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第一章
作戦
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「ここに、お母さんがいるのよね?」
村のどの家よりもずっと大きな領主の屋敷を見上げて、わたしはそう呟く。わたしたちをあの小さなボロ小屋へ押し込めておきながら、なぜあんなやつがこんなに広くて立派なところで暮らしているのかと考えると、無性に腹が立ってくる。
領主の屋敷は広い。他では見ない三階建てで、なんでそんなに必要なのっていうくらい、たくさんの部屋があるのだ。
その中のどこに母がいるかなんてわからないので、しらみ潰しに見ていくしかないのかなと思っていたのだけれど。
《見つけた。三階の突き当たり、ここから見て一番右の部屋にいる。意識はないようだけど、無事みたいだ》
クロがあっさり解決してくれた。
指定した対象の場所や動きを特定する魔法を使ったらしい。よくわからないけどなにそれ、便利すぎる。
「……もしかしてファムルを見つけたのも、その魔法だったの?」
《いや、この魔法は有効範囲がそれほど広くないからな。ファムルを見つけたのは精霊たちだよ》
「そうだったの!?」
……ありがとう、精霊さんたち!
とにもかくにも、これで母の居場所がはっきりした。無事であることもわかって、一安心だ。
わたしがおんぶや抱っこをして母を運ぶこと自体は問題ないと思うが、わたしより大きい彼女を安定して運ぶことはまだ難しい。母は体が弱いので負担になってしまうかもしれないのが心配だけれど、今はとりあえずここを脱出するのが先決だ。多少無茶でも、やるしかない。
門前には二人の衛兵が見張りに立っているが、雰囲気からしてもたいしたことはなさそうな人たちだ。問題なくやっつけられると思う。
「よーし、じゃあ乗り込むわよ!」
《コラちょっと待て、キアラ》
いざ出陣! とばかりに正面から向かおうとすると、クロに止められてしまった。どうしたのだろう。
《バカ正直に正面から行くやつがあるか。門番は二人いるんだから、同時に無力化しないと応援を呼ばれてしまうだろ? オレたちの目的は、キアラのお母さんを取り戻すことだ。わざわざ最初から騒ぎを起こして、たくさんの衛兵と交戦するのは得策じゃない》
確かにそうだ。でも、それなら一体、どうしたらいいというのだろう。
《オレが囮になって、ちょっとした騒ぎを起こす。そうすれば、一人は様子を見にその場を離れるかもしれない。それでなくても、多少意識は逸らせるはずだ。キアラはその隙に、素早く門番たちを昏倒させるなりして、なるべくこっそりと侵入するんだ》
クロの提案に、わたしは一瞬身を固くした。それは、クロにとても危険な役目をさせてしまうということだ。
でも、わたしはそれを口に出すことなく、クロを見つめながらしっかりと頷いた。クロなら、きっと大丈夫だ。クロは強くて素早くて賢くて魔法まで使える、頼りになるお友達であり相棒だ。そのクロがやると言っているのだから、きっと大丈夫なはずだ。
それに、わたしが突入すればきっと大騒ぎになって、衛兵たちが総動員で攻撃してくるだろうが、きっとクロならそれほど問題視されないだろう。プーニャが一匹紛れ込んだところで、追い出そうと何人か人たちが動く程度になるはずだ。
だからここでかけるのは、謝罪の言葉でも心配の言葉でもなくて。
「ありがとう、クロ。よろしくね!」
《ああ》
そう言ってわたしたちは目を見合わせ、強気に笑ってみせたのだった。
村のどの家よりもずっと大きな領主の屋敷を見上げて、わたしはそう呟く。わたしたちをあの小さなボロ小屋へ押し込めておきながら、なぜあんなやつがこんなに広くて立派なところで暮らしているのかと考えると、無性に腹が立ってくる。
領主の屋敷は広い。他では見ない三階建てで、なんでそんなに必要なのっていうくらい、たくさんの部屋があるのだ。
その中のどこに母がいるかなんてわからないので、しらみ潰しに見ていくしかないのかなと思っていたのだけれど。
《見つけた。三階の突き当たり、ここから見て一番右の部屋にいる。意識はないようだけど、無事みたいだ》
クロがあっさり解決してくれた。
指定した対象の場所や動きを特定する魔法を使ったらしい。よくわからないけどなにそれ、便利すぎる。
「……もしかしてファムルを見つけたのも、その魔法だったの?」
《いや、この魔法は有効範囲がそれほど広くないからな。ファムルを見つけたのは精霊たちだよ》
「そうだったの!?」
……ありがとう、精霊さんたち!
とにもかくにも、これで母の居場所がはっきりした。無事であることもわかって、一安心だ。
わたしがおんぶや抱っこをして母を運ぶこと自体は問題ないと思うが、わたしより大きい彼女を安定して運ぶことはまだ難しい。母は体が弱いので負担になってしまうかもしれないのが心配だけれど、今はとりあえずここを脱出するのが先決だ。多少無茶でも、やるしかない。
門前には二人の衛兵が見張りに立っているが、雰囲気からしてもたいしたことはなさそうな人たちだ。問題なくやっつけられると思う。
「よーし、じゃあ乗り込むわよ!」
《コラちょっと待て、キアラ》
いざ出陣! とばかりに正面から向かおうとすると、クロに止められてしまった。どうしたのだろう。
《バカ正直に正面から行くやつがあるか。門番は二人いるんだから、同時に無力化しないと応援を呼ばれてしまうだろ? オレたちの目的は、キアラのお母さんを取り戻すことだ。わざわざ最初から騒ぎを起こして、たくさんの衛兵と交戦するのは得策じゃない》
確かにそうだ。でも、それなら一体、どうしたらいいというのだろう。
《オレが囮になって、ちょっとした騒ぎを起こす。そうすれば、一人は様子を見にその場を離れるかもしれない。それでなくても、多少意識は逸らせるはずだ。キアラはその隙に、素早く門番たちを昏倒させるなりして、なるべくこっそりと侵入するんだ》
クロの提案に、わたしは一瞬身を固くした。それは、クロにとても危険な役目をさせてしまうということだ。
でも、わたしはそれを口に出すことなく、クロを見つめながらしっかりと頷いた。クロなら、きっと大丈夫だ。クロは強くて素早くて賢くて魔法まで使える、頼りになるお友達であり相棒だ。そのクロがやると言っているのだから、きっと大丈夫なはずだ。
それに、わたしが突入すればきっと大騒ぎになって、衛兵たちが総動員で攻撃してくるだろうが、きっとクロならそれほど問題視されないだろう。プーニャが一匹紛れ込んだところで、追い出そうと何人か人たちが動く程度になるはずだ。
だからここでかけるのは、謝罪の言葉でも心配の言葉でもなくて。
「ありがとう、クロ。よろしくね!」
《ああ》
そう言ってわたしたちは目を見合わせ、強気に笑ってみせたのだった。
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