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第二章 魔塔の魔法使い
愛する人
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……え? 今、何て言ったの?
生涯をかけて愛する人、と言わなかっただろうか。
そう言った後に私の肩を抱き寄せたりしたら、みんなそれが私のことだと考えてしまうと思うのだけれど。
私が半ば呆然としながら思考をまとめている間にも、彼らの会話は進んでいく。
「……そうか。お前にも、そんな相手ができたのだな。大事にしてやるといい。私が、アイシャにしてやれなかった分も……」
切なげに目を細める国王も、やはりそう受け取ったらしい。私たち二人のことを温かい目で見られている気がしてならない。
「あ、あの……」
動揺しながらノラード様を見上げると、彼はいつものように穏やかな表情で、私を見つめていた。陛下に誤解されているのに、なぜこれほど落ち着いていられるのか、全くわからない。
「はい。もちろん、そのつもりです」
そしてなんと、ノラード様は陛下に向かってキッパリと肯定してしまった。私の思考回路は大混乱に陥っている。
……え、「はい」って言ったの? はいって、つまり「そうです」ということよね? それはつまり……。
わかったような気はするけれど、確信は持てない。
だって私は、何も持っていない、むしろ借金持ちの、田舎育ちの子爵令嬢なんだもの。
しかも彼より四つも年上の、二十二歳の行き遅れだ。
第二王子であり魔塔の魔法使いである彼にふさわしい女性とは、決して言えないのに。
マリッサやルディオに相談して、好意を打ち明けようと決めたけれど、彼から同じ想いを返してもらえるとは考えていなかった。
やはり何かの間違いではないかと彼を見上げれば、慈しみの籠った彼の目と視線がぶつかった。まだ困惑している私に、彼は仕方なさそうに苦笑した。
そして私の耳元に顔を寄せて、小さな声で囁いた。
「大好きだよ、リーシャ。七年前にも言ったでしょう?」
「……!」
顔が沸騰するかと思った。
体中が熱くなり、心臓が爆発しそうなほどドキドキして、胸が苦しい。それなのにものすごく嬉しくて、じわりと目頭が熱くなってきた。
「ノラード様。わ、わたくしも、ノラード様のことが……大好きです」
そう伝えた私の声は小さくて少し震えてしまっていたけれど、ノラード様にはきちんと聞こえたようだった。
少しの間目を見開いて固まった後、彼は嬉しそうに破顔して、私をギュッと抱きしめてくれた。
今までで一番幸せな抱擁だと感じながら、私は目を閉じて、ギュッと彼を抱きしめ返したのだった。
◇
その後、王妃一派に正式な処罰が言い渡された。
王妃はその身分を剥奪され、生涯幽閉となった。
戒律の厳しい修道院で、彼女は一生自由を奪われて生きていくことになる。
幽閉王子とノラード様を嘲笑っていた彼女がその立場に置かれることになるなんて、皮肉なものである。
そして、彼女の実家である公爵家も処分は免れなかった。
家宅捜索が行われ、庭園でひっそりと育てられていた白い花が発見された。それは、隣国の王女だった王妃のお祖母様が持ち込んだもので、決まった手順で加工することにより特殊な毒性をもたらすものと確認が取れた。
これにより、様々な余罪も発覚した公爵家は没落することとなった。
国王は、危険な毒を王女に持ち込ませた隣国へ厳重に抗議すると息巻いているらしい。
元王妃の幽閉、王国一の大貴族の没落と、社交界は大騒ぎとなった。
元王妃の息子である王太子も一時はその立場が危ぶまれたが、証拠集めに奔走し、自らの基盤を崩してでも正義を貫いたのだと、好意的に捉える者たちが多かった。
そのおかげで、引き続き王太子として扱われることが決まった。
むしろ公爵家と敵対していた貴族たちが丁寧な態度で接してくるようになったと、王太子が苦笑しつつ報告してきた。以前よりも仕事がやりやすくなったらしい。
その一方で、不正があれば親でも容赦はしない冷血漢だと一部の者たちから恐れられるようになったそうだが、本人は気にしないと言っていた。
……そして、私とノラード様はというと。
生涯をかけて愛する人、と言わなかっただろうか。
そう言った後に私の肩を抱き寄せたりしたら、みんなそれが私のことだと考えてしまうと思うのだけれど。
私が半ば呆然としながら思考をまとめている間にも、彼らの会話は進んでいく。
「……そうか。お前にも、そんな相手ができたのだな。大事にしてやるといい。私が、アイシャにしてやれなかった分も……」
切なげに目を細める国王も、やはりそう受け取ったらしい。私たち二人のことを温かい目で見られている気がしてならない。
「あ、あの……」
動揺しながらノラード様を見上げると、彼はいつものように穏やかな表情で、私を見つめていた。陛下に誤解されているのに、なぜこれほど落ち着いていられるのか、全くわからない。
「はい。もちろん、そのつもりです」
そしてなんと、ノラード様は陛下に向かってキッパリと肯定してしまった。私の思考回路は大混乱に陥っている。
……え、「はい」って言ったの? はいって、つまり「そうです」ということよね? それはつまり……。
わかったような気はするけれど、確信は持てない。
だって私は、何も持っていない、むしろ借金持ちの、田舎育ちの子爵令嬢なんだもの。
しかも彼より四つも年上の、二十二歳の行き遅れだ。
第二王子であり魔塔の魔法使いである彼にふさわしい女性とは、決して言えないのに。
マリッサやルディオに相談して、好意を打ち明けようと決めたけれど、彼から同じ想いを返してもらえるとは考えていなかった。
やはり何かの間違いではないかと彼を見上げれば、慈しみの籠った彼の目と視線がぶつかった。まだ困惑している私に、彼は仕方なさそうに苦笑した。
そして私の耳元に顔を寄せて、小さな声で囁いた。
「大好きだよ、リーシャ。七年前にも言ったでしょう?」
「……!」
顔が沸騰するかと思った。
体中が熱くなり、心臓が爆発しそうなほどドキドキして、胸が苦しい。それなのにものすごく嬉しくて、じわりと目頭が熱くなってきた。
「ノラード様。わ、わたくしも、ノラード様のことが……大好きです」
そう伝えた私の声は小さくて少し震えてしまっていたけれど、ノラード様にはきちんと聞こえたようだった。
少しの間目を見開いて固まった後、彼は嬉しそうに破顔して、私をギュッと抱きしめてくれた。
今までで一番幸せな抱擁だと感じながら、私は目を閉じて、ギュッと彼を抱きしめ返したのだった。
◇
その後、王妃一派に正式な処罰が言い渡された。
王妃はその身分を剥奪され、生涯幽閉となった。
戒律の厳しい修道院で、彼女は一生自由を奪われて生きていくことになる。
幽閉王子とノラード様を嘲笑っていた彼女がその立場に置かれることになるなんて、皮肉なものである。
そして、彼女の実家である公爵家も処分は免れなかった。
家宅捜索が行われ、庭園でひっそりと育てられていた白い花が発見された。それは、隣国の王女だった王妃のお祖母様が持ち込んだもので、決まった手順で加工することにより特殊な毒性をもたらすものと確認が取れた。
これにより、様々な余罪も発覚した公爵家は没落することとなった。
国王は、危険な毒を王女に持ち込ませた隣国へ厳重に抗議すると息巻いているらしい。
元王妃の幽閉、王国一の大貴族の没落と、社交界は大騒ぎとなった。
元王妃の息子である王太子も一時はその立場が危ぶまれたが、証拠集めに奔走し、自らの基盤を崩してでも正義を貫いたのだと、好意的に捉える者たちが多かった。
そのおかげで、引き続き王太子として扱われることが決まった。
むしろ公爵家と敵対していた貴族たちが丁寧な態度で接してくるようになったと、王太子が苦笑しつつ報告してきた。以前よりも仕事がやりやすくなったらしい。
その一方で、不正があれば親でも容赦はしない冷血漢だと一部の者たちから恐れられるようになったそうだが、本人は気にしないと言っていた。
……そして、私とノラード様はというと。
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