響する、苦しそうな声が痛ましい。
「ク、クロ。これって……」
《キアラ、ありがとう》
「えっ?」
突然お礼を言い始めたクロを振り返る。
その表情は、満足げでも、悲しげでもあった。
《キアラのおかげで、オレはオレとして消えることができそうだ》
クロの声かけでスピードをゆるめると、ちょうど階段が終わるところだった。
しかし、ついにたどり着いたその場所には、頑丈そうな扉があった。その上にはすごく大きな太い鎖がかけられていて、わたしたちの侵入を阻んでいる。
鎖にはうっすらと光るおかしな模様が入っているので、きっと魔法の鎖なのだろう。
「……!」
中に、何か危険なものがいる、ということだけはすぐにわかった。頑丈に封鎖された扉に近づいただけで、肌がビリビリして、ぞわぞわと背筋が寒くなってくるのだ。
それでも、わたしに引き返すという選択肢はない。
危険でも、クロがこの中へ入りたいというのなら、力になりたい。それにクロは、本当にわたしが危険だったら、ここへ連れてこないと思うから。
「クロ。これ、開けられるの?」
《キアラが力を貸してくれたら、開けられると思う。この扉を開けるには、魔法の解除と同時に、物理的なパワーを加えることが必要なんだ》
……なーんだ。それなら、わたしの出番ね!
「どうすればいいの?」
《オレがキアラの拳に解除魔法の術式を付与するから、キアラはそれで扉に力を加えてほしい》
「扉を押せばいいの?」
《それでもいいかもしれないけど、もっと強く……壊すくらいのつもりでやったほうがいいと思う》
……つまり、わたしは力いっぱい扉を殴ればいいってことね!
「わかったわ。まっかせて!」
《……頼もしい限りだよ》
どこかおかしそうにそう言うと、クロは魔法を使い始めた。不思議な光る模様が現れて、わたしの手に絡まっていく。
……わぁ、すごく綺麗。それに、なんだかまるで、わたしが強くなったみたい!
《いいよ、キアラ。頼んだ!》
「よーし。行くわよ~!」
わたしは思い切り息を吸い込みながら、大きく腕を振りかぶった。
「よっせぇーーーーーい!!」
ドゴーーーン! バキバキバキッ!
クロが魔法をかけたわたしの一撃は、とても破れなさそうな頑丈な扉を、一発で砕いた。
わたしは安堵して、ふぅ、と息を吐く。
「やったわね、クロ! って、きゃっ!?」
突然何かが目の前をかすめて、わたしは驚いて後ずさった。
何が起こったのだろうと崩れた扉の奥の光景を見て、わたしは息を呑んだ。
そこには、人の原型をかろうじて残した、黒髪の男の子がいた。
目を閉じた顔の半分から右腕の部分以外が……つまり、体のほとんどの部分が、暴れ狂う黒い台風と一体化してしまっている。というよりも、体が黒い暴風へと変化してしまっているのかもしれない。
黒い風は、地面に描かれている不思議な模様のおかげか、その空間までしか出てこられないようだった。
「グオオオオォォォオッ!」
その声は、まるでこの人の断末魔にも、暴れまわる黒い風の音にも聞こえた。部屋中に反響する、苦しそうな声が痛ましい。
「ク、クロ。これって……」
《キアラ、ありがとう》
「えっ?」
突然お礼を言い始めたクロを振り返る。
その表情は、満足げでも、悲しげでもあった。
《キアラのおかげで、オレはオレとして消えることができそうだ》
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